「バタフライピー? あぁ、もしかして彼女は、月のものの最中ではないですか?」 「えぇ」 先程、マリの着替えの介助をしたので間違いない。どうしても不安感が拭えなくて、この邸のメイド達だけに任せることができなかった。特に怪しい動きを見せる者はいなかったので、そこまで監視する必要はなさそうだった。 月経による貧血なのかしら……? 「バタフライピーには、子宮収縮作用があるのです。 アントシアニンという成分が、含まれていましてね。妊娠や月経中に飲みすぎると、出血が止まらなくなる恐れもあるのですよ。 なるほど、それが原因とも考えられますね。 旅の疲れも重なったのかもしれないですね。 しばらく安静に休ませてください。 それではお大事に」 「ありがとうございます」 一人で納得した様子で、医師は立ち去って行く。 長く呼び止める訳にもいかず、お礼を言って見送った。何の根拠もなく疑うのはよくない。まずは、自分で確認することが先決。 さっそく図書室の入室許可をもらい、バタフライピーについて調べてみる。 結果、医師の言っていた通りの内容が書かれていた。 飲食物の成分にまで、気が回らなかった。自分の落ち度に、気が滅入る。 異国の食べ物が口に合わずに、体調を崩すこともあると、聞いたことがあるのに……。マリには可哀想なことをしてしまった。やはり、ここまで連れてくるのではなかったわね。早く回復するといいのだけれど。 不可抗力だったのに、人為的なものではないかと、疑ってしまった自分に嫌気がさす。 あの時のマリの言った言葉が、少しひっかかるけれど……まだ、話せる状態ではないものね。 元気になった時にでも、詳しく尋ねてみましょう。その時は、笑い話になっているといいのだけれど。 ✳︎✳︎✳︎ 数日後。 マリの容態は、芳しくなかった。その為、このままここに留まるよりも、帰国したいというマリの強い希望を聞き入れることにした。 本来なら、回復してから帰国するつもりだったのだけれど。 無理のないように、休憩をとりながらゆっくりと進んだ。 帰り着いたのは、当初予定していた1ヶ月はとうに過ぎていた。 マリは、療養を兼ねて実家へと帰すことにした。 早く元気になってほしいわ。 この出来事は、何年も後に思い出すことになる。 ✳︎✳︎✳︎ 「サラ!よく来てくれ
Last Updated : 2025-08-22 Read more