「この服、ちょっと露出が多すぎないかな……着なくてもいい?」松原真菫(まつはら ますみ)は、手の中にある体をほとんど隠せない黒いフィッシュネットのドレスを見て、顔が真っ赤になった。これを着て椎名和哉(しいな かずや)の誕生日パーティーに参加するなんて、考えただけで全身が燃え上がりそうだった。「ねぇ、着てよ。上着を羽織るから、他の人には見えないって」和哉は彼女の細い腰を抱きしめ、耳元で甘えるように囁いた。「こんなに愛してるんだ。お前のためにたくさん尽くしてきたじゃないか。俺のささやかな誕生日の願い、一つくらい叶えてくれてもいいだろ?」その言葉に、真菫は唇を噛みしめた。父が作ったギャンブルの借金を返してくれたのも、母の入院費を払ってくれたのも、弟を私立高校に転校させてくれたのも、すべて和哉だった。真菫が絶望のどん底にいた時、和哉は現れた。彼が言うように、これほどまでに尽くしてくれたのだから、和哉が気に入った服を着て願いを叶えてあげるくらい、断る理由はないはずだ。そう思うと、真菫は頷いた。「わかった。でも、今回だけだからね」「うん、安心して。次はもうないからさ」和哉は満足そうに微笑み、彼女の頬にそっとキスを落とした。「じゃあ、今夜ね」「ええ」真菫もキスを返し、和哉が自分の小さなアパートから出ていくのを笑顔で見送った。荷物をまとめ、母のお見舞いに行く準備を始めた。家を出ようとしたその時、ソファから「ピコン」と通知音が聞こえた。見に行くと、それは和哉が忘れていったタブレットだった。彼のLINEがログインされたままで、グループチャットの通知がひっきりなしに表示されている。表示されたメッセージの内容にちらりと目をやっただけで、真菫の全身の血が凍りついた。【どうだ、椎名さん。あれって、OKしたか?】【当たり前だろ。この俺にかかれば、モノにできないわけないだろう。今夜、楽しみにしとけよ。ジャケットを脱がせたら、お前らが投票で選んだあのドレスが、間違いなく真菫の体にあるからな】【さすが椎名さんだな。あの高嶺の花の松原先輩が、言いなりなんだもんな。昔、あれだけ大勢が彼女の連絡先を聞きたがってたのに、見向きもしなかったくせに】和哉はジト目のスタンプを送った後、こう続けた。【高嶺の花?笑わせる
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