腎臓のドナーが二人分見つかり、私も妹も移植手術が受けられると知ったとき、私は嬉しさのあまり涙を流した。三年間も待って、冬木澄人(ふゆき すみと)との結婚式は延期に次ぐ延期。やっと腎移植を終えたら、もう何の負い目もなく、彼と結婚できる――そう思っていた。結婚式の夢に浸っていたその時、妹の早瀬恵理(はやせ えり)が突然、ドサッと私の目の前に跪いた。「お姉ちゃん……何年も病気で苦しんできたから、普通の体で生きるってどんな感じか、私も体験してみたいの。ねえ、二つの腎臓、全部私に譲ってくれない?」私は呆然とした。まさか恵理がそんなことを言うなんて、信じられなかった。私が何も言えずにいると、恵理はズボンの裾をつかんで、声を震わせながら懇願した。「お姉ちゃん……私はあなたより十年も長く辛い思いをしてきたの。ただ、普通の人みたいに生きてみたいの……お願い、二つとも私に譲って。次のドナーが見つかるまで待って。お姉ちゃんのことは、お義兄さんが絶対に助けてくれるから……」恵理は昔からわがままで、病気を理由に何でも私から奪おうとしてきた。でも、まさか腎臓まで……私は彼女の手を振り払って、一語一語をはっきりと言い放った。「この二つの腎臓は、もともと一人に一つって決まってたの。君が両方欲しがっても、病院が許さないわ。それに私だって、やっと見つかったドナーなのよ。手術して、澄人と結婚するためにずっと待ってたんだから。まして次のドナーが見つかる保証なんてどこにもない。恵理、君には一つで十分でしょ」私がそう言い終わると同時に、一人の人影が飛び込んできて、地面に蹲っていた恵理をそっと抱き起こした。そして私に怒鳴った。「早瀬棠乃(はやせ とうの)、どうして恵理を地面に倒れたままにしておくんだ。彼女は重い病気なんだぞ。殺す気か?」私は自分の婚約者が恵理を必死にかばう姿を無表情で見つめ、胸に苦いものが込み上げた。――いつからだろう、澄人が恵理とこんなにも親しくなったのは。恵理は泣きながら、澄人の胸に倒れ込み、まるで可哀そうなヒロインのように言った。「澄人さん、お姉ちゃんを責めないで……お姉ちゃんは、ただ私に腎臓をあげたくないだけなの……私は死ぬしかないわ。普通の人みたいに生きられないなら、生きてる意味なんてない……」その言葉を耳
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