要《かなめ》の胸に抱かれたまま夜を迎えたのだが……少し離れたところから聞こえてくるカラカラという音で、夢現のまま彼とこうなる前の事を思い出していた。 あれはまだ、私がこの人の事を信じられず意地をはって素直になれなかった頃のことで。**「ハムスター、見に来ないか?」 いきなり私の行き先を塞ぎ、何の脈絡もなく御堂がそう言ってきたのは……金曜の就業時間を終えたばかりの事だった。「……」 いま、御堂《みどう》は何と言ったのかしら? こう言っては申し訳ないけれど、強面の御堂に小動物を組み合わせることを私の脳が拒否しているようにも感じる。「紗綾《さや》、どうして黙る。俺に似合わないと思うのならハッキリと似合わないと言えばいいだろう?」 言ってよかったのかしら? ハッキリ言ってしまうと、それはそれで御堂が傷付いてしまうんじゃないかと言えずにいたのに。 御堂はいつも強引で私を追い詰めていく男だけれど、本当はとても小さい事まで気を使ってくれる優しい人だとも知っている。 ……だから。「えっと、そう言うわけじゃないんだけれど……ハムスターがどうしたの?」 ごめんなさい、御堂。本当は似合わないって思ってしまったけれど、やっぱりそれをあなたには言いたくないの。「だから、紗綾にハムスターを見に来ないかと聞いている」 御堂に一歩前に踏み出されて、私は一歩後ろに下がってしまう。 何だかんだと私と御堂はお付き合いをしている関係になったけれど、まだまだ強引に迫ってくる御堂に慣れたわけでもなくて……「ハムスターね、いいと思うわ。でも、あの……そのね御堂、ちょっと近すぎだから……」 他の社員はほとんど帰っているとはいえ、私と御堂の2人きりというわけじゃない。ほら、横井さんだってこっちをチラチラと見ているじゃない。「付き合っている事を横井さんも知っているんだから、別に構わないだろ? で……結局のところ紗綾は見に来るのか、来ないのか?」 「見に行くって、もしかして御堂《あなた》の部屋に……?」 そりゃあ御堂は構わないかもしれないけれど、私は構うわよ! 後で散々揶揄われるのは、絶対に私の方なんだからね? 「見に来るかと聞いているんだから、俺の部屋に決まっているだろう? 明日は俺も紗綾も休みだし、部屋でゆっくり過ごせるからな」 「……休みだから、部屋
Terakhir Diperbarui : 2025-07-26 Baca selengkapnya