病室には泣き声が絶えず響いていた。敬一郎は低く咳き込み、その声はさらに掠れていく。「......瑛司が、何かしたのか?」涙で目を潤ませていた優奈は、その言葉に一瞬呆けた。「それ、お兄ちゃんと何の関係があるの?」敬一郎は身体を起こそうともがき、優奈と和人が慌てて支える。「気をつけて」まだ座りきる前に、敬一郎は和人の腕を掴み、掠れた声で問い詰めた。「早く話せ......いったい何があった」澄江が前へ出て、涙を拭いながら俯く。「お父さん......明彦が警察に連れて行かれました」敬一郎の瞳が震え、目尻の皺までも揺れたように見えた。声はさらに重く、低くなる。「......理由は?」澄江は敬一郎の視線を受け、胸が震えた。だが覚悟を決めたように口を開く。「お父さん......本当は理由なんて分かってるんじゃないですか?」彼女は思い切るように続けた。「久米川瑠々の件です。誰かが証拠を提出して、診断書の偽造疑惑が立証されました。しかも、明彦名義の海外口座から、瑠々の主治医へ多額の送金がされていたんです。主治医への贈賄の疑いがあるとして、連行されました」敬一郎は息を詰まらせ、危うく呼吸が止まりかけた。和人の腕を握りしめ、しばらくしてようやく落ち着きを取り戻す。澄江もそれ以上はすぐに口を開けなかった。やがて敬一郎の呼吸が整うと、澄江は一気に問いかける。「お父さん、教えてください。明彦はこれまで一度も瑠々の件に関わっていません。それなのにどうして......海外口座が彼の名義なんですか?」彼女は飲み込んだ言葉があった。――瑠々のために動いていたのはお父さんだったはずなのに、どうして明彦なんですか?敬一郎ほどの人物が、その含みを理解できないはずがない。優奈と和人も、不安と焦りを滲ませた目で彼を見つめていた。その視線には、もはや「問い質す」という文字が浮かんでいるようだった。敬一郎は再び胸が詰まる感覚に襲われる。何度も深呼吸を繰り返し、白くなった唇を震わせた。「......瑛司を呼べ」優奈の不安はさらに強くなる。「え、お兄ちゃんなら今会社に――」敬一郎は重々しく遮った。「いいから呼べ。今すぐだ!」優奈には分からなかった。だが澄江は、その瞬間に敬一
Read more