LOGIN主人公、反町文子は世界の『トラジェットコーポレーション』の秘書課で働いている。ある日、CEOであるトラジェット・大翔さんからプロポーズをされた。この世の春を感じた。返事をする前に言われた「俺の婚約者という名目で今度両親と会ってほしい」と。 なんだかんだと一緒に過ごすうちに文子は大翔に惹かれる。 そんな中、あるパーティーで大翔の母が二人が飲むカクテルに媚薬を盛った。これを機に二人の関係は微妙に変化していき……
View More「俺の将来のパートナーになってほしい」
そう言われた時は、本当に心がトキメキこの世の春を感じた。ついでにファンファーレが頭に響いたような衝撃だった。
世界の『トラジェットコーポレーション』の現・CEOトラジェット・大翔さんからのプロポーズ。
まさに夢心地で足元がおぼつかないような、フワフワとした、なんとも舞い上がった状態だった。
「は・・
私が返事をする前にトラジェットCEOは冷酷な現実を突きつけた。
「自分で言うのもなんだけど、俺はほら。モテるだろ?一応この会社のCEO一族の後継者で現・CEOだし?このプロポーション?この瞳の色も日本人には魅力的なのか?親族がなぁ…見合い写真を毎週のように持ってくるんだよ。三十路近くなると、親は「孫の顔が見たい」とか言い出すし。参るよなぁ?」
それで私はなんでしょう?
「それでだなぁ、俺の秘書である反町には俺の婚約者という体で今度両親と会ってほしいんだよね」
―――人生そううまいこと行かないわよね。私がCEOとだなんて、笑っちゃうわよ。
「わかりました。では今週末に会社の前で待ち合わせでよろしいでしょうか?」
「それだと、婚約者同士っぽくないなぁ。俺が反町の家に迎えに行くよ」
「ふぅ。わかりました。では、『婚約者の家に初めてご両親に挨拶に行く』ような格好でお待ちしております」
「口調も『婚約者』の時はもっと砕けた話し方で頼んだぞ」
「了解しました」
はぁ、何にしても多くの従業員の中から私が婚約者役に選ばれてるわけだから、そこは妥協せずに全力で仕事として全うしましょう!……報酬でるのかしら?時間外労働にならないのかしら?
そんな馬鹿なことも考えたがご両親と対面をする当日。私は内心燃えに燃えていた。
「この日のためにネットで調べまくったわ~!ご両親に挨拶に行った時の成功・失敗例。それを鑑みての服装・そしてメイク!完璧な婚約者として振舞ってみせるわよ!そうよ、私はトラジェットコーポレーションの秘書なのよ?高倍率の難関を突破しての就職なのよ?秘書検定だって結構大変だったんだから!」
そんな私の思いとはうらはらにトラジェットCEOの車が私の家の前に到着した。
「お前……。俺は満足に給与を与えてるつもりだったが、このようなところに住んでいるのか?」
そんなふうにCEOは言うけど、このマンションはカードキーでオートロックだし。何が不満なの?家賃だって結構払ってるんですけど?
「まあいい。さあ車にどうぞ、お嬢様」
そうトラジェットCEOにエスコートされて車に乗り込んだ。
全皮張りのいいシート。爪でシートを引っ掻いてしまわないかと心配になってしまう。嗚呼、小市民。
全体的に高そうな車だなぁ?これはスポーツカー?
詳しいことはわからないけど、高そうな雰囲気がする。
「文子(あやこ)」
世間的な‘嫁姑問題’になりそうだったけど、それも払拭されて私たち家族は別宅で新生活です。「おじい様、おばあ様とはそんなに頻繁には会えなくなるけど、代わりにお父さんとお母さんがみっちりいるからなぁ!」 そう大翔さんが言うと、すかさず大輝がツッコンだ。「お父さん、仕事しなくていいの?」「っ……お父さんは仕事が休みの時にみっちり遊んでやるからなー」 双子の男の子・大志(ひろし)と女の子・大海(ひろみ)、瞳の色が緑です。 もはや遺伝の神秘です。 「翔子だけ名前に大きいって文字が入ってない!」 と、言われた。 うーん、子供ってこういうの気にするんだよなぁ。「翔子、内緒なんだけど翔子だけお父さんの名前からもお母さんの名前からも漢字が一つずつ入ってるんだけどなぁ。不満?」「あ…、翔子だけだ!内緒にする!」「うふふ、いい子ね!」 大翔さんに似てチョロい子だわ。年齢のせいかな?まだ小学生でもないもんね。 大輝は来年小学生になります。虐められるといけないのでインターナショナルスクールです。英会話ができるように。そのうち大翔さんと英語で喧嘩するかもなぁ?なーんて思ってます。 幼稚園のうちはまだ珍しい瞳の色の可愛い男の子。って印象だったけど、小学校だと周りと違うだけでイジメの対象になっちゃったりするもんね。大翔さんがそうだったみたいだし。 やだ、うちの子はみんなインターナショナルスクール通い? 私だけが英会話が碌にできないということになるのかしら?秘書としてはできるけど、実用的にはちょっと…。私のはビジネス英会話よね。英会話スクールに通おうかしら?大翔さんに要相談案件ね。仕事もしなきゃなんないし。家事もあって、育児に英会話?大変かなぁ? なんて考える心の余裕がある程、私は今幸せ一杯です‼6人家族だし。多い?養える財力があるからいいのよ☆
妊娠がお義母様にコントロールされているのが何だか癪だ。妊娠で精神が不安定なのかな?「また産休で文子が仕事から抜けてるから、仕事が捗らない!」 って愚痴ってるし。仕方ないじゃん大事な書類渡すときになっていきなり悪阻とか困るし。私は‘軽い方’みたいだけど妊娠初期に無理はできないし。 安定期に入ったら働きたいって相談してみようかな?「おかーさんがずっといえにいてくれてうれしい!」 って大輝に言われるとなぁ。決心が揺らぐ。男の子だけど可愛いし(多分まだ)。 季節が巡って私は臨月となった。 子供って成長するの速いなぁ。小さかったはずの大輝がお兄ちゃん顔してるよ。 トラジェット家御用達の産婦人科は生まれる前に性別を教えてくれる。今度は女の子らしい。「大輝―。妹が産まれるんだってー」と、伝えたら、「僕は全力で可愛がって、僕が守るんだ」と応えてくれた。それはいいんだけど、ワガママっ子とかブラコンにならないようにしてね。 これもお義母様の企みのようでなんとも言えない。 大翔さんに話したいけど、仕事が大変そうだし。子供に罪はないもんね。子供が欲しかったことは事実だし。 結局話すことが出来たのはこの子が産まれた後。この子の名前は『翔子』になりました。この子も瞳の色が緑なんだよね。ポッとでの覚醒遺伝で大翔さんの瞳の色が緑なのに、この遺伝子強くない?私の遺伝子弱いのかなぁ?「なるほどね、二人ともおふくろの陰謀(盛った薬)でできた子供みたいで、なんか癪にさわるというか、だろ?」「まぁそうなんだけど。薬があったから子供達がいる。みたいな?それはちょっとイヤなのよ」「確かにね。大輝は完全に媚薬の影響だとしても、翔子は違うよな?でもおふくろが絡んでいるのが気に入らないと?」「翔子だって、スポーツドリンクになんか盛ってあったかもでしょ?なんか気に入らないのよ。子供達は好きよ?」「俺だって子供達は好きだ。しかしなぁ。なんだか薬がないと『妊娠しません』ってみたいだな」「そう!それよ‼違和感の正体」「試すか?」「吝(やぶさ)かじゃナイデス」 そんなことで、薬とは無縁に私は妊娠した。それも双子。大翔さんは大喜び。義両親も喜んでいました。「子供部屋が手狭になってきたわねぇ?」「いい機会だし、文子が出産した後独立したいと思う。家事は文子もできるし。なんなら家
温泉旅行ってなんか色っぽいというか艶っぽいよね。 畳にお布団。大翔さんがせっせと布団をくっつけてる―‼そこまでする?「温泉に入ってきますね」「ここは時間によって男湯と女湯が入れ替わるらしい。因みに部屋風呂も温泉だ!」 大翔さんがドヤ顔をしているけど、大翔さんの手柄じゃないでしょ? とはいえ、湯上りの浴衣とか艶っぽいと思う。「文子、その姿は他の男に見せたくないな」 え~?これからお土産を買いに行こうと思ったのに。大輝が楽しみにしてるよ?「それなら、私は湯上りで浴衣姿の大翔さんを見てみたいです。あ~あ、お土産を買いに行こうと思ったんだけどなぁ。大輝が楽しみにしてるんだよなぁ」 大翔さんはチョロかった。 温泉街を浴衣姿の二人でデートするような感じになった。「そういえば、ちゃんとしたデートってしたことありませんでしたね」「ああ、そういえばそうだな。これがいい機会か。それにしても文子の姿を他の男の目に触れさせるのは……」「あら、私だって大翔さんの浴衣姿を他の女性の目に写すのは嫌ですよ?」「そんな可愛いこと言ってると、後から後悔するんじゃないか?」 この後はまた温泉に入りたい。外でちょっと体が冷えたから。「温泉に行ってきますね。大輝が好きそうなお土産があってよかった」「温泉なら部屋風呂に入ればいい。一緒に入るか?」 覚悟を決めた方がいいんだろうか?「まぁ、カラダを温めるだけだし、部屋風呂に一人(・・)で(・)入りますね」「ちっ」 大翔さんの舌打ちが聞こえましたが、まぁどうせこの後翻弄されるんでしょ?「大翔さんも冷えてるんでしょうから部屋風呂へどうぞ。お布団で待っていますね?」 ラストに小声で言ったのに、猛烈な勢いで部屋風呂へと入って行った。お風呂で溺れたりしないよね? ちょっと長風呂だから様子を窺うと、案の定のぼせかけていた。 旅館の女将さんに事情を説明すると、『新婚さんあるあるですね』と笑って介助グッズみたいなものを渡してくれた。あまりに新婚さんに多い事例だから、そういうセットが出来たみたい。 「大翔さん大丈夫ですか?コレ、オデコに貼ってください。あと、カラダの水分が不足しているでしょうからスポーツドリンクを飲んでください。後は……」「文子!後は文子が欲しい」 これまたストレートだなぁ。「オデコに貼って、スポーツ
「えーと?」「難しく考えると難しいな。そうだなぁ。大輝の弟妹がほしい!というのはどうだ?」 それはまた直接的と言うか、なんというかロマンの欠片もないですね。「私はただ守られて生活するのは嫌です」「うむむ、どうすれば?」「またトラジェットコーポレーションで雇ってください!」「秘書をしてくれるのか?歓迎するが、その間の育児はどうする?」「大翔さんのお母様がやりたがるのではないのでしょうか?それと、大輝の瞳の色についてですが、イジメられるのですか?でしたら、小学校からインターナショナルスクールで学べばよいのでは?英会話もマスターできるでしょうし、一石二鳥ですよ。気が早いですか?」「うちのおふくろならそうだな。休日には思いっきり遊んでやろう」 こうして私は反町文子からトラジェット文子になった。 息子の大輝もトラジェット大輝。 私はトラジェットコーポレーションでまた働けるようになったわけですが、働くときは‘反町文子’の名前で働いています。 たくさん溜まっていたはずの有給が大輝が病気になったとか怪我をしたとかの連絡で、どんどん消化されていく。 大輝も「おかあさ~ん!」と特に問題はないと思うんだけど、そういう時にはいつもニコニコのお義母様がちょっと睨んでくるから、正直なところ怖い。美人て睨むと怖いものだと思う。 最近、大翔さんが不穏なことを言いだしている。「そろそろ、大輝に弟妹がいてもいいと思うんだよな~」 ……情操教育としても兄弟がいた方がいいと思いますけど、直接的ですね。誘うならもっとロマンを身につけてください。「最近、なかなか二人きりになることがありませんね。仕事の時は絶対誰かいるし、家に帰っても同じ。二人で旅行に行きませんか?遠くは無理でも近場の温泉旅館にでも1泊で」「文子―‼」 抱きつかれました。「おとーさんズルい!ぼくも~!」 と、大輝も抱きついてきます。正直なところ重い……。物理的にも。 大翔さんは物凄い速さでいつ旅館に行くのかを決めてしまい(私の生理周期とかも考慮済み)、あっという間に旅館に行くことになりました。「うふふっ、二人とも大輝のことは任せてちょうだい。私は二人目は女の子がいいと思うの」 そんな明け透けに言わなくてもいいじゃないですか!「え?ぼく、いもーとができるの?」「弟かもしれないわよ?」