到着ロビーで、自分の英語名が書かれたプレートを掲げている人を見つけ、近づいてみると、そこにいたのは三年ぶりに顔を合わせる元恋人の伊藤涼介(いとうりょうすけ)だった。彼は石井梨央(いしいりお)や数人の仲間たちと一緒に、首を伸ばして中を覗き込んでいた。「涼介さん、あれってあの頃の、尻尾を振る犬だった黒田美優(くろだみゆ)じゃないですか?」涼介も私を見て驚いたようだったが、すぐに何でもないふうに装って言った。「ほらな、言っただろ。どうせ素直に戻ってくるって」周囲はクスクス笑いながら私を見やった。「あのとき、美優は何も言わずに姿を消して、今になって涼介が成功してるのを見て、毎日布団の中で後悔して泣いてんじゃないの?」「それにしても、偶然会ったふりするなら、なんでそんなラフな格好で来たの?もっとちゃんと着飾ればよかったのに」「まさか涼介がいなくなったら、まともな服一着も買えないとか?今のあんた、相当惨めだね」昔は涼介に会うとなれば、必ず一番きれいなメイクをして、体のラインが映える服を選び、最高の自分を見せていた。でも今はそんな必要はない。妊娠中の私は、夫から「好きなように楽な格好をしろ」と言われ、化粧も禁止されている。このラフな服だって、彼がわざわざオーダーしてくれたものだ。彼らの言葉を聞いて、私は悟った。彼らは私の英語名しか知らず、迎える相手が私だとは気づいていない。黙っている私に、昔少し親しかった人物が慌てて場を取り繕った。「美優、帰ってきてくれてよかったよ。実は涼介、この三年間ずっとお前を探してたんだ……あちこちでお前の情報を探っている」涼介の笑みが一瞬固まり、すぐにまた何事もないように言った。「梨央の子どもがもうすぐ幼稚園に入るんだ。これからはお前が送り迎えをしろよ」相変わらず、自分中心で傲慢な態度。けれど私はもう昔のように彼を受け入れ続ける少女ではない。再会して心に残ったのは、ただの嫌悪だけだった。これ以上ここで時間を無駄にしたくない私は、身元を明かそうと口を開きかけたが、その前に梨央が口を挟んだ。「美優、涼介を恨まないであげて。ああいうことをしたのも、全部あんたのためよ。三年もいなくなって、外で何してたかわからないんだし?今のこのみすぼらしい格好……彼が私の秘書の仕事を譲ろ
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