Masuk■「俺はそんなにきれいじゃない」美しく可愛いものばかり集める幼馴染みとの恋は綺麗事では済まなくて。 ■室橋燿の幼馴染みの高遠蒼波は優しい性格をしており、きれいで可愛いものを集める趣味を持っている。 そんな蒼波の世話を焼くのが好きな燿は、蒼波が自分へ向けてくる好意に恋愛感情が含まれていることに気づき意識し始めた。 しかし、蒼波の集めるものと自分との差に悩む燿は、蒼波からの告白に動揺してひどい言葉を放ってしまう。 綺麗事を並べたい高校生の恋のお話。
Lihat lebih banyak早朝の住宅街は静寂に包まれていた。聞こえるのはアスファルトを蹴る自分の靴音と息遣い、それから鳥のさえずりだけだ。
九月に入っていくぶん涼しく感じられ、走りやすくはなってきている。燿はこめかみを伝う汗をこぶしで拭った。 「そろそろか?」 どうにも長距離を走るのは苦手なので、休憩を入れながらのランニングが燿の日課である。ぽつりと漏らした独り言に応えるかのように、二の腕にバンドで固定したスマートフォンのアラームが鳴った。丁度いつも立ち寄る公園の入り口に差しかかっていることもあって、燿は足を止める。 アラームを切って自動販売機でスポーツドリンクを購入しベンチに腰かけた。息を整えることなくスマートフォンを操作して、画面に表示された『蒼波』の文字をタップしてから耳へと当てる。 相手はなかなか出なかった。もっともすぐに返事をするような相手なら、わざわざ毎朝この時間に起こしてやらなくてもよいので、またかと思いつつ根気よく待つ。上がっていた息がこの待ち時間で自然と落ち着くことを燿は知っていた。 『……おあよう』 やっと通話状態になった電話の向こう側で、衣ずれの音と共に蒼波のかすれた低い声が朝の挨拶をつむぐ。 「おはよ。目、覚めたか?」 『なんとか。今日はどこ走ってるの?』 「公園のコース」 スポーツドリンクを煽りつつ答えると、蒼波が大きな欠伸をしているのが聞こえた。 「おい、二度寝すんなよ!?」 『らいじょーぶ』 「蒼波!」 無言になってしまった蒼波は明らかに大丈夫ではない。燿は通話を終了させると、今来た道を再び走って戻り始めた。家に帰ってシャワーを浴び、身支度を整えてから蒼波をたたき起こしに隣家へと乗り込まなくてはならない。果たして遅刻を免れるだろうか。「気持ち、いいか?」「俺の台詞、取らないで」 蒼波は汗で額に貼りついている燿の黒髪を優しく払ってから、ゆっくりと動き始める。喘ぎの合間から燿が小さな声で呟くのが聞こえた。「俺だって、不安なんだよ」「燿ちゃん?」「俺で、お前が、気持ちいいのか、とか」「気持ちいいって、言ってるのに」 最初のときも蒼波は気持ちよくて止まることができなかったのに、なにを不安に思うことがあるのだろうか。今だって燿にちゃんと話させてやりたいと思っているのに、どん欲な自分は腰を動かすことをやめられずにいる。奥深くまで来てもよいと許可された喜びで爆発しそうだ。「奥までするの、どんな感じ?」 尋ねながら蒼波はこれ以上奥はないというところまで自身を捻じ込んだ。きれいにしなる燿の背中をしっかりと抱いて、何度も最奥を貫く。「あ、あっ。ん、あおばっ」「やめる?」 燿が首を横に振ったのを見て、蒼波は微笑みを浮かべた。負けず嫌いの燿のことだから、多少無理はしているのだろうけれど、本当にいやがっている様子はない。「じゃあ、今日は奥で気持ちよくなって?」 角度を変えて前立腺をかすめるように突き入れて、奥の奥まで抉るように動く蒼波に、燿がしがみついてきた。それだけではやり過ごせなかったのか、蒼波の肩に噛みついてくる。声を抑えたかったのかもしれない。噛みつくたびに後孔がぎゅっと締まるので、蒼波はそれだけで持っていかれそうになった。「燿ちゃん、燿ちゃん」「ん、んんっ」 蒼波は夢中になって燿の中心へと手を伸ばし、一緒に達するために刺激を与えようとする。しかし、自分の動きが激しくていつものように燿をうながすことができなかった。「あ! あおばっ。ちょっと、あ、ああっ」 今の動きでまた角度が変わってしまったのか、燿がひときわ大きな声を出す。とっさに燿の口を手でふさいだ蒼波は、そのまま抽挿を繰り返した。「んっ。んー! んうっ」「燿ちゃん、イキそう?」 全身を震わせている燿の姿を見て蒼波が問いかけると、燿は何度もうなずいて蒼波の腕や肩に爪を立てる。燿が耐えがたい快楽の
「燿ちゃん」「な、に?」「挿れてほしい?」 問い直した蒼波を唖然と見つめてくる燿が、少しおかしかった。それでも蒼波はどうしても答えてもらいたくて、燿の中心をひとなでする。のけぞる首筋に噛みつくようにキスをして、もう一度訊く。「ねぇ、挿れてほしい?」「もう言っただろ」「挿れてもいいと挿れてほしいは違う」 燿が息を詰めたのが伝わってきた。蒼波には本当は燿がどんな状態なのかも、なにを望んでいるのかだって解っている。けれど言葉にしてほしかった。「この……っ。バカ蒼波! とっとと挿れてイかせろ!」 言いざま燿は両足を使って蒼波の腰を自分の方へと寄せる。慌てたのは蒼波の方だ。「燿ちゃん、待って。ゴムしてない」「そのままで、いい」 ぐいぐいと腰を引き寄せる燿を一度落ち着かせて、蒼波はなんとかコンドームを装着した。そのままでもよいと言われても、燿が体調を崩したりするのはいやだ。「あおば」「うん」「はやく」 こんな風に急かされたら、それがはっきりとした言葉でなくてももう充分だ。蒼波は燿の足を開かせてゆっくりと先端を挿入した。浅く挿れては腰を引き、それを何度も繰り返しながら徐々に深くまで挿れていく。「ふ、あっ。んう」「燿ちゃん、つらくない?」「だい、じょぶ」 蒼波は燿の呼吸が少し落ち着くまで動かずにいた。「なあ、蒼波」「うん? 痛い?」「全部挿れろよ」 その言葉に蒼波は紅茶色の目を見開く。身長の高い蒼波のものは平均よりも大きめなので燿の負担が大きい。そう考えてこれまで蒼波はすべて挿れることをしてこなかった。燿には気づかれていないと思っていたのだが、ちゃんと解っていたらしい。「全部、ほしい」「燿ちゃんはずるい……!」 いつだって燿は蒼波の願い以上に、大きなものを返してくれる。蒼波が燿に抱いた恋慕の情に対しても、見つからなかったシーグラスについても、今の言葉にも、全部蒼波が思い描いたものよりもずっとよいものをこ
「お前、最初からその気だったのかよ」 「だって一緒の部屋にいて、我慢なんてできないし」 「だったら、なんでそんなに悩んでんだよ。好きにすりゃいいのに」 「それとこれは別。口でする? 手がいい?」 ついでのように次の愛撫をどうするか尋ねた蒼波に、燿はとうとう両手で顔を覆ってしまった。 「言わないとしないよ。ここ、このままだとつらいよね」 中心にそっと触れたとたんに燿の背中がしなる。「あ」と漏れる声に蒼波の腰も重たくなった。 「――……で」 「え? 聞こえない」 「手でいいから!」 蒼波が指を絡ませて緩く手を動かすと、燿は声をこらえようと唇を噛みしめる。本当なら好きなだけ喘がせてやりたいところだ。しかし隣の部屋が気になるのも確かなのでそのままにしておいた。 張り詰めている中心をしごきながら、後ろを優しくなでてみる。 「は、あっ。んん」 「一回イク? このまま後ろしていい?」 燿には蒼波の声が届いていない様子だった。頭を左右に振るだけで、まともな応えは返ってこない。蒼波はそんな燿の中に早く挿入りたくなって、ローションのキャップを乱暴な手つきで開けた。両手にぶちまけるように出したローションを温めるのももどかしくて、そのまま燿の後孔へ指を這わせる。 「冷てぇ、んっ。うあ」 「ここ、してもいい?」 蒼波の我慢も限界に来ていたが、今日は全部言ってもらうと決めていたため、なんとか耐えようとしていた。燿がこくこくとうなずくのを見て、ローションをまとわせた指を一本、ゆっくりと沈ませる。 「あ、あっ」 「静かに」 「んんっ。ん!」 燿がまた自分で自分の口をふさいだことによって、部屋には燿の荒い息遣いと後孔に施されるぐちぐちというはしたない愛撫の音だけが響いた。指を増やすたびにそこからは淫猥な音が響くようになり、燿の中心も腹につきそうなくらいに反り返っていく。 「燿ちゃん、挿れてもいい? ダメ?」 後ろへ三本目をくわえさせた蒼波は、ふーふーと息を吐いている燿に尋ねた。流石にこの質問には答えづらいら
***「ん、ん……っ」 甘さを含んだ燿の声が合わせた唇の隙間からこぼれ落ちる。吐息混じりのそれは簡単に蒼波に火をつけた。唇をついばむようにしたり、こじ開けて舌を差し入れたりしながら、蒼波はキスを続ける。 最初にキスをしたときから、燿は上あごの辺りを舌先でくすぐられるのにとても弱いと解っていた。今夜はわざと上あごには触れずに舌を絡ませて遊ぶ。それが気に入らなかったのか、燿が蒼波の胸をどんっとたたいて口を離した。 「どうしたの?」 「するならちゃんとしろ」 「ちゃんとって、どこをどうする?」 蒼波の言葉を受けて、燿がぽかんと口を開ける。蒼波は燿のしてほしいことだけをしたいと考えた末に、全部言ってもらうことにした。だが、それが一歩間違うとプレイの一環になってしまうことには気づかないままだ。燿は瞬間湯沸かし器にでもなったかのように怒鳴った。 「そういうことは、いちいち言わなくていいだろ!」 「言ってくれなきゃ、いやなことしちゃうかもしれない」 「大丈夫だから、好きなようにしろよ!」 「絶対やだ。言って」 燿の反論ごと食べるようにくちづける。すると、燿は器用に蒼波の舌を自分の口へ招き入れて、上あごの辺りに押しつけるようにした。言葉にはしてもらえなかったが、その辺りを舐めろということだとは蒼波にも解る。舌先で軽くつついたり、なぞったりすると、燿がしがみついてきた。 「んん、んっ」 「燿ちゃん、次は?」 「お前、最悪」 ナイトウエアの胸元のボタンに片手を、もう片方の手を裾の方へと持っていった蒼波に、燿が毒づく。 「最悪じゃないよ。最高にするから、どっち?」 「お前の好きな方」 燿の答えはまた明確のものではなかった。蒼波は仕方なくいつも通りの手順でボタンを外す作業に取りかかろうとしたが、ふと思いとどまる。いつも通りではない方がよいのかもしれないと考え、ナイトウエアの裾に手を突っ込んだ。 「う、わっ。あ!」 「声大きいよ、燿ちゃん」 ビジネスホテルの壁はそれほど厚くはない。大騒ぎしてしまうとなにをして