Masuk孤独の世界で生きていた僕は彼女を見つけた。周囲には見せない本当の彼女を僕だけが知っている。淡色に包まれている美しい君は、僕の記憶の中で生きている。これは僕が本当の喜びを知っていく、青春の物語
Lihat lebih banyakあの時の事を思い出しながら 眠っている 不安があったはずの僕の人生は 本当の幸せの色を取り戻していく 最終話 遥か ライアの影に後ろ髪を引かれながらも、僕はメグリの元へと足を早めていく。心のどこかで割りきれない気持ちが生きている。 それでも自分の未来の為に、彼女に会う事が一番大切な物事だと感じている。あの時の少女は本当の姿と名前を教えてくれた。「彼女はメグリだ」 闇に染まっていた僕は彼女への気持ちに蓋をする。そうやって自分を守る事を優先した過去の自分はもういない。 彼女の優しさは僕にとっては苦しく、切ない旋律そのもの。日常の一部だった彼女が、僕の前から姿を消したのには理由があった。 拒絶されたのだと勘違いをしていた。だからこそ全てから逃げようとしていたのかもしれない。そしてーー ライアと出会った。 二人は正反対の世界で生きている。表面だけを見ていると、どこにも共通点がないように見えるだろう。 二人はお互いの存在を感じながら、僕の前に現れた。全ては運命の悪戯だったのかもしれない。 ライアとメグリが重なりあいながら、違った表現で僕に感情を伝えていく。「僕達はそうやって全てを自分で決めていく。それしか出来ない」「……それは俺も同じだよ」 すれ違っていた僕と零は違った目線で同じ景色を見つめている。彼は僕とライアに与えた衝撃を昔話のように語りだした。 彼は彼で夢の世界に沈んでいる。その先に待っている僕の存在を確かめるように、寝返りを打った。 全ての光景を知っているのは、月だけだった。夜空の上で管理し始める煌めきは、何かを伝えようとしている。 僕と零とライアとメグリを別々の空間で抱き締めながら、向き合う事を知ったあの瞬間の僕達への慈しみの手紙を読んでいく。 言葉として変換されない呟きは、眠っている僕達の夢へと影響を与えていく。僕とメグリを繋ぐのは別々の道を選択した二人の存在だった。 現実感を感じながら、誰かに揺さぶり起こされた。真っ暗な空間の中で微かに光る輝きが、目の前に落ちてくる。 そっと拾うと、砂の一部となり溶けていった。「綺麗だ」 僕達の心を繋ぐのはその贈り物だけ。各々が自分の手中に納めると、懐かしがるように、壊れないように自分達の心臓に取り込んでいく。 僕には見えなかったはずの彼女達の物語がそれぞれの目線で
すれ違うように 過去と未来を行き来する 心の奥にこびりついている記憶を辿りながら 前に進むしか出来ない 二十話 自分を忘れた彼女 ライアが見えている事に気付けない僕は、本当の意味で見つけた新しい居場所の匂いを堪能している。背中に突き刺さる視線から逃れるように、彼女の優しさに甘えていた。 目蓋を閉じながらお互いの心の歪さを互いの存在でカバーしていく。僕達に注がれている視線に気付いたメグリは、そっと目蓋を開ける。 微かに見えるライアの姿が闇の奥底へと吸い込まれていった。彼女の手にしていた光は地に落ち、本当の意味で自分のものになったと、確信する事が出来た。「遅いのに」「え?」 心を解かしていた僕はメグリが言った言葉を聞き逃した。もう一度引き出そうと反応してみるが、彼女が揺らぐ事はなかった。 クスリと心の中でほくそ笑む。その表情を見てしまったライアは他人に対して初めて嫉妬心を抱いていく。 耐えきれなくなった彼女は、声をかける事なくくるりと来た道に向くと、逃げるように走り出した。 僕が中心にいるのに、全ての裏側に気付く事はない。今更気付いたとしても、過去は戻ってくる事はない。その事を理解しようとしているのかもしれない。「もうすぐ授業が始まるよ」耳元で彼女の声が跳ねる。今までで一番リアル感が僕の鼓動を速めていった。「……もうそんな時間か。離れるのが惜しいけど、そろそろ行かなきゃ」「私も同じ。だけど貴方には貴方のするべき事がある。だから邪魔はしたくないの」 ここまで他者の言葉を信じられた事はない。自分でも驚くくらい、彼女の言葉をすんなりと受け入れていく。「行ってきます」 全てを受け入れていく僕は、慈しむように微笑んだ。そうやって少しずつ、僕達の想い出を蓄積し、いつか語り合う瞬間が来るまで、大切にしたい、そう願った。 理想と現実は違う。それでもこの感情を忘れない限り、僕は僕らしく歩いていける。 その隣にはメグリがいるんだと、言い聞かせながら離れた。 裏庭から抜け出した僕を包み込んでくる風の正体は見えない。吹き荒れる感情を整えながら、僕の内部へと潜り込んでいった。 今まで見ていた景色が、いつもとは違う別世界のように見える。自分の中の変化が、見せてくれた幻の一種なのだろうか。 長い1日が本当の意味で始まりの鐘を鳴らし
何事もなかったように 日常は同じ時間を繰り返していく 心に負った傷は 少しずつ修復されていく 全てを受け入れる事が 僕達を強くする 十九話 はじまりの地 なんとなく過ごしてきた当たり前の景色がある。その中で変わったのは、僕とライアの秘密の場所。行こうかどうしようか迷ったが、心の折り合いをつける為にいる。 僕が来るタイミングを知っているかのように佇んでいた彼女がいたはずなのに、目の前に存在しているのは、広い景色と切なさを漂わす空気だけだった。 彼女が全ての空間を支配していた事に気付くと、くしゃりと顔を崩しながら笑うしかなかった。 彼女と出会う前の自分は、この景色にそぐわない。ライアがいたから、自分の居場所にする事が出来ていた。 景色に身を預け、力を抜く。そうすると、微かに小鳥の囀ずりが鼓膜を揺らした。全ての感覚をリセットするかのように、ゆっくり視界を広げていく。「ライアは来ないと言ったでしょう?」「君は……」 誰もいなかったはずの空間にヒョンと現れたのはあの少女だった。彼女は僕へと一歩、一歩近づいてくる。「この空間は君の居場所じゃないよ。本当は何処に向かうのがいいか、分かっている癖に」 何を隠しているのかを把握している彼女は、僕の心の内部まで干渉していく。一つ一つの断片的な記憶が、一つの物語として纏められていく。 触れられている感触を感じながら、覚悟を決めた。妹からあの話を聞いて、僕の考えは少しずつ違う道に傾いていく。 それは少女が求める、本当の僕のストーリーなのかもしれない。 奇跡が起こるかどうかなんて、決めれない。何もせずに指を咥えている自分よりも、行動を言葉を引き金にして、自分の一部へと侵食させた。「私の名前を知らないヒズミには知っていて欲しい」 自分の要望を初めて伝えてくる彼女は、まるで別人のような表情を見せてきた。真っ黒な髪が本来の色へと塗り替えられ、僕の前に姿を見せた。 僕は彼女の正体を知っている。 ずっと昔から見ていた君の顔を忘れる事なんて無理だったんだ。「ヒズミには会いに来てほしい。私は彼女の代わりにはなれない。それでもいつも貴方を見ていたの、その気持ちは負けない」 少女は急激な成長をする。それはまるで殻を破って生まれてくるヒナのようだった。僕の希望となりうる彼女の言葉に引き寄せられると、僕の傷
自分の価値観は当たり前ではない 人それぞれ十人十色の人生が蠢いている 僕の苦しい 僕の悲しい 僕の辛さ それは彼女にとって対したことない 一つのリアルだった 十八話 本物の家族への一歩 突きつけられた現実は、僕の価値観を揺らがした。自分がどれだけ幸せで、満ちている人生を歩いているかを知る。 メグリはその当たり前を経験する事が出来ない。それを考えると、腑抜けになっている自分が情けなく思えてしまう。 「辛い感情は生きているから出来る。動けるから、意識があるから感じる事が出来る、私はそう思う」 妹の発言は的を得ている。この台詞を中学生で出来るのが凄い事だった。自分が彼女の年齢の時は、どんな風に生きていただろう。 そこには思い出したくないものがある。それでも妹は勿論、メグリはそこを含め、自分自身と戦っている。 正論は時として牙になる。しかし、その奥側に隠れている感情は温もりで満ちていた。僕は零とライアの事ばかり、考えていた。 自分の人生に関わるのは、その二人だけではないのに、周囲の思いさえも汲み取れずに成長してしまった自分がいる。 「お前の言う通りかもな……」 格好つけて言葉で着飾る事も出来た。それ以上に真摯に向き合おうとする彼女達の意思をなかった事にはしたくない。 僕は狭い世界で生きている。この世界から脱出する為には、沢山の人達と関わり、複数の人生を垣間見る事しか方法はない。 そう思う事が出来るーー 揺らいでいた気持ちも、抜けていた力も、全てを取り戻すようにリアルへと視線を注いでいく。靄がかかっていた景色は、何かに溶けていくように本来の姿へと舞い戻った。 「皆待ってる、ご飯食べに行こう」 妹は柔らかな表情で僕の心に問いかける。少しずつ彼女の心と融合をし始める僕は、本当の意味で兄の存在になっていく。 「……ありがとう」 それ以上の言葉が思い付かない。繕った言葉よりも心から溢れる音の方が心地いい。暗闇に迷い込んでいた僕は、そうやって失くしたものを取り戻していく。 そこに年齢なんて関係ない。こうやって手をとりながら、人は本当の意味で成長していく。この素晴らしい奇跡が目の前で起こっている。 全ての瞬間を大切にしたい。そう思える事が出来たんだ。 トントンと降りていく 僕達が進