姉から、お見合い相手の写真が送られてきた。私は数秒だけ眺めてから、すぐに画面を閉じた。「いいよ。先に段取りしてくれる?ただ、三日だけ時間が欲しいの」そう返信した。三日——それだけあれば、この場所ときれいに決別するには十分だった。私たちの婚約披露宴は、結局、香月澪奈(こうづきれいな)の歓迎会にすり替えられた。もうこの家にいる理由なんて、どこにもない。ただの笑い者になるために居続けるつもりはなかった。切り裂いた婚約ドレスをゴミ袋に詰め込み、私は実家に戻る準備をした。けれど、それすらも許してくれない人がいた。「紗月さん、ほんとごめんなさい。婚約の準備でお忙しいところを……でも、どうしても今日がいいって凌翔が言い出して。歓迎会なんて断れないじゃない?怒らないでね?」澪奈がにこにこと笑いながら、わざとらしく首元を傾けた。その首筋には、わざと見せるように、はっきりとキスマークが残っていた。またか。彼女は私の嫉妬を煽って、醜く取り乱す様子を楽しむのが常だった。でも、今回は違う。私は、もう何も感じなかった。「うん、別に気にしてないから」そう答えると、彼女の顔から一瞬で笑みが消えた。用意していた言葉がすべて喉に詰まったようだった。私はバッグを持って、何も言わず家に帰った。だが、帰宅してすぐ、激しい痛みに顔が真っ青になる。やはり、身体はまだ回復していなかった。一週間前のこと。私がどれだけ反対しても、神原凌翔(かんばらりょうしょう)は澪奈を家に迎え入れた。「出てってやる」と脅しても、結局彼女はこの家に住みついた。その時、私ははっきりと理解した。この人にとって、誰も——私ですら——彼女には敵わないのだと。翌日、私はひとりで病院へ行き、中絶手術を受けた。ソファに倒れ込んだまま、痛みに耐えながら鎮痛剤を探す。薬を飲み込んだ、その瞬間——玄関が開き、凌翔が帰ってきた。彼はソファで丸くなる私に気づかぬまま、コートを投げ渡してきた。「ただいま」いつものように、それを受け取ってハンガーに掛ける私を想定していたのだろう。けれど、私は一歩も動かなかった。すると、彼の表情が曇る。「今日の会が急に変更になったのは分かってるけど……そんな露骨に態度に出すなよ。途
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