星奈は「星ノ影」アカウントを、まるで日記のように使っていた。生活の一つひとつを記録し、写真と言葉で丁寧に綴っていた。雅臣との恋に落ちた甘い瞬間。結婚という新たな人生を共に歩み出した記念の日々。そして、彼の背中を、そっと撮った一枚。……雅臣は、まるで胸の奥にぽっかりと穴が空いたかのような痛みを覚えながら、スマホの画面をスクロールした。そこには、彼らが共に歩んできた軌跡が、確かに残っていた。しかし、投稿は半年前で止まっていた。最後のログインは、昨日の夜。彼女はその時、「ストーリー」にただ一言――「もういいや」。そう記してから、カスタマーサポートに連絡し、アカウントの削除を申請していた。「もういいや」?それは、彼に対しての、全てを諦めた証なのか?雅臣は魂が抜けたように、ブランコに座ったまま日が暮れるのを眺めていた。そしてようやく寝室へ戻ると、彼女が普段眠っていた側のベッドに横たわり、彼女の体温を感じようとした。だが、そこにあるのは冷たいシーツだけだった。一人きりの夜。その孤独は、耐え難いものだった。絶望の底で、ふと、彼の脳裏に一つの考えが浮かぶ。彼女は、結婚記念日のために、サプライズを用意していたのではないか?壁に掛けられた時計の針は、ちょうど0時を指していた。今日こそが、二人の結婚五周年記念日。その思いに突き動かされ、雅臣は飛び起き、急いで枕元のボックスを開けた。だが、そこに入っていたのは、離婚協議書だった。雷に打たれたような衝撃が全身を駆け抜け、恐怖、絶望、混乱が一気に襲いかかる。彼は慌てて服を身にまとい、外へ飛び出すと、車に乗り込み、最寄りの警察署へ向かって猛スピードで走り出した。受付に飛び込むように駆け込んだ雅臣に、当直の警察官が驚きながら言った。「落ち着いてください。何があったのか、お話しください」雅臣は、荒い息を吐きながら、かすれた声で言った。「……妻が……妻が行方不明なんです。何の連絡も残さず、どこにも姿が見えなくて……!」警察は、事件性を考慮してすぐに詳細を尋ねた。「最後に会ったのはいつですか?どこで別れました?」雅臣はしばらく黙り込み、口を開いた。「家から出たはずです……そのあと、山の上で星を見に行ったと……たぶん昨晩です……」
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