結婚式で、義妹を救うため、夫・高橋翔太(たかはし しょうた)は妊娠三ヶ月の私・井上春奈 (いうえはるな )を詫びとして宿敵に突き出した。「これが俺の誠意だ。どう扱っても構わない」私は泣きも喚きもせず、おとなしく宿敵について行った。前世で、私は自由と引き換えに全財産を差し出し、念願叶って翔太のそばへ戻った。なのに無理やり中絶薬を飲まされ、三日三晩苦しんだ。「お兄ちゃん、あの宿敵は全部あなたが雇った偽物だし、義姉さんは何もされてないのに、どうしてこの子を絶対に堕ろさせるの?」翔太が鼻で笑った。「芝居はな、徹底的に本物らしくやるものだ」私は怨みを抱いたまま息絶え、再び目を覚ましたとき、わざと連中に捕まるほうを選んだ。ところが三年後、新しい恋人の腕を取ってパーティーに現れると、翔太が狂ったように詰め寄ってきた。「春奈、俺たちの子はどこだ?」三年ぶりに会うと、目の前の男はすっかり赤の他人のようだった。「春奈さん、この三年間、私とお兄ちゃんがあなたを探してた。ずっと申し訳なく思ってたの」私は視線すらくれてやらず、ありったけの力で翔太の手を振りほどいた。翔太は私の冷ややかな目つきに不機嫌になり、声には露骨な怒りが滲んだ。「俺たちの子はどこだ?」私は鼻で笑った。滑稽だとしか思えなかった。「子どもがどうなったか、あなたが一番わかってるだろ!」三年前、本来なら私の人生でいちばん幸せなはずだった島の結婚式が、永遠の悪夢に変わった。妹・高橋彩乃(たかはし あやの)を甘やかすために、妊娠中の妻を宿敵へ投げ与えた男が、よくもそのセリフを口にできたものだ。もし私が生まれ直していなければ、活路さえ掴めなかったはずだ。翔太は一瞬目をそらし、手を伸ばしかけては引っ込めた。彩乃は目に涙をため、赤い縁で私を見つめた。「春奈さん、あの人たちに三年も連れ去られて、きっといっぱい苦しんだよね。今だって身体は……でも私もお兄ちゃんも気にしない。女が地獄に落ちれば、何を失うかくらいわかってる。あなたが身を汚したとしても、仕方ないことだし……」声は同情めいているのに、言葉の中身は悪意に満ちていた。翔太の顔色がたちまち陰り、黒い瞳がわずかに震えた。その頃には、パーティーの客たちはとっくに集まっていて、彩乃の言葉を
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