夜、第一回目のオークションが始まり、竜志は清里のすぐ近くに現れた。夕の顔はたちまち不機嫌そうに曇り、清里の手を掴んで耳元で小声で呟いた。「清里の顔を立てなきゃ、とっくにあいつなんか始末してるよ。まるでしつこいハエみたいに、鬱陶しくてたまらない」清里は彼の頬に軽く口づけをした。「もういいじゃない、無視しよう?ね?」「ふん」夕は子供のように鼻を鳴らし、もう片方の頬も差し出してきた。清里はそちらにもキスを落とした。ようやく満足した夕は背筋を正し、嫉妬で真っ赤に染まった竜志の瞳を見て、得意げに微笑んだ。それを見た清里は思わず吹き出して笑ってしまった。ここ数年、夕は彼女の前ではますます子供っぽくなっており、娘の円加と清里の関心を奪い合うことさえあった。最近では円加が彼を見かけると、大人のように溜息をつくのだった。「パパ、いつになったら大人になるの?」オークションが正式に始まった。清里は六歳以降、刑務所の五年間を除けば、ずっと竜志や夕に甘やかされて育ってきたため、目が肥えてしまい、オークションの品々には興味を示さないことが多かった。だが、彼女が少しでも品物をじっと見つめようものなら、竜志と夕はまるで張り合うように競り合いを始めるのだった。「六億円」「八億円」「十億」「二十億」夕がいきなり価格を倍に跳ね上げたのを聞いて、清里は彼の背を思い切り叩いた。「頭が悪いの?たかが衝立でしょ?」叩かれても夕は嬉しそうに笑った。「君が好きなら、それだけで十分さ。金に糸目はつけない」「私はあの衝立の絵がちょっと面白いと思っただけよ。後で刺繍のできる職人に頼んで同じもの作ってもらえばいいし。そんな無茶な入札、次やったら殴るわよ」清里は睨みつけながら警告した。その視線に夕はむしろ喜びを感じていたが、竜志は二人の親密なやり取りに胸中が煮えくり返るような思いだった。かつて自分たちが付き合っていた頃、彼がどれほど彼女を甘やかし、機嫌を取ってきたことか。それなのに、彼女は決してこんな風に振る舞ったことはなかった。拒絶の言葉すら、いつも優しく、穏やかだった。では、どちらが本当の彼女なのか?あるいは、どちらが「愛する人」への姿なのか?その問いが竜志の胸に重くのしかかり、彼は夕との競争心を失って
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