和子は心の中の疑問がまだ整理できていないうちに、少し離れたところから京子に呼ばれる声が聞こえてきた。彼女は急いで駆け寄ると、京子の腕を組んで、一緒に歩き続けた。二人が思う存分に楽しんでいると、次第に日が暮れてきた。和子は京子が車に乗り込むのを見届け、自分も乗ろうとした瞬間、先ほどの店に忘れ物をしたことに気づいた。彼女は京子にひと言告げると、一人で引き返していった。エレベーターの前に立ち、ドアが開くのを待っていると、突然背後から両手が伸びてきて、口と鼻をしっかりと押さえられた。「誰？」和子の心臓はドクンと跳ね上がり、激しく鼓動し始めた。とっさに振りほどこうとしたが、頭がくらくらし、まぶたが重くて開けられなくなった。意識が少しずつ薄れていく中、彼女は必死に唇を噛んで意識を保とうとしたが、あの馴染みのある匂いが鼻腔を通って入り込んできた。最後のわずかな理性も失われると、彼女は完全に意識を失った。再び目を開けた時、鼻先にまずカビ臭い匂いが漂ってきた。頭がズキズキと痛み、和子は乾いたまつげを瞬かせ、ゆっくりと周囲の様子を見渡した。薄暗い空間で、天井には斑に広がった水染みがあり、ひどく古びて見えた。体を動かそうとして初めて、手足が縛られ、全身が椅子にがっちりと固定されていて、まったく身動きが取れないことに気づいた。ここはあまり広くない小部屋で、家具はどれも何十年も使われてきたような古い物ばかりだった。混乱していると、ギイッという音とともに扉が開き、人影がずかずかと入ってきた。「目が覚めたな」その声はひどくかすれていたが、どこか聞き覚えのある響きだった。和子は全身が硬直し、ゆっくりと目を向けた。裕司の顔が視界に飛び込んできた。ここ数日見ないうちに、まるで別人のようになっていた。髪は耳を覆うほどに伸び、乱れたまま肩にかかり、顎のひげも剃られておらず、まるで街の浮浪者のようだった。「私を縛ったのはあんたなの？」和子の声には抑えきれない怒りがこもっていた。「一体何がしたいの！」「何がしたいって？」裕司の目は赤く染まり、和子の前にしゃがみ込むと、その瞳には執念が渦巻いていた。「ただ許してほしかったんだ。もう一度やり直したかっただけなんだ。しかし秀夫、あいつが俺を死ぬほど追詰めて、こんな惨めな目に遭わせ
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