治安隊が到着すると、ルーカスは馬車へと運ばれた。 私も後に続いて乗り込む。 馬車は治安隊所有のもので、御者も騎士服を身に纏っていた。 車体には特別な印があり、怪我人などを護送していると一目でわかる。 緊急を要すると察して、周囲が避けてくれる。 どのくらいの道のりかは分からないけれど、渋滞に巻き込まれることなく進めそうで安心した。 車内に一緒に乗り込んで来たのは、中年の精悍な顔立ちの男性だった。 鍛えられた体格の男性なので、威圧感がある。やましいことがあるわけではないけれど、一緒の空間にいるだけで萎縮してしまう。事件性の可能性があると言われていたこともあり、疑われているのではないかと勘繰ってしまう。 そんな気持ちを悟られないように、ぎこちなく挨拶を交わす。 「宜しくお願いします。」 「あぁ」 元々寡黙な方なのか、もしくは私が疑われているからなのか、それ以上言葉を交わすことはなかった。その時は。 御者の掛け声と共に馬車は動き出した。徐々にスピードを上げていく。 診療所の先生は、私を信じて話してくれた。 その信用に応えたい。きっとルーカスは元気になる。そしたら、その時はルーカスと一緒にお礼を伝えに行きたい。 エミリオにも相談しないと。 手に力が入り、診療所の紹介状に皺ができる。 いけない、大事なものなのに。 丁寧に皺を伸ばすと、斜め掛けした小さな鞄の中に入れた。 あら? 何だろう 鞄の中には、被っていたスカーフと財布とハンカチしか入れてなかったはず。 スカーフを入れた時には気づかなかった。鞄の底に、折り畳まれた紙が入っていた。 おもむろに広げると、三人の絵が描かれていた。 かろうじて、人間と分かるイラストだった。三人ともにっこりと笑っている。身体は棒人間みたいだった。 「ふふ」 カオリが描いたのね。絵を描くのが苦手な所は、私に似たのね。 この小さな子はカオリね。中央にカオリ、左右にエミリオと私。 いつの間にこんな絵を描いたの? こっそりと鞄に入れるなんて。 帰ったらカオリに聞かないと。 ふふふ。今頃何しているかしら。 そうだったわ、何も告げずに出て来たのだった。 カオリが、私を探しているかもしれない。 でも、エミリオは……? エミリオは私がいなくなって、どう思っているだろう。 それに、なんと説明したらい
Last Updated : 2025-08-22 Read more