私は高熱で何日も意識を失っていたけど、目を覚ましたとき、目の前には彼氏とその親友が並んで座っていた。場の空気が重かったから、私は冗談めかして言った。「あれ?あなたたち、どちら様?」斎藤哲也(さいとう てつや)は一瞬きょとんとして、私は思わず吹き出しそうになった。哲也は隣の友人を指さして言った。「覚えてないの?お前の彼氏が焦ってるってのに、僕だって親友として付き添うだろ?」私はその言葉に固まった。すると、神谷風真(かみや ふうま)が一歩前に出てきて、こう言った。「そう。僕はお前の彼氏、風真だよ」私は二人をちらりと見て、彼らの嘘を暴くことはせず、記憶を失ったふりをした。「風真、あなたは私の恋人なら、私を家に連れて帰ってくれる?」風真と名乗る男はうなずき、すぐに退院の手続きをしてくれた。本当の恋人である哲也はその間ずっとその場に立ち尽くしていた。結局、私を家に連れて帰ったのは風真だった。私はそっと部屋を出て、ちょうどリビングで風真が電話しているのを耳にした。「頼むよ、しばらく佐藤美咲(さとう みさき)の彼氏のフリしてくれ」「お前、それ本気で言ってんのか? そんなこと、いつかバレるぞ」「大丈夫だって。あいつちょろいからさ。僕のこと、死ぬほど好きなんだ。絶対に僕を捨てたりしないよ。てか、もう付き合って2年経ったし、正直飽きたんだよね。記憶喪失の今のうちに、ちょっと自由にさせてもらうってだけ」「高橋玲奈(たかはし れいな)とくっついたんだろ。だからこそ、今のうちに……」「男は一生に一人だけじゃ満足できないさ。でも僕の心はちゃんと美咲にあるから」私は静かに自室に戻った。ドアを開けたとき、少し音を立ててしまったので、再び寝室から出るふりをした。風真は物音に気づき、慌てて電話を切って私を振り返った。「もう少し休んでいればよかったのに」彼は私の額に手を当てて熱が下がっているのを確認すると、私の手を取りソファへと連れて行った。「お腹、空いた?」お腹がグーッと鳴った。「何か食べたい?うどんでも作ろうか?」私はうなずいた。彼は立ち上がって棚から牛乳を取り出し、私に手渡すと、髪を撫でて頬にキスをした。「いい子にして待っててね。すぐできるから」彼が立ち去ろうとしたとき、私は
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