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Semua Bab 淡色と君: Bab 1 - Bab 10

21 Bab

第一話 スマホカメラ

僕の瞳に映る君の姿。 仄めかしく、淡い色に抱かれている。 僕の手が彼女を求めようとしている。 全ての空間、空気、気温、感情 全てを止めていく。 巻き戻す事も出来ない記憶の中の君を 僕は物語として綴っていく。 第一話 スマホカメラ 僕の通っている高校には彼女がいた。いつも側から笑い合っている周囲を観察している。彼女はここにいるのに、存在しない。 不思議な魅力を持っている。 「ヒズミくん、何してるの?」 誰にも声をかけてもらえない。僕の存在は周囲に認知されていないからだ。それでも今日は今までとは違う。新しい日常が顔を出して微笑んでいた。 「……え」 彼女の声を知っている。裏庭で隠れて歌っていた姿を何度か見ていた。他の人達は彼女に見向きもしない。 それでも僕にとっては彼女の全てが美しい彫刻品のように思えて仕方ない。 本人に伝える事はないだろう。お互いが自分の姿を隠しながら、カメレオンのように周囲に溶け込んでいくのだから。 「どうして僕の名前を……」 「ん? 同級生だから知っていて当然じゃないかな」 初めて話す彼女は思った以上にフランク。自分の中で勝手に彼女の人格を決めつけていた事が恥ずかしくてたまらない。 僕は歪んで、真実を見ようとしない。 そうやって現実から内部の自分を引き出されないようにかくれんぼを続けている。 「そうだよね。ごめんね」 「どうして謝るの? そういう時は笑おうよ。苦しそうな顔よりも、ヒズミくんには笑顔が似合うと思うから」 トクトクと彼女の言葉に心が反応していく。家族にさえも言われた事のない言葉が、僕にとっては眩すぎて、動悸を感じていく。 「私はずっと君と話したかったの。いつも私の歌、盗み聞きしてたでしょ」 気づかれていないと思い込んでいた屈折した事実が真実へと書き換えられていく。彼女は教室でいる時とは違う雰囲気を作り出しながら、僕の手を優しく握っていった。 「……天童さん」 「苗字で呼ばないでほしいな。私の事はライアと呼んで」 「ライア」 ライアはクスリと微笑みを零すと、ポケットからスマホを取り出し、カメラの標準を合わせていく。 「知ってる? 最近のスマホってカメラ機能、性能高いんだよ」 カシャリ。 微かにスマホから流れてくる
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
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第二話 提案

 知られてはいけない 汚い僕は 彼女の横顔を盗み見ながら 何度も何度も繰り返していく  僕の心を知らない君は 僕の脆さを知らない君は いつでも側にいようとしてくれている  第二話 提案  高校以外でライアと会う事は一度もなかった。彼女と僕の唯一、繋がれる場所は一箇所だけだと知っているから。 それ以上は望もうとしない。  気がつけば夏休みが待っている。少ない時間を共有しながらも、この関係性は三ヶ月続いている。 それだけ時間が経ったのなら、他の友人の一人も出来るだろう。 そう思っていた。「僕との時間、つまんなくない?」「どうして?」 唐突に聞いてくる僕の様子を、キョトンとした顔で眺めている。彼女の瞳はキラキラしていてまるで海そのものようだ。 真っ直ぐ見つめられると、何処を見たらいいのか分からず、俯いてしまう自分がいる。「僕達は裏庭でしか話さない。だから」 どう説明したらいいのだろうか。頭の中で浮かんでいたはずの言葉は、口に出そうとすると消えていく。「私はこの時間を楽しみにしてる。ヒズミくんといると安心するんだ」「安心?」「不思議だよね。君と私は生まれる前から繋がっているんだよ、きっと」 そう言うと、遠くの景色に意識を取られるように何かを思い出している。彼女の見ている世界は、僕の知っている当たり前とは違うのだろう。 自分の見ている世界は彼女からしたら違和感そのもの。そして彼女の見ている世界は、きっと宝石そのもの。「もうすぐ夏休みに入るね」「そうだね」「ねぇ」 僕にしか聞こえないように囁く声が鼓膜を揺さぶる。今までで一番、近くに感じている彼女からはレモンの匂いがした。  僕は彼女の提案を受け入れると、惚けたように時間を無駄にしていく。数分前には学校にいたはずなのに、僕はベッドへ埋もれていた。 母親が夜ご飯の合図を送っているのに、その声さえも気付けない僕の心は彼女に掴まれたまま。 彼女の囁きが頭から離れない。僕は小さい呻き声を上げながら、説明のつかない感情に踊らされている。 コンコン—— ノックの音が崩れていた理性を再生しようと試みる。この名前のない感覚に埋め尽くされていたいと思う自分と、否定を繰り返す自分の間でぐらついていた。 やじろベぇのように行ったり来たりを繰り返しながら、自分を取り戻そうとし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
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第三話 二人だけの宝物

 混ぜても 溶けても 揺れても  僕達は一つにはなれない  砕けても 惚けても 戸惑っても  僕達は同じにはなれないんだ  第三話 二人だけの宝物  夏休みに入った僕に待っていたのは、単調な毎日だった。ライアの笑顔を見る事も出来ない。 それだけで苦しくて、悲しくなってしまう。  太陽の光を遮るように目を瞑ると、うっすらと淡い光がフィルターを通して溢れてくる。その度に、ため息を吐いてしまうんだ。「眠いの?」「分からない」「苦しいの?」「分からない」 彼女の姿をした影が何度も質問を繰り返す。どんな答えを求めているのかを理解出来ずにいる僕は、水のように流されていった。 現実も幻想も、必ず彼女が存在している。僕の中でライアの存在がいつの間にか大きくなっていた。 自分でも気づかないくらいに。 特別な色を放ちながら、僕との違いを明確に示唆していく。「私の提案を受け入れてくれる?」「……僕なんかが」 最低限のものしか置かれていない僕の部屋は、彼女の匂いを纏いながら別物へと変化しようとしているのかもしれない。  夕方になると遠くから始まりを告げる音が空を通して僕の元へと浸透していく。時間を確認するともうすぐ六時になる。 ゆっくりしていたはずの一日はあっと言う間に夕闇に消えながら、僕の手を引いて離さない。「行こう、彼女が待ってる」 自分の声が無意識に旋律を奏でると、体に力を与えていく。どうするのか迷っていたはずなのに、僕は時間に追われるように支度をする。  浴衣に着替えた自分の姿を見ていると、別人のように思えてしまう。着ているものが違うだけで、ここまで変わるのか。「……行ってきます」 僕が言った言葉がきっかけなら、望めば望む程に、手に入れる事が出来るのかもしれない。 ひゅるひゅると夏の夜が始まろうとしている。その日だけは希望を抱く事が許されているみたいに感じた。 こんな気持ちにさせてくれるのはライアだけだろう。彼女が僕の願いを形にしようとしてくれて、今日があるのだから——  神社の境内についた僕は、大木に支えてもらいながら時間を潰している。神社は少し離れていて、境内の中に露店は一切存在しない。 ライアはこの神社の事を話すと、ここを待ち合わせにしようと言った。 僕はただそれを受け入れただけだ。 
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第四話 金魚すくい

 手が触れるか触れないか その間を保っている僕達は 一瞬一瞬を楽しみながら 選択をしていく  少しでも触れてしまうと 後戻りが出来なくなるのだから  第四話 金魚すくい  夏祭りに行くのなんて何年振りの事だろう。あの時の自分が、こうやって女の子とデートしているなんて思わないだろうな。「あ。金魚すくいだぁ」 タッタッタッと子供のようにはしゃいでいる。揺れる簪が街灯に照らされて、輝いていた。 彼女に追いつこうと歩みを早める。興味にのめり込んでいるように見えていても、僕の存在を確認するように振り向いた。「ヒズミくん、遅いよ」 ライアは店主にお金を払うと、ポイを二つ貰った。ペロリと舌を出しながら、腕まくりをしている彼女を見ていると、心がポカポカしてくる。「私、金魚すくい得意なの。見てて」「ほう」 自信満々な彼女の勇姿を見届けようと、しゃがみ込む。僕達以外のお客はいない。この場を貸し切っているみたいだ。 ポイに角度をつけながら、ゆっくりと沈めていく。ポイは水を吸い上げると、馴染ませる為に水中の中で水平にしていった。ゆらゆらと自由に泳いでいる金魚を選別しているらしい。彼女は自分の好みの金魚を見つけると、金魚をすくい、斜めに引き上げていく。「とれたー」「凄いね」 パチパチを拍手をしながら、その光景を見ている。容器に入った金魚は自分が囚われた事にも気づかずに、背伸びをしていた。「ねーちゃん、上手だねぇ」「ふふふ」 店主にそう言われると、顔が緩んでいく。よっぽど嬉しかったらしい。別の表情を浮かべる彼女を見れて、嬉しく思った。「ヒズミくんもする?」「うーん。僕、苦手だから」 見ているだけなら簡単に感じる。実際は結構難しいんだ、コレが。僕はライアに渡された最後のポイを受け取ると、見よう見まねで彼女のやり方を真似ていった。「いい感じだよ、後は引き上げるだけ」「う、うん」 緊張感が指先へと流れていく。微かに震えている指に力を入れながら、ここぞと言う瞬間に引き上げた。「あ」 緊張感に負けてしまった僕は、掬い上げる時に思い切り引き上げてしまった為に、失敗してしまう。大きく穴の開いたポイだけが残った。「惜しかったね」「難しいな、コレ」「ふっふっふっ。慣れれば余裕だよ」 しょんぼりと肩を落とすと、ライアは僕の頭をよしよしし始
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
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第五話 願いと妄想 

 笑い合う僕達がいる 見つめ合う僕達がいる 友人として 特別な存在として  ぐらりぐらりと揺れながら 僕達は同じ花火を見つめてる 第五話 願いと妄想   周囲の目なんて関係なかった。いつの間にか僕達は寄り添いながら、同じ時間を共有している。「蒸し暑いけど、夜になるとマシだね」「そうだね」 自分から会話を作る事が出来ない。彼女の言葉に同意していくしか出来ない。 もっと自分に自信を持てたなら、違った夜を過ごす事が出来たのかもしれない。 それでも華やかな光が僕の背中を押していく。まるで殻を破るようにと。「……かき氷買いに行こうよ。食べたいって言ってたよね」 チラリと見えているかき氷の出店を指差す。彼女はぼんやりと見つめながらも、切り替えたように歩き出していく。「買いに行こう。まだ花火まで時間あるし」「うん、行こう」 祭りを楽しむ人達の中で僕達は、かくれんぼをしている。クラスメイトがいるはずなのに、鉢合わせをしていない。その事が、僕をより自由にさせていく。 日常とは程遠い、このイベントがきっかけで僕達の関係性が少しずつ変化していくなんて想像もしなかった。  ドンドンと太鼓の音が舞台を中心に響いている。簡易的なステージの上では、沢山の音楽達がのびのびと遊び始めた。 少し気になった僕は、横目で見ている。二人であのステージの前で、お互いの存在を確かめながら、笑い合えたら、と妄想をしてしまった。 彼女は僕の変化に気づけない。未来の音が想像として形作り、人々の記憶へと入り込んでいく。 この瞬間を僕は忘れる事はないだろう——「人いっぱいだね。並ぶと花火に間に合わないかも」 僕の心はライアの声に引き戻されていく。何事もなかったかのように、腕時計の針を確認していく。「大丈夫だよ、まだ花火まで1時間あるから」「へ? 花火九時からじゃないの?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-23
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第六話 夢から覚める瞬間

 夜空から溢れる宝石が 僕達を包み込んでいく  この景色を目に焼き付けながら 彼女の手をぎゅっと握りしめた  第六話 夢から覚める瞬間  僕達の頭上に美しい絵が広がっていく。 一瞬しか姿を見せる事のない光景が僕達を包み込んでいく。 時間が緩やかに流れていく。吸い寄せられるように魅入ってしまう自分がいた。「……綺麗」 最初の言葉は彼女の口から溢れていく。溜め込んだ感情をゆっくりと吐き出しながら、瞳をキラキラさせていく。「綺麗だね」 彼女に連動されるように無意識に呟いていく。そんな僕の言葉が聞こえたのか、彼女は嬉しそうに微笑んだ。 あんなに距離があった僕達は、最初から愛し合っている恋人のように支え合いながら、同じ景色を見ている。 そこには、それ以上の言葉は必要なかったんだ。  ガヤガヤと民衆の笑い声とすれ違う。楽しい時間は足早に過ぎて行く。数時間前に戻りたい、もう一度満たされた空間を感じたい。 終わりが来ない事を祈るけど、時間はチクタクと刻み続けた。「……もっと見ていたいな」 君と一緒に── 本音を言えたらどれだけ楽だろう。一度、気づいてしまった気持ちから逃げる事が出来ない。 弱虫で現実を受け止める器もない僕を置いてけぼりにするように、露店が次々に閉まっていく。 寂しさを残して、各々が自分の居場所へと帰る。魔法が解けていく。夢のような空間は、日常に戻っていく為に、合図を落としていった。「終わっちゃったね」 唇を突き出しながら、地面を蹴った。彼女のそんな姿を見れるのは自分だけ。そう勘違いしてしまう。 裏庭でしか繋がれない僕達が初めて別の場所で繋がった。その事実は、いつまでも続いていく。「また来よう」 伝えるかどうしようかを迷っていた自分はもういない。ここま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-24
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第七話 繰り返す過ち

 いつまでもこの日常が続く そう思っていたはずなのに  目の前にある光景は 無惨にも僕の心を折っていく  第七話 繰り返す過ち  あの日以来、ライアと会う事はなかった。素直な気持ちを口にしてしまった事を、後悔しつつも、どこか期待している。 二人を唯一、繋げる環境も今はない。どうやっても彼女へと繋げる道筋がなかった。「……楽しかったな、あの日」 些細な会話を楽しみながら、同じ景色を共有していたあの瞬間を忘れる事が出来ない。ふと漏れる笑い声、素直に示してくれる言葉も、僕にとっては光そのものだった。 ライアの事を考えると、心臓の音が加速していく。暖かい温もりを感じながらも、締め付けられていく。 その痛みを消す事が出来ない。「……僕はいつからこんなに」 呟きは部屋の中で散り張りながら、空中へ消えていく。それはまるであの夜の花火のように、繊細で美しい。 見えない世界がそこに隠れている気がした。  妄想は所詮妄想だ。現実は想像より上手くいかない。全てから目を逸らすように、ボフッとベッドに傾れ込んでいく。 頬に冷たい感触を感じた。その正体を確認しようとした時に、呼び出し音が鳴り響く。「わっ」 静寂に飲み込まれそうになっていた。そんな僕を現実に引き戻しながら、光を差し込まそうとしている。 もしかしたら天使のプレゼントなのかもしれない── 鳴り響く音は 僕から大切なものを奪おうとしている 感情は重なりながら 音と混ざっていく  普段なら誰からの連絡も来ない。その日に限ってはいつもと違っていた。高校に入ってから友人を作る事はなかった。そんな僕でも中学までは友人に囲まれて、生活を楽しんでいた。 今となっては過去の話になる。「俺達、友達だよな」「うん」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-24
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第八話 裂け目

友達と思っていても 僕とは違う選択をした彼は 全く違う世界の住人になっていた 隣にいたはずの笑顔が 過去の風景と混ざり合いながら 僕から離れていく 第八話 裂け目 あの時より成長できた自分を見せつけるように、立ち尽くしている。認めたくなかった過去を受け止める為にも、ここに来た。 「……久しぶりだな。変わっていないな、お前」 僕の青春の隙間にいたはずの彼は、あの時とは違う雰囲気を醸し出している。落ち着いた風貌からは感じられない程に、冷たい口調が際立っていた。 どんな表情をして、向き合えばいいのか分からない。自分の中の正解を探してみる。僕にとっては正しくて、彼にとっては間違いそのもの。そんな価値観のずれが記憶を断裂させようと、亀裂を歪ましていく。 「零《レイ》は変わったね、知らない人みたいだ」 「あれから何年経ったと思ってんだ? 人は変わるさ」 思ったよりも会話を続ける事が出来ている。少しの違和感とぎこちなさはあるけど。 いつも笑顔で甘えてきた零はいない。そんな事実がなかったような素振りまである。何がきっかけで彼を変えてしまったのか。到底、理解する事はなかった。 「お前が不登校になって、俺は孤立したんだ。あの時から世界が違って見えたよ。皆は俺を見てはいない、お前を気にかけてたんだ」 零は伝えたくない事実を、言葉に乗せていく。まるで自分自身に言い聞かしているみたいだ。 知りたくなかった、そんな言葉。僕が人間に対して、不安を嫌悪感を示すきっかけを与えたのが零なんだ。近くでいる事が当たり前だった。彼は僕にとって大切でかけがいのない存在だったのに、ある一言が全てを崩壊へと導いた。 「あの時の事を今更、言われても」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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第九話 違和感

全てが消えていく 自分の居場所も 居心地のよかった太陽も 最初から存在しなかったように 第九話 違和感 自分が彼女だと零に伝えていく。なんとなく言った事が事実だと知ると、不機嫌になっていく彼の姿があった。 「よろしくね」 「……よろしく」 元気を見せるライアとは対照的な零。僕の前でも表情を崩さない彼の本音が見えた瞬間だっtた。 「こんな素敵な友達がいたのなら、教えてくれてもよかったのに」 いつもの彼女とは違う雰囲気を漂わしながら、僕の腕を掴む。彼女からそんな言葉を聞けるなんて、夢なんじゃないかと思ってしまう程だった。 「ごめんね」 それ以上の言葉を思い付けなかった。変に言葉を付け足してしまえば、それは全ての違和感になってしまう。 僕の意図を汲み取るように、微笑む。 この事がきっかけで本当に彼女になってくれたらいいのに。口に出して伝えたい言葉は、心の中に沈んでいく。 「どうしたの?」 無意識の中で視線に思いを乗せていた僕を不思議そうな表情で見つめてくる。上目使いが可愛くて堪らない。 「ん、別に」 恥ずかしい感情を読み取られないように、言葉を濁していく。そんな二人の空気を目の当たりにする零は、罰が悪そうに歪んでいった。 「……なんだかお邪魔みたいだな。今日の所は退散するよ」 僕達の微笑む姿から逃げるように、スタスタと元来た道を歩き出した。彼が今の僕に何を伝えたかったのかを理解する事なく、不安定な空気感が消滅していく。 「……あの人は誰? ヒズミくんの友達じゃないよね?」 「友達だった人だよ」 「……ふうん」 僕を見る目と彼を見つめる瞳に違いなんてない。そう思いながら、目の前に広がっていく幸せを噛み締めていたんだ。 今思えば、あの時が分岐点だったのかもしれない。何を選択し、どんな未来を作ろうとしているのかを読み取る事が出来なかった。 ーーそんな僕は無能そのものだろう。 彼女を送ると、長いと感じていた時間が光速で回転していく。夕方だったはずなのに、辺りは真っ暗闇。 ポツリポツリと光を放出している街頭が、ふんわりと闇を切り分けていく。まるで悲しみを演出しているような空間に、心を救われた気がした。 嫌な事があると同時に、素敵な時間を手に入れる事が出来た。影と陽を知
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-28
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第十話 きっかけは一人の少女だった

 すきま風が僕の頬を撫でる ぼんやりと空を見つめながら ため息を吐いた 僕の知らない所で変化していく日常を 見ないようにとーー  第十話 きっかけは一人の少女だった いつもよりも時間の流れが遅い。僕の光が姿を隠している事が原因だろう。昨日掴まれた腕が、じんじんと熱を与えていく。 結局彼女が学校に来る事はなかった。体調を崩したのかもしれない。完璧主義な彼女でも、体調を管理し続ける事は難しいだろう。 「……大丈夫かな」 僕は彼女の姿を探すように、裏庭へと辿り着くと、力が抜けたように尻餅をついた。 ライアがそこに笑っている気がして、真っ直ぐに目の前の光景を焼き付けていく。誰もいないはずなのに、僕の心が少女を呼び寄せた。「君はこのままでいいの?」「え」「ライアは君とは違う道を選ぶよ」 少女は悲しく微笑みながら、言葉の余韻を残していく。学校の中に少女がいる事が現実離れしている事に気付いた僕は、彼女の足元に視線を向ける。 影があるはずなのに、少女には影がない。「私は君の未来を知ってる」「未来?」「ええ。ライアと貴方の未来を」 見た目とは違って大人のように振る舞っている。彼女は僕が見せている幻だろうか。その答えを握っているのは彼女本人だろう。「明日も彼女とは会えない。ここで君が動かなきゃ、何も変えられないよ」「……何を言って」 言葉の意味を探ろうとした僕は、少女へと手を伸ばしていく。彼女は無理矢理作った笑顔で笑うと、目の前から消えていく。 置いてけぼりにされた僕は、一人呆然と立ち尽くすしかなかったんだ。 重苦しさの中で漂っている。時間の流れも忘れて、全ての時間が止まったように錯覚していく。結局授業を一限目しか出ていない。 ずっと裏庭にいたのに、誰も気付く事はなかった。何時間経っても、人の気配が全くない。 ドクンと心臓が痛みを作り出していく。それは予感の形なのかもしれない。少女が伝えたかった物事へと繋がっている。 全ての時間を取り戻すように、学校を出た。何処に行こうとしているのか、自分でも分からない。 見えない印が教えてくれる。それは少女が作り出してくれた未来へと繋がるヒント。僕は淡色の光を辿りながら、迷路のような道を突破していく。 そんな僕を少女は空から見下ろしている。その事にも気付かずに、ただひたすらに君へと繋がる
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-28
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