蒼波はどうしているだろうかと考える。今朝は学校が休みということもあって起こすための電話をしていない。心ゆくまで寝坊しているのか、それ以前に眠れているのか。燿は少し心配になった。あれからはまともに蒼波と会話をしていないし、メッセージにもなにを送ったらよいのか迷ってしまって送らずじまいになっている。 暗くなりかけた気持ちを振り払うように、燿は頭を振って唐揚げを口に放り込んだ。 午後になってから燿はもう一度スマートフォンの地図を確認して、少し移動範囲を広げることにした。近隣の地区までを範囲にすると、かなりの数の公園などを回ることができそうだ。思ったよりも狙っているものが集まらないのが大きな原因だった。狙っているといっても燿にはこれが欲しいという明確な目的はない。ただ公園を中心に道端などに落ちているものを拾っているだけだ。 道端ではなにに使われていたのか解らないネジと、金属の輪っかを見つけた。一瞬拾うのをやめようかとも思ったけれど、念のためバッグにしまっておく。 幼いころ、蒼波が金属の輪っかを指にはめて抜けなくなったことを思い出して、燿の口元には笑みが浮かんだ。 昼下がりに訪ねた場所のひとつには神社があった。それほど有名な神社ではなく、参拝者もほとんどいない。燿は手を清めてから参拝し、お守りやおみくじが並べられている社務所へ向かった。なにかきれいなものがあるかもしれないと考えたのだ。お守りはどれも美しい生地で作られていた。学業成就のお守りを手に取ってみるが、受験はまだ先の話だしなにか違うと考えて戻す。恋愛成就のお守りは恥ずかしくて見ることもできなかった。蒼波の恋の相手は自分なのだ。結局巫女さんに訊いてみることにした。 「元気になれるのってありますか?」 「失礼ですが、ご病気を?」 「あ、いいえ。元気がないってだけで」 「だったらこちらの開運招福のお守りはいかがでしょうか?」 なるほどと燿は思い、巫女さんが示してくれた開運のお守りから濃紺の生地に金糸の模様が入ったものを選んだ。お守りを大切にボディバッグの奥の方へ入れて、燿は神社を散策する。流石に掃除が行き届いていて、ここではなにも見つからなかった。
Last Updated : 2025-09-10 Read more