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All Chapters of 唇に触れる冷たい熱: Chapter 101 - Chapter 110

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迎えに来たわよ 1

 ガラガラとキャリーケースを引きながら目的地を目指してズンズン歩く。 駅に並んでいたタクシーを使わないのは、新しく生活をする場所をきちんと確認しておきたかったのと新しく始まる生活に備えて。「思っていたよりも、こっちは暖かいのね」 今まで住んでいた場所に合う服装で来たので、歩いているうちに少し汗をかいてしまった。近くにあった自販機でお茶を買うと、喉を少し潤してからまた歩き出す。 トランクを引く右手、そして反対の左手の中には目的地の鍵がある。 これは要がいなくなってから数日後、私の仕事場のデスクに入れられていたもの。これもこうなることを予想して、誰かに頼んでいたのだろうか? そこにメモの一つも付けて無い所が彼らしい。 要はきっと柊社長に話を聞いたはずなのに、その話を受けろとも断れとも言ってくることは無かった。彼も私が自分で決めるべきだと判断したのでしょうね。 スマホのアプリで確認しながら進むと、グレーの大きなマンション。 名前を確認すると、どうやらここで間違いなさそう。 オートロックに鍵を差し込んで自動ドアを開き、奥にあるエレベータへ。ここまで来て胸のドキドキが止まらない。目的の部屋の前まで来ると、インターフォンを鳴らさずに鍵を使ってドアを開ける。部屋の主が不在な事は最初から分かっていたから。「やっぱり綺麗にしているわね、要《かなめ》らしい。ああ、茶太郎《ちゃたろう》も久しぶりね」 ペットのハムスターも変わらず元気そう。眠そうにしているところを悪いなと思いつつ、ふわふわの毛に指で触れる。 彼が帰ってくるまでまだ時間がある。先に夕飯の支度をしようと思って冷蔵庫を覗くと、前と違って何も入ってなくて。「忙しいのかしらね、ご主人様は」 とりあえず買い物をしようと、取り出しスマホで近くのスーパーを確認しながら玄関へ向かう。 靴を履いてドアノブに手をかけようとしたその時、カチャリとガキの開けられる音がした。 ゆっくりと開く扉、驚きで開かれる彼の瞳……「さ、あや……?」 ほら、あなたのそんな顔は初めて見れたんじゃないかしら?  作戦成功! とばかりに、ニコッと要《かなめ》に笑ってみせる。 このために柊《ひいらぎ》社長にも要には私が話を受けたことは全部秘密にしてもらっていたし、あえて私からも連絡はしなかった。「おかえりなさい、要。こんなに早く
last updateLast Updated : 2025-08-10
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迎えに来たわよ 2

 ……この選択を後悔するかしないかなんて、今はまだ分からない事だけど。自分の心に素直に生きることがあっても良いんだって、そう思えるようになったのは要のおかげ。 優しい温もりと、愛しい香りに包まれて嬉しくて瞼が痛くなる。 ああ、これが幸せというものなんだと。 ……けれどふと気付く。以前と目の前の彼、思い切り抱きしめられたその違和感に。「要、あなた痩せた?」「……」 無言の肯定、離れていたのはそんなに長い期間ではない。なのにこうして触れて分かるほどに、彼の体重は減っていたようだ。 要は結構長身ではあるし、筋肉がついていて無駄な贅肉はない細マッチョという感じなのだけど。「年齢的に脂肪もつきやすくなるから、少し筋トレを増やしただけだ」「……そう。要は私に素直でいて欲しいというくせに、自分はそうやって心配かけないようにと見栄を張るのね?」 ジトっと見つめてそう言えば、流石の要も困った様に視線を泳がせる。素直になって欲しいのも、弱音を吐いて欲しいのもお互い様だもの。 これからも対等な関係でありたいからこそ、今度は私からやって来たのだから。 しばらくは戸惑っていたようだがそのうち諦めたのか、彼は頭を私の肩にのせるように置いてから小さな声で呟いた。「……紗綾がいなくて辛かった。夜もよく眠れなくて、仕事にがむしゃらになることで誤魔化してた」「そうだったの……」 こうしてこの人が、素直に私に甘えてくれるのはとても珍しい事。辛い思いをさせてしまったという申し訳なさと同時に、どうしようもなく母性本能が刺激されてしまって。 「可愛い」と言ったら、きっと要は怒ってしまうだろうけれど。そう言葉に出来ない代わりに、肩に置かれた頭を両手で優しく抱きこんだ。「……甘やかすのは、俺の役目のつもりだったんだが?」「たまには良いんじゃないの? 私にも愛しい相手から甘えられたいって、そう思う時だってあるもの」 ふふ、と微笑んで彼を困らせていると。リビングの奥から茶太郎が「チーチー」と鳴きだして、お互いの顔を見合わせた。「どうやら感激の再会もこのくらいにしておかなきゃみたいね? 茶太郎が「ご主人様を取るな」って怒ってるみたいだもの」「どうせアイツはおやつが欲しいだけだろう。こんな時なんだから、少しくらい待たせておけばいい」 そうぶつくさ言いながらも、要は茶太郎のため
last updateLast Updated : 2025-08-11
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迎えに来たわよ 3

「……それで、確認しておきたいんだが。紗綾《さや》が迎えに来てくれたって事は、俺と暮らす気でいてくれてるって思っても良いのか?」 ソファーに座ったままだった私に、要《かなめ》がアイスカフェオレを用意してくれる。それを手渡され、隣に腰を下ろした彼に微笑んで答えた。「柊社長からは単身者用の住居を用意しますって、誘われた時に言ってもらったのだけれど。もう断っちゃったし、ここに住まわせてくれるしょう?」 もちろん柊社長は形式的にそう話しただけで、私が要と暮らすことは予想していたのだと思うけど。それでも私が選べるように、わざわざ選択肢を与えてくれたのだと分かってる。 意外な事に要は何も話を聞いてなかったのか、少し驚いた顔をしていて……「あの人は少し悪戯好きなところがあるから。そうやって俺がヤキモキするのを楽しんでいるのかもしれないな、全く」「そうなの? でもそう言われると、あんなに温厚そうなのに社長としての威厳もある人だったわ」「俺だって出来れば、紗綾に自分で選んで欲しいとは思ってる。でも……俺がお前の一番になりたい、これも本音だから」 困った様にそう話すから、余計に胸がキュンとしてしまう。こんなトキメキをくれる人は、どう考えても要しかいないのだから自信を持って欲しいのに。 私もこの人の一番でいたいし、これから先ずっと私の一番であって欲しい。「要は、私が貴方を選ぶまでずっと待ってるつもりでしょう? もう貴方を待たせたくないし、これ以上は私も待ちたくないもの」「紗綾……」 想いは通じ合ってるのに、ずっと遠回りばかりしてた。やっとこうして、素直な二人でいられる場所に立つことが出来たのだから。 そう考えながら二人の時間に浸っていると、突然要の口から思いもしない言葉が出てきた。「式はなるべく早い方が良いだろう? 紗綾のご両親にもきちんと挨拶したいし、いつ頃時間が取れそうか聞いておいてくれないか?」「……はい?」 式とは、何の式の事だろうか? もしかして……いや、そんな筈はないわよね。私はまだここに来たばかりだし、来週には本社での仕事が始まるのだもの。冗談とかいうのね、要も。 なんて思ってゆっくり要の方を見てみるが、彼は至極真面目な表情で。「まさかここまで来て、結婚はする気が無い……なんて言わないよな?」「私の方からすると、いきなり出た結婚話の方
last updateLast Updated : 2025-08-12
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迎えに来たわよ 4

 その言葉でハッとする。 意を決してここまで来たはずなのに、また迷い始めてしまった自分を要に見透かされてしまっていた。もう離れないと決めたはずなのに、私には覚悟が足りていなかったんだと。「……そっか。要には私が不安に思ってる事まで、全部バレてしまっちゃうのね」「当然だろう? 俺はこんなガキの頃から、誰よりも紗綾を見ているんだから」 そうやって当たり前じゃ出来ないような事を、貴方は迷わず言えちゃうのよね。この人のそういう面にも強く惹かれているのは事実だけれど。誰よりも愛されてるのは分かってるし、それを実感もしている。 ……いつも自信がないのは、私自身なだけで。「俺が紗綾を幸せにしたい、それだけではダメか?」「そうね、私的にはダメかもしれないわ」 少し驚いたような表情をする要に構わず、言葉を続ける。だって彼のそういう考え方、ちょっとだけ納得いかないんだもの。「要が私を幸せにしてくれるのなら、私には「俺を幸せにしてくれ」くらい言ってくれなきゃ。これは貴方と私、二人の未来なんだからね?」「……紗綾」 確かに要なら私の幸せそうな顔を見ていられれば、自分はそれだけでいい。なんて言い出しそうだけれど、それは私の望む幸福な未来とは違う。 だから、ね? ちょっとぐらい要も私に望んで見せてよ。「ははっ、俺はもうお前には一生勝てる気がしない。だから……俺を幸せにしてくれないか、紗綾」「……ふふ、それなら出来る限り頑張ってみるわね」 素直じゃない、そんなプロポーズの返事。でもこれが私たちらしい気もして、どちらからともなく腕を背に回して抱きしめ合った。 「紗綾」 名前を呼ばれ顔を上げれば、要からの優しい口付けを受けることになる。柔らかな唇、少しカサついているのはやはり不眠のせいなのかしら? いつの間にかキスに夢中になってしまって、それが舌をも絡める深いものに変わっていた。静かな部屋に響く水音に反応するように、体の芯がジンジンと熱くなっていく。 「……はあ。要、これ以上は……きゃっ!」 彼からのキスを止めようと顔を少し離した瞬間! 膝裏に手を添えられて、グンと持ち上げられた。 そのまま要は私を肩に担ぐように持つと、黙ったまま奥の部屋に向かってズンズンと歩き出してしまう。「ちょっと待って、要? 嘘でしょ、まだ昼間なのよっ!」「……そんなこと知るか。
last updateLast Updated : 2025-08-14
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迎えに来たわよ 5

 珍しく気が急いているのか、要に少し乱暴な仕草でダブルベッドに降ろされる。普段は決して見せない、そんな彼の余裕なさげな様子に余計ドキドキさせられて。 私がそうであるように、この人も全てを曝け出して一つになりたいと思ってくれているはず。 ベッドに仰向けに寝かされた私、要は迷うことなく覆いかぶさってきて……彼の手が頬に触れた瞬間、つい言ってしまったのだ。「……その、今日は少しくらい手加減してよね?」 もちろんこれは本音ではない、咄嗟に出てしまった照れ隠しのようなもの。それを分かってるはずなのに、柔らかい笑みを浮かべて彼は予想もしない言葉を口にしたのだ。「心配しなくていい、今夜は紗綾に思い切り優しくして甘やかしてやるつもりだから」「ば、ばかっ……!」 私の事になると、とことん甘くなってしまう要。でも今日はそれが極甘のようで、流石に私も恥ずかしくなって顔を隠してしまった。それでも手の甲を撫でる彼の指は、やはりどこまでも優しく温かい。 この人が好きで好きで、とても愛おしくて…… 指が離れたと思ったら、今度は柔らかな唇が手の甲に触れるのが分かる。要はこうやって、この手をどかして私の顔を見せろと伝えてくるのよ。 いっそ強引に手を動かしてくれればいいのに、私が自ら動くように仕向けてくるの。 ああ……じれったい。けれども結局、早く要と触れ合いたくて私の方が先に降参してしまう事ばかりで。「意地悪……っ」「こういう時だけそういう顔をする、紗綾が悪い」 そんな、私が悪いみたいに言うけれど。こんな顔をさせてるのは間違いなく要なわけで……でもね、とても嬉しそうな目で見つめてくるから嫌だとは言えない。 私も要のその愛おしそうな眼差しで見られるのが、本当は凄く好きだから。 顔を隠していた手はそっと要の背中に回して、彼を見つめてキスの続きを強請る。私の後頭部に手を添えると、要はその唇をゆっくりと重ねてきた。啄むような軽いキスから、徐々に深くなりお互いの内を探り合うかのようで。 離れる前にぺろりと唇を舌で舐められて、期待でぞくりと胸が震えた。「さあ、どれから脱がして欲しい?」「なんで、そんなこと聞くの……っ?」 普段はいちいち私に確認なんてしないくせに、今日の彼は何だか少し意地悪で。焦らされるのはお互いに辛いはずなのに、余裕のある笑みにちょっとだけ腹がたってし
last updateLast Updated : 2025-08-17
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迎えに来たわよ 6

 一秒でも早く触れあいたいのは自分だけじゃない筈なのに、こういう時に先に音を上げてしまうのはいつも私の方だ。十年以上も私の事を想っていてくれた、要《かなめ》の忍耐強さにはきっと一生勝てっこない。 だけど私の負けで良い、要のこんな満足そうな表情が少しでもみられるのならば。「いい子だ、紗綾《さや》」「バカっ……!」 そう文句を言いながらも、彼が脱がせやすいようにと協力してしまうのは……結局は私も要の事をどうしようもなく愛しているから。 昔よりずっと可愛気のない性格になってしまった私でも、変わらず愛してくれるというこの人のおかげ。 オフホワイトのシャツを優しく脱がしてくれるが、それすらも焦れそうになって何度も手を出しそうになるがその度に止められる。これはもう絶対楽しんでるんでしょう? 一枚一枚を時間をかけて脱がされて、やっと触れてもらえる頃には期待で身体はもう熟れきってしまっていた。確認しなくても、きっと早く欲しいと願っている事が要にはすべてバレてしまっているに違いない。「ん……要、早く……」「そう急かすな、今日は優しく甘やかしたいと言っただろう?」 そういう要も声が上ずっているような気がして、彼も意外と限界に近いのかもしれない。それならば……「ねえ。今の一番の優しさは、要が私を熱く抱いてくれることなんじゃないかしら?」「その言葉は狡すぎる。だが今夜はそうさせてもらう、俺の忍耐も限界だからな」 ニヤッと悪そうな笑みを見せた彼、その表情に背筋が期待でゾクゾクしてしまう。愛されたい、彼に思い切り……今すぐに! それまでの優しさを残しつつも、要の愛撫は熱がこもっていてとんでもなく気持ちが良い。 胸を大きな手で柔らかく揉まれて、その先を舌で突かれればそれだけでお腹の下が熱くなる。身体の中心が彼を受け入れる準備を整えているのが、自分でもハッキリと分かるほどに。 無意識に揺れてしまう腰を、気付かれないようにすることも出来そうになくて。彼の前ではどれだけでも淫らな自分を曝け出してしまうのだ。「そう煽るな、俺にも少しくらい余裕のある顔をさせてくれないか?」「私には、そんな余裕なんてないものっ! 要だってそうでいいじゃな……んあっ!」 言い終わらないうちに乳首を軽く噛まれて、その刺激で背中が仰け反ってしまう。狡い、こういう時にいつもそんな手を使うのは
last updateLast Updated : 2025-08-19
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迎えに来たわよ 7

「そんな事になれば俺が紗綾《さや》を壊しかねないんだが、それでも良いと?」 余裕が無いような事を言いながらも、結局は私を気遣ってくれているのだ。要《かなめ》の本気がどれだけかを分かっているつもりで、まだ理解出来てなかったのかもしれない。 それでも、今望むことは変わらなくて…… 「壊れるほど愛してほしい、そんな時だってあるのよ。私だって貴方がこんなにも好きだから」 「紗綾っ……!」 その一瞬で要の目つきと表情が今までよりもずっと獰猛なものに変わった気がして、私の身体が痺れるような喜びを感じた。嬉しいの、こんなにもこの人の心を揺さぶれるのが自分だということが。 優しかった手つきが今までよりもずっと熱を帯びたものに変わって、私が反応する場所を執拗に攻めてくる。 「紗綾、愛してる……」 耳元でそう囁かれ背を仰け反らせれば、彼の前に晒された胸の頂きを指の腹で念入りに弄られて。ゆっくりと胸の前まで降りて行った要に今度は口に含まれ舐めしゃぶられて、快感でどんどんお腹の下が疼いてくるのがわかる。 彼の厚い舌で舐め転がされ吸われれば、もっともっとと言うように要の頭を両腕で抱え込んでしまう。理性なんてどうでも良くなるほどの、快感が与えられるから……身体だけじゃなく、心まで裸にされている気がして。 「あっ……わた、しも……っ、んんっ……!」 きちんと彼の想いに応えたいのに、私もだと言い終わらないうちに次の刺激が身体に与えられて。閉じきれなくなっていた両脚の間に要の手が滑り込み、ゆっくりとその中心部を指で撫で上げた。 クチュリ……その場所からはっきりと聞こえた水音に、一気に恥ずかしさで顔が熱くなる。感じすぎてその場所が濡れているだろうとは思っていたが、滴るほどだったなんて。淫らな自分を彼はどう思うだろう? そんな不安から顔を隠そうとすると…… 「堪らないな、こんなに紗綾が感じてくれているなんて。ちょっと約束を守れる自信がなくなりそうだ」 そう呟いた要の瞳はギラギラと欲望を灯していて、私が思っているよりずっと彼も興奮しているのだと気付く。けれど要の反応をじっくり見ている余裕なんて与えられるわけがなく…… 愛液を纏った指が中に入れられたかと思うと、そのままグルリと掻き回されて感じる場所を探り当てられる。私が反応すれば、彼は執拗にその場所を指の腹で押したり擦ったり
last updateLast Updated : 2025-08-21
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迎えに来たわよ 8

 与えられる快感に喘ぎ、達したことではあはあと荒い息をする私。その呼吸を整える間もなく内側から指を引き抜かれ、こんな些細な動きにすら敏感になってしまっている身体がブルっと震えてしまった。 そんな私の姿に余計に煽られたのか、やや強引に脚を割り開くと要《かなめ》がその秘められた場所をジッと覗き込んでくる。羞恥で隠れたいほどなのに見られれば見られるほど、その奥から蜜が溢れてくるのが分かって……「そんな、見ないでよ……っ!」 息遣いさえ感じるほど秘所に近い場所に、要の顔があるなんて信じられない。恥ずかしさで堪らなくなり身体を捻ってみれば、溢れた蜜がコポリと間に沿って垂れていくのが分かって。流石に耐えられなくなりそうになったその時、彼の熱が濡れた秘所に押し当てられた事に気付く。 期待でふるりと震える身体、そんな私に応えるようにズズっと要が私の内側へと自身を埋め込んできた。優しくすると言ってくれていたが、どうやらこの人も本当に限界だったようで、その熱杭で奥まで一気に貫かれてしまう。「あああっ……!!」 今か今かとこの瞬間を身体が待ち侘びていたためか、これだけでまたも私は達してしまって。イったばかりだから少しだけ待って欲しいと言う前に、獰猛さを感じさせる要の瞳と視線が合った。 その瞬間……!「んあっ! ぁ、ああっ……あん、ぁああっ! まっ、かな……んんんんーーっ!」 ガツガツと奥を勢いよく穿たれ、何度も何度も目の奥がチカチカして。彼が覚えている、私の内側の感じる部分を遠慮なく擦って突き上げるのだから堪らない。その度に白い世界に飛ばされるのに、引き戻されまた昇らされるのだ。 みっともなく唾液を垂らしている私に、息を荒くして腰を打ちつける要はしなやかな獣の様にも見えて。それでも愛おしい、このまま私の中にその欲望の全てを吐き出してと願うのだ。「紗綾《さや》、さあや……っ!」「要、かなめもっと……んんっ! 貴方でいっぱいにして……っ」 彼の動きがいっそう早く荒くなって『は……っ……』と要が小さく呻いた声と同時に、私の最奥に薄膜越しで熱情が放たれたのが分かった。このまま一つになってドロドロに溶け合いたいほどの深い愛情と求めあう身体が、終わらない夜の始まりの合図だと感じて。 すぐさま避妊具を付け替えた要に、四つん這いにされると今度は後ろから突かれてさっきよりも高
last updateLast Updated : 2025-08-22
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新たな始まりの朝を 1

「目が覚めたのか、紗綾《さや》?」 カーテンから漏れる日差しを眩しく感じながら瞼を開くと、ベッドの端に腰かけていた要《かなめ》に声をかけられた。起きてそれなりの時間が経っていたのか、彼は随分すっきりした表情をしていて。 差し出された水の入ったグラスを受け取り、ゆっくり喉に流し込む。昨晩あんなに乱れたせいか、声もガラガラだし喉に違和感も感じていたので助かった。「ありがとう。要は随分早起きだったみたいね」「……その、無理をさせて悪かった。優しくすると自分で言っておいて、歯止めが利かなくなってしまって」 申し訳なさそうに要はそう言うが、むしろその方が嬉しかったと話しても良いのか迷うところではある。流石に身体を重ねるたびに昨日の夜ほど愛されたら、私も体力が持ちそうにないから。 何と言っていいか悩んでいると、要が少し困ったような表情をするから可愛くて。「そうだ、風呂に入りたいだろう? 直ぐに浸かれるように温めに沸かしておいたから」 有難い。濃密な夜を過ごしたせいで身体のどこも汗や体液でべとついてしまっている。出来る事なら今すぐにでも湯船につかってサッパリしたい、のだけれど。「嬉しいわ、でもまだちょっと身体を動かせそうになくて。要もまだなら先に入って来てくれても……え、きゃあっ!」 ベッドに上半身だけ起こした状態だったのに、まさかそのまま抱えあげられるなんて思ってもいなくて驚いてしまった。要は軽々と私を横抱きにしたまま、バスルームへと進んでいく。 素肌を隠していたシーツを奪われたかと思えば、そのまま丁寧に温かなお湯の中へと降ろされた。ポカンとして出ていく彼の背中を見ていたが、直ぐに要も一糸まとわぬ姿で戻ってきて。 私を背中から抱きしめるような形で、要もバスタブに身を沈めてきてしまう。こんな状況は予想してなくて、どうすればいいのか分からず戸惑っていると……彼の二の腕に赤いひっかき傷が幾つかあるのを見つけて。「こ、これ……もしかして私が? ごめんなさい、痛いでしょう」「ん? これか、別に気にしていない」 要はそんな事かというように話すが、かなり痛みそうな傷が複数個ある。きっと快楽に溺れ、乱れた私が無意識に力いっぱい彼を引っ搔いていたのだろう。 昨晩の蜜な時間を思い出し、顔がどんどん赤くなっていくのが分かる。耳まで熱くなって、要に見られたくなくて必死
last updateLast Updated : 2025-08-23
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新たな始まりの朝を 2

「おはよう、要《かなめ》。もうすぐ朝食が出来上がるから、先に仕事の準備を済ませて来ちゃって?」 普段の起床時間通りに起きてきたであろう要が、少し驚いた表情でこちらを見ている。私に家庭的な一面があるのが、そんなに不思議な事なのかしら? そう思っていると……「紗綾《さや》の本社での勤務開始は明後日からだろう? 朝食なんて気にせず、まだゆっくり休んでいれば良かったのに」 こういうところが、優しいこの人の事らしいと思う。確かに昨日は無理をしたこともあり、一日中ほぼベッドの上で過ごしてしまったのだけれども。 流石に病人なわけでもないし、早くここの生活に馴染みたい気持ちもあって。「……そうね、でもこういう時は『ありがとう』と言ってもらえた方が嬉しいかも。好きな相手に何かして喜んでもらいたいっていうのは、要だけが思ってる事じゃないもの」「ああ、すまない。嬉しいのはもちろんそうなんだが、少し戸惑ってしまって」 戸惑う? 要の言っている意味が分からず首を傾げて続きを待つが、彼は困った様に目を泳がせて話そうとしない。とてもレアな要の姿に気を取られているうちに、そそくさと洗面室に逃げ込まれてしまった。 滅多な事で動じない彼が、いったい何に動揺したのか結局は分からないままで。「ご馳走様、とても美味かった。でも明日からは俺も手伝うから」 綺麗に朝食を完食した要は、食後のお茶を手渡す私にそう言った。もちろん自分も仕事が始まれば、今日のように手の込んだ朝食を出すのは難しい。 正直なところ手伝ってもらえるのは有難いし、このまま恋人らしい雰囲気も味わいたくて甘えてみせる。「それは勤務の始まる明後日からお願いするわ、明日までは新妻気分を味わわせてよ?」「――っ!!」 その瞬間、渡されたお茶を飲んでいた要が噎せて咳き込んでしまって。驚いて彼の背を撫でて落ち着くのを待ってみたが、いったい何にそんなに驚いたのだろう?「大丈夫、要?」「大丈夫だ、テーブルを汚してしまってすまない。その……紗綾が新妻とか急に言い出すから」 ぼそぼそと要はそう言うが、全くこちらに顔を見せようとしない。本当に大丈夫なのかしら? そう思ってると、彼の耳が紅く染まっている事に気付いて…… もしかして、この人は『新妻』という言葉に反応しててれているって事なの?「……意外だわ」「そうでもない、俺は紗
last updateLast Updated : 2025-08-24
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