「俺の将来のパートナーになってほしい」 そう言われた時は、本当に心がトキメキこの世の春を感じた。ついでにファンファーレが頭に響いたような衝撃だった。 世界の『トラジェットコーポレーション』の現・CEOトラジェット・大翔さんからのプロポーズ。 まさに夢心地で足元がおぼつかないような、フワフワとした、なんとも舞い上がった状態だった。「は・・ 私が返事をする前にトラジェットCEOは冷酷な現実を突きつけた。「自分で言うのもなんだけど、俺はほら。モテるだろ?一応この会社のCEO一族の後継者で現・CEOだし?このプロポーション?この瞳の色も日本人には魅力的なのか?親族がなぁ…見合い写真を毎週のように持ってくるんだよ。三十路近くなると、親は「孫の顔が見たい」とか言い出すし。参るよなぁ?」 それで私はなんでしょう?「それでだなぁ、俺の秘書である反町には俺の婚約者という体で今度両親と会ってほしいんだよね」 ―――人生そううまいこと行かないわよね。私がCEOとだなんて、笑っちゃうわよ。「わかりました。では今週末に会社の前で待ち合わせでよろしいでしょうか?」「それだと、婚約者同士っぽくないなぁ。俺が反町の家に迎えに行くよ」「ふぅ。わかりました。では、『婚約者の家に初めてご両親に挨拶に行く』ような格好でお待ちしております」「口調も『婚約者』の時はもっと砕けた話し方で頼んだぞ」「了解しました」 はぁ、何にしても多くの従業員の中から私が婚約者役に選ばれてるわけだから、そこは妥協せずに全力で仕事として全うしましょう!……報酬でるのかしら?時間外労働にならないのかしら? そんな馬鹿なことも考えたがご両親と対面をする当日。私は内心燃えに燃えていた。「この日のためにネットで調べまくったわ~!ご両親に挨拶に行った時の成功・失敗例。それを鑑みての服装・そしてメイク!完璧な婚約者として振舞ってみせるわよ!そうよ、私はトラジェットコーポレーションの秘書なのよ?高倍率の難関を突破しての就職なのよ?秘書検定だって結構大変だったんだから!」 そんな私の思いとはうらはらにトラジェットCEOの車が私の家の前に到着した。「お前……。俺は満足に給与を与えてるつもりだったが、このようなところに住んでいるのか?」 そんなふうにCEOは言うけど、このマンションはカードキーでオートロッ
Last Updated : 2025-07-30 Read more