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Lahat ng Kabanata ng 唇に触れる冷たい熱: Kabanata 81 - Kabanata 86

86 Kabanata

お前だけでいい 7

「要《かなめ》……!? 貴方、どうしてここが?」「紗綾《さや》、その話は後だ。横井《よこい》さん、すぐに連絡をくれてありがとう」 要のその言葉に、横井さんは笑顔とピースサインで返す。どうやらここに来る前に横井さんが彼に連絡をしていたみたいで。本当に彼女は色んな所に気が回る女性なんだって思った。「御堂《みどう》 要、またお前か。紗綾を傷付けたのは俺だけじゃない、お前だって今こうして紗綾を傷付けているだろう?」 そう言って彬斗《りんと》君は、要に数枚の写真を投げつける。 どうして……彬斗君は私を守る要の存在が邪魔な存在なだけでしょう? 私が要に傷付けられるのならば、それは私を苦しめたい彬斗君にとって都合のいい事なんじゃないの?「彬斗君! 私は別に要に傷つけられてなんか……!」「紗綾は黙ってろ! 俺は今、御堂 要と話をしているんだ!」 どうして? 彬斗君の今日のターゲットは私なんじゃないの? このまま要を責められたら、私はいったいどうすればいいの……?「伊藤《いとう》 彬斗、お前が俺や紗綾に言いたいことはそれで終わりか?」 どんな弱みを握ったつもりでも、どんなに彼の事を調べ上げても、要の堂々とした態度に変化はない。きっと彼には誰にも後ろめたい事をしていない自信があるんだわ。「何だよそれ、俺はお前が紗綾を都合良い存在にしている事を――!」「伊藤 彬斗。お前は自分がしたことでも他の男が同じことを紗綾にすることは許せない、そうなんだろう?」 え? それって、まさか……?「彬斗《りんと》君……本当にそうなの?」 付き合っている時の彬斗君は、そこまで私の事を気にしているようには見えなかった。 彬斗君自身も私の事をぞんざいに扱っていたし、私が誰にどんな目にあわされても話を聞こうともしなかったから。 「違う! 俺はただ紗綾《さや》の態度と、御堂《みどう》 要《かなめ》の存在が気に入らないだけだ!」 私と要の問いかけに焦った様子を見せる彬斗君。まさか要の言う通りだったりするの……今更どうして?「違わないだろう、伊藤 彬斗。お前は俺の存在を知って、やっと紗綾が自分にとってどんなに大事な存在であるかに気付いたんだろうが」 「違う……! 俺にとって紗綾はそんな特別な相手なんかじゃない、俺はただお前達に復讐しようとしているだけで……!」 要の言葉に過
last updateHuling Na-update : 2025-07-30
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お前だけでいい 8

 要《かなめ》の言葉に私はゆっくりと顔を上げた。彬斗《りんと》君の私へ向ける感情はずっと憎しみなんだと思っていたの。  私の自分勝手な行動で、彼を傷付ずっと苦しめ続けているのだと思っていたから。それだけの事をしたことを反省していたけれど、許される事では無かったから。 だけど要は、彬斗君のそれを私への歪んだ愛情だというの?「そうじゃない、俺はもう紗綾《さや》の事を愛してなんて……!」「じゃあ伊藤《いとう》 彬斗、お前は何がしたい? 紗綾に隠し事をする俺の存在は気に入らない、それなのに紗綾には復讐をしたい? お前の言っていることは、どれもこれも矛盾しているとは思わないのか」 確かに彬斗君は私に復讐をしたいと言いながら、私を都合よく利用する要の事を許せないとも言っている。 本当の彬斗君は私達にいったい何を望んでいるの? 彬斗君は何かを苦しんでいるようにも見えて……「うるさい! 御堂《みどう》 要《かなめ》、お前だっていつか紗綾を傷付けるんだろ? いつかは本社に帰って、紗綾の事を無かった事にするつもりのくせに……!」「彬斗君、要はそんな事はしない! もしそうなったとしたら、それは私も納得の上の事なのよ」 彬斗君の言う通り、要はいつか私から離れるのかもしれない。だけど今、彬斗君にそんな弱みを見せてはいけない気がしたの。 私はちゃんと要の事を愛し信じているのだと……そう、堂々としていなければいけないんだって。  彼にこんな行動をとらせてしまったのは、不安定だった自分を見せてしまった私なのかもしれない。もしかしたら彬斗君は、私の事をあの時からずっと心配していたのかもしれなくて。「紗綾……!」 「私はもう大丈夫なの、だから……彬斗君もちゃんと前を向いて?」 酷い事もいっぱいされたけれど、大事にしてくれたこともあった。でもそれももうすべて過去の事。私も彬斗《りんと》君の前に進まないといけないのよ。 私の言葉に彬斗君は酷く顔を歪ませる。彬斗君はどうしてそんな顔をするのだろうか? もしかしたら本当は何も相手の事を理解出来ないまま、私と彬斗君は別れを選んでしまったのかもしれない。「またそれかよ! 紗綾《さや》はそうやって俺の事ばかりを優先して、いつも自分は大丈夫だなんて言うから……だから俺は最後までお前と向き合えなかった!」 まさか彬斗君がそういう風に
last updateHuling Na-update : 2025-07-30
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お前だけでいい 9

 そう言うと彬斗《りんと》君はさっきの封筒に写真などを入れて私へと手渡した。 ……これは彬斗君が私達を別れさせるために調べたものなんでしょう、それなのにどうして?「これは渡しておく、俺にはもう必要ないからな。今度こそちゃんと御堂《みどう》 要《かなめ》と話し合えよ、紗綾《さや》」 つまり彬斗君はもうこの事で要を脅迫する気はないと言いたいのかもしれない。あれほど恨んで許せないと言っていたのに、私たちの事を……「本当にいいの、彬斗君。貴方はこれからどうするつもりなの?」 仕事も辞めてどこに住んでいるのかもわからない彬斗君。だけど私の言葉に彬斗君は少しだけ気が晴れた様な笑顔を見せて……「実は俺も県外での就職が決まっているんだ、本当は最初から紗綾とは今日でサヨナラする気だったしな」「彬斗君、それって……?」 もしかして彬斗君はこの話が終わった後は、私の前から去るつもりだったの? この写真も見せたのも要の隠し事を話したのも、最初から私と要の気持ちを確かめるために?「伊藤 彬斗、それがお前の本当にしたかった事なんだな? ちゃんと紗綾への気持ちの整理はつけられたか?」「ああ、随分苦しんだが今はスッキリしているんだ。やっと紗綾を幸せにしてくれる相手が見つかって……これで今度こそ俺も次へと進むことが出来る」 私が苦しんだように、私を苦しめた彬斗君もずっと縛られていたのかもしれない。けれど今の彬斗君は本当に清々しい顔をしていた。「それじゃあな、紗綾」 そう言って少しだけ寂し気に微笑むと、そのまま彬斗君はこちらを振り返ることも無くお店を出ていってしまった。「紗綾《さや》、ひとまずマンションに帰るぞ。横井《よこい》さん、今日はここで解散していいだろうか?」「……あ、はい。御堂《みどう》さん、主任の事よろしくお願いします」 横井さんの返事を聞くとすぐに、要《かなめ》は彬斗《りんと》君に手渡された封筒を私から取り上げた。そうして私の手を引いて駐車場へと連れて行った。 いつもの落ち着いた要とは違う……珍しく彼が焦っている事に嫌でも気が付いてしまう。そして彼が焦っている理由も、もう私は分っている。「マンションに帰ればちゃんと聞かせてもらえるの? さっきの話を……要の口から」 そして私達の関係はいったいどうなるのかしらね? 要に別れ話を切り出されたら、冷静でい
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お前だけでいい 10

「……ああ」 要《かなめ》はいつものように私の隣には座らず、椅子を持ってきて私の正面に座った。ちゃんとお互いの目を見て話をしようという事なんでしょうね。 要のその真っ直ぐな考え方、私は嫌いじゃないのよ。「ずっと要に聞く勇気の無かった私も悪かったとは思うわ。だけどこんな形で、それも……彬斗君から聞かされたくはなかったの」 狡い事を言っている自覚はあった。要だけが悪いんじゃないってちゃんと分かっているのに。 私もずっと怖がって本人に確かめないまま時間だけが過ぎて……それなのに、こうして他人から話を聞いてから要を責めてしまっている。「そうだな。俺が紗綾《さや》にきちんと話をしなければ、こうなるかもしれないと分かってはいたんだ。ただ……俺も紗綾からどんな反応をされるのかが怖かったのかもしれない」 要の言葉に、私は少し戸惑ってしまう。いつも自信に満ち溢れているような要がそんな風に思っていたなんて。「紗綾も聞いた通り父親が死んでから大学卒業まで、俺は母の再婚相手……柊《ひいらぎ》社長から援助を受けていたんだ。柊社長は俺を彼の息子の悟《さとる》と同じように大事にしてくれた。だから……」「だから、少しでも柊社長と悟さんの役に立てるよう、柊社長の会社に就職したってわけね?」 私の問いかけに要は静かに頷いた。分かっている、要はとても真面目な人だもの。そんな風にお世話になった人のためなら、役に立ちたいときっと考えるはず。 だけど、私が本当に気になっているのは……「じゃあ、要が本社に戻って悟さんの補佐に就くっていう話も本当なのね?」「紗綾《さや》の言う通り、柊《ひいらぎ》社長と悟《さとる》にそう望まれているのは本当の事だ。だが、既に決定した話という訳でもない。だから……」「だから、なによ?」 そんな思わせぶりな言い方しないでよ。要《かなめ》が恩人にそう望まれて、簡単に断れるような性格じゃないってことくらい私にだってわかっているのよ? 多分、要は私が必死になって引き止めたりしなければきっと……「紗綾がこれからの事をどう考えているのか、俺はそれを聞きたいんだ」  狡いんじゃないかしら? そうやって、貴方の未来を私に選ばせようとするのは。 私だって貴方に、自分の未来は自分で決めてもらいたい。その上で私を選んで欲しい……そう思っているのに。「私がああしろ、
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お前だけでいい 11

 きっと要《かなめ》の中にも、ずっと迷いがあったんでしょう? 普段の貴方ならば、少しくらい強引に物事を進めてもおかしくなかった。 けれど要は私の今の生活を壊す事も、柊《ひいらぎ》社長の期待を裏切る事もきっと出来ないんだと思う。 私も今のままの感情では要に付いて本社に行くことも出来ないし、こんな風に貴方を苦しめながらここで付き合い続ける事も出来るわけなくて。 そうね。私たちはどちらを選んでも、きっと今は後悔すると思うの。「俺には……紗綾《さや》が必要だ」 分かっているわ。要がここまで私を探してくれたから、貴方に再会することが出来たの。こうしてまだ誰かを愛する事も出来るようになった。 全部、要が傍にいてくれたおかげ……「私だって要が必要よ? けれど……もう少し自分の事も貴方の事もしっかりと考える時間が欲しいの」「俺が本社に戻るまではまだ時間がある。だから……」 そうやって何より私を優先してくれる優しさを知っているから、これ以上は要に甘えられないと思ったのよ。 私の為に要がどんどん自分を犠牲にしていくのなんて、見たくはないから。「私は、このまま要の負担になる存在でいたくないの。もっと堂々と貴方の隣に立ちたいの、だから……」 ここまで言うと深く深呼吸をする。これからの事を考えると、怖くて不安だけれど……「今夜……私はこの部屋を出ていくわ」 一人暮らしの部屋はもう解約してしまった。 けれど新しく部屋を見つけるまでは、ウィークリーマンションでも何とかなるでしょうし。 ……多分、私達は少し離れた方がいいはずだから。「本気で言っているのか、紗綾《さや》。じゃあ、お前は俺と離れて平気だと……?」 要《かなめ》と離れて平気なわけじゃない。でもこんな気持ちじゃ、このまま貴方について行くことも出来ない。「お互い離れるのが平気かどうかなんて、そんな事で決める事じゃないと思うの。それでも要が今すぐ答えを出せというのなら、私はこの答えを選ぶ。それだけよ」 時間があれば私の中で出す答えも違ったのか、それはまだ分からないけれど……黙り込んでしまった要を見て、私は覚悟を決めた。「……要、あなたはどこかで少し時間を潰してきてくれる?」 もし彼がいれば、私はこの部屋を出る決心が鈍ってしまいそうだったから。めそめそ悲しんでいる顔なんて見られたくないもの。「……
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俺を選ぶだろ? 1

 要《かなめ》の部屋を出てから手頃な物件を見つけるまでの数日間は、職場近くのビジネスホテルで過ごした。 仕事を生きがいにして、その間はずっと貯蓄しておいたから良かったけれど…… 要のいない一人きりの部屋。孤独な暮らしは慣れていたはずなのに、夜になると彼が傍にいないことが寂しくて仕方なかった。「どっちを選んでも、後悔しかしないのね……私は」 要は引き止めてくれたのに、それに応えることが出来なかったのは私の方。だから私が寂しいなんて思っててはいけないんでしょうけれど…… 彼は私の事を「決して諦めない」と言ったけれど、本社《むこう》での生活に戻れば私の事なんて、もう…… あれから要から電話もメッセージも来なくなった。自分から別れを選んでおいて私は何を期待しているのかしらね。自分の身勝手さに呆れてしまう事もあるけれど。 買ったばかりの安物のベッドに倒れこみ、瞼を閉じる。明日も仕事だから少しは休まなくては……手元の時計はもう二時を指している。「……大丈夫、大丈夫よ」 彬斗《りんと》君の時だって離れるのは辛かったけれど、時間が経てば傷は癒えていった。要の事も今は辛いけど、いつかはきっと…… 零れ落ちる涙を拭って、私は静かに眠りについた。 我が儘でごめんなさい。だけど夢の中だけでもいい、もう一度貴方と穏やかな時間が過ごせたらいいのに…… ーーーー 「もうすぐ復帰するはずだった、笹井戸《ささいど》課長のことなんだが……残念だが復帰することなく、今月末で辞められるそうだ」 朝礼時の部長からの言葉に私は戸惑ってしまう。要《かなめ》は課長代理としてここに来ているのに、課長が辞めてしまったらこれから彼はどうなるのだろう? それと横井《よこい》さんが言っていたように、要が課長の問題とやらを調査した結果がこれなのか?  ……今の私には何も分からないまま。「主任、顔色……凄く悪いですよ?」 横で仕事をしていた横井《よこい》さんが手を止めて、私の方にそのまま伸ばしてくる。横井さんの熱を測るその手が優しくて、不安定な感情が溢れそうになる。「大丈夫よ、ちょっと疲れがたまっているだけなの。今度の部屋もすぐに慣れるから問題ないわ」「今度の部屋……それってどういう事です?」 しまった! 横井さん相手だからつい気を抜いてしまって……私はまだ横井さんにさえも、要と別れ
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