私、朝倉優奈(あさくら ゆうな)は子どもを授かるために、夫とありとあらゆる体位を試した。ナース服のまま、ベッドの柵に手錠で繋がれ、私はとろんとした目で彼を誘う。夫の朝倉和真(あさくら かずま)が身をかがめて覆いかぶさってくる。さらに進もうとした矢先、和真は初恋の人からの電話で呼び出され、部屋を出ていく。どれほど呼びかけても、彼は一度も振り返らなかった。そのとたん、股のあたりに生ぬるさが広がり、下腹が波のように痛み出す。私は痛みに耐え、どうにか拘束を外して病院へ向かう。医者は厳しい顔で告げる。「妊娠しています。夫婦のこととはいえ、こんな無茶はもうやめなさい」私はうれしさのあまり涙があふれ、和真に伝えようと電話をかける。だが、そのとき、背後から着信音が鳴る。体がこわばり、ゆっくりと振り返る。そこには、ふくらみはじめた腹を抱える香坂美琴(こうさか みこと)の妊婦健診に付き添う和真の姿があった……病院の廊下で、和真は片腕で美琴を抱き寄せ、もう一方の手で苛立たしげに着信を切る。美琴は弱々しく、くたりと和真にもたれ、笑みを湛えてたずねる。「誰からの電話なの?どうして出ないの?」和真の視線は美琴の下腹に落ち、声はやわらかくなる。「たいした相手じゃない。いま一番大事なのは、お前と俺の子どもだ……」曲がり角に立ち尽くし、スマホを握りしめた私の手が、凍りつくように冷たい。結局、私もお腹の子も、彼にとっては取るに足らない存在にすぎない。十年前、システムに導かれてこの世界へ来た私は、和真を攻略する使命を背負わされた。けれど、任務を果たせないまま、私は逆に彼のためにこの世界に残ることを選んだ。和真には家族性の遺伝病があり、三十を過ぎれば体が動かなくなる運命にあった。彼を救えるのは、実の子の臍帯血だけ――その事実を知ってから、私はあらゆる手を尽くして妊娠を願った。それでも和真は、焦らなくていい、子どもがいなくても構わないと、いつも言い続けている。けれど本当は、子どもがいらないんじゃない。私の子どもが、いらなかったのだ。見えない手に胸をぐっとつかまれたように、苦しくて、悔しい。少し離れたところで、和真は不意に何かを察したように、はっと顔を上げる。目が合うと、彼はわずかにうろたえ、反射的に美琴の前へ
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