All Chapters of 淡色と君: Chapter 21

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最終話 遥か

 あの時の事を思い出しながら 眠っている 不安があったはずの僕の人生は  本当の幸せの色を取り戻していく  最終話 遥か ライアの影に後ろ髪を引かれながらも、僕はメグリの元へと足を早めていく。心のどこかで割りきれない気持ちが生きている。 それでも自分の未来の為に、彼女に会う事が一番大切な物事だと感じている。あの時の少女は本当の姿と名前を教えてくれた。「彼女はメグリだ」 闇に染まっていた僕は彼女への気持ちに蓋をする。そうやって自分を守る事を優先した過去の自分はもういない。 彼女の優しさは僕にとっては苦しく、切ない旋律そのもの。日常の一部だった彼女が、僕の前から姿を消したのには理由があった。 拒絶されたのだと勘違いをしていた。だからこそ全てから逃げようとしていたのかもしれない。そしてーー ライアと出会った。 二人は正反対の世界で生きている。表面だけを見ていると、どこにも共通点がないように見えるだろう。 二人はお互いの存在を感じながら、僕の前に現れた。全ては運命の悪戯だったのかもしれない。 ライアとメグリが重なりあいながら、違った表現で僕に感情を伝えていく。「僕達はそうやって全てを自分で決めていく。それしか出来ない」「……それは俺も同じだよ」 すれ違っていた僕と零は違った目線で同じ景色を見つめている。彼は僕とライアに与えた衝撃を昔話のように語りだした。 彼は彼で夢の世界に沈んでいる。その先に待っている僕の存在を確かめるように、寝返りを打った。 全ての光景を知っているのは、月だけだった。夜空の上で管理し始める煌めきは、何かを伝えようとしている。 僕と零とライアとメグリを別々の空間で抱き締めながら、向き合う事を知ったあの瞬間の僕達への慈しみの手紙を読んでいく。 言葉として変換されない呟きは、眠っている僕達の夢へと影響を与えていく。僕とメグリを繋ぐのは別々の道を選択した二人の存在だった。 現実感を感じながら、誰かに揺さぶり起こされた。真っ暗な空間の中で微かに光る輝きが、目の前に落ちてくる。 そっと拾うと、砂の一部となり溶けていった。「綺麗だ」 僕達の心を繋ぐのはその贈り物だけ。各々が自分の手中に納めると、懐かしがるように、壊れないように自分達の心臓に取り込んでいく。 僕には見えなかったはずの彼女達の物語がそれぞれの目線で
last updateLast Updated : 2025-08-31
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