玲子の冷たい視線が、鋭い刃のように蓮の胸を切り裂いた。彼女がこんな表情で自分を見下すことなど、今まで一度もなかった。かつての玲子はいつも笑顔で、挑発するように近づいてきて、蓮が仕事に没頭している時にも、突然セクシーなランジェリー姿で現れたりした。どれほど蓮が叱りつけ、拒絶しても、彼女は素直に謝り、そしてまた同じことを繰り返した。あの頃の玲子は、笑顔の中に甘えと諦めを滲ませながらも、確かに蓮だけを見つめていた。だが今、目の前の玲子は他の男の腕の中で微笑み、その男の妻になろうとしている。そんな現実を、蓮はどうしても受け入れられなかった。「……玲子、本気なのか?今日のこれは全部、俺を苛立たせるためじゃないのか?認めるよ、確かに頭にきた。今日は――俺たちの結婚三周年だ。一緒に帰ろう。離婚の話は、なかったことにしてやる」自信に満ちたその言葉に、玲子は呆れて笑った。もう何を言えばこの茶番が終わるのか、わからなくなっていた。その瞬間、隣にいた猛が突然玲子の顎を持ち上げ、熱く強引な口づけを落とした。冷たい感触が触れた瞬間、玲子の思考は真っ白になった。「うわあああ!御神木様が朝霧玲子にキスしたわ!」「これって公開での初キスよね!?御神木様が女性と並ぶところすら見たことないのに!」「朝霧玲子って、なんて幸運なの!」場内に歓声と悲鳴が渦巻く中、スマートフォンのシャッター音が次々と鳴り響いた。しずくですら、カシャカシャと何枚も撮り、そのまま玲子に送りつけた。こんな素敵な場面を残さないわけにはいかない。「御神木猛!玲子を離せ!彼女は俺の妻だ!」蓮はこの光景に耐えられず、止めようと前に出たが、御神木家のボディガードに阻まれた。双方の護衛が睨み合い、場は一触即発の緊張感に包まれた。猛は玲子の唇を離し、指先で唇の端に伝う唾液を拭うと、艶めいた笑みを浮かべた。「本当は、今すぐ抱きたいところだが――ここは騒がしすぎる」その妖しい笑みを見て、玲子は微笑み返した。「あなたはキスが上手いのね。きっと女の扱いにも相当慣れてるんじゃない?」「いや、君が初めてだ。俺たちは生まれつき相性がいいんだろうな」彼の口の巧さに、玲子は翻弄されるばかりだった。これほどまでに、男に惑わされたことなど一度もなかった。「
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