まるでテレビドラマで見ているかのような景色だ。「昼になると緑も見えるんだ。北海道にいたから自然も必要かと思って、ここを選ばせてもらったんだ」 私のことを気遣うような発言に、胸がキュンとする。 その後、3LDK+2WICの部屋を案内してくれた。「この部屋は仕事で使わせてほしい。ベッドルームが二つあるのだが、美月も一人でゆっくりしたい時間もあるだろう。ここは好きなように使ってくれ」「こんなに立派な部屋を提供していただいてもいいんですか?」 私が言うと彼は厳しい表情を浮かべた。「あんなに大きな旅館のお嬢さんだったのに、あれからもやっぱりそういう扱いしか受けていなかったんだな」 私はハッとしてうつむく。 あまり両親のことを悪く言ってはいけない気がしたのだ。 悠一さんと出会った頃は辛くて思わず自分の気持ちを話してしまった。 まだ十七歳だったということもあり、そのことは許してほしい。「できれば夫婦として寝室で一緒に眠りたいところだが、少しずつでいい。この生活に慣れたら一緒に眠ろう。食事は家政婦が用意してくれるが、自分で作りたかったら自由にキッチンも使っていいし。ここは美月が安心して暮らせる自分の家だ」 大切に思ってくれているのが伝わって胸がふわりと温かくなってきた。 でも母が言っていたように、おじい様の体調が悪いから、安心させるために早く結婚したかったのだろうか。 愛があって私と結婚したのではない。 出会いから五年も過ぎている。変な期待はしちゃいけない。「美月、いきなりの東京の生活で不安なこともあると思うが、不安なことがあれば遠慮なく言ってくれよ」「ありがとうございます」 愛情がなくても人に優しくすることはできるかもしれない。 だから悠一さんを好きにならないようにしなければ……。 その夜はケータリングで食事を用意してくれたが、ほとんど食べることができずに私は自分の部屋に行って眠りについたのだった。
Terakhir Diperbarui : 2025-08-06 Baca selengkapnya