自分から進んで相手のベッドに転がり込んだくせに、どうして三年間の時間を思い出そうとしなかったのだろう。おばあちゃんは、ある時ふと正気を取り戻し、何かに気づいたのか、もう二度と慶人の名を呼ばなくなった。「誰でもいい。私の孫に優しくしてくれる人が、一番好きだよ」彼女は昔、私にこう言っていた。ちょうどその時、悠里がやって来て、まるで見物するかのように、少し離れたところから眺めている。私は歩み寄り、勢いよく手を振り抜く。悠里の頬に音が響き、彼女は尻もちをつき、その頬はみるみる腫れ、口元から赤い血が滲む。「きゃあっ!紗月、頭おかしいんじゃないの!」慶人が悲鳴を上げ、すぐさま飛びついてきて、必死に悠里の口元の血を拭う。――その光景に、私は思わず吐き気がするほどの嫌悪感が込み上げる。私は篤志を背に庇い、二人に向かって怒鳴る。「出て行って!出ないなら警察を呼ぶ!」慶人は私を見、それから私の後ろにいる篤志を見やり、目が狂気に染まる。ついに堪えきれず、振り上げた手を篤志に向ける。私はその手首を掴み、冷たい声で制す。「もうやめろ。私はあなたに敬意を払ってきた。でも――私の夫に手を上げる権利は、あなたにはない」慶人の顔が一瞬驚愕に歪み、そして喉を張り裂けるように叫ぶ。「やめろ!そのクズを『夫』なんて呼ぶな!」その後、場は完全に混乱する。私は篤志を庇い、慶人は狂ったように怒りをぶつける。「このクズが!俺の女を奪いやがって……お前なんか生きてる価値ねぇ!」罵りの矛先は篤志に向けられながらも、同時に私にも突き刺さる。一方で悠里は遠巻きに立ち、傍観者のように身を隠している。やがて、警備員が駆けつけ、二人は連れ出される。それでも慶人は暴れ、篤志を罵りながら、私の名を叫び続ける。私は一歩踏み出し、振り抜いた手が彼の頬を打つ。慶人は呆然とした顔で、私が本当に自分に手を上げるとは思っていなかったのだろう。「慶人……あんたには本当に吐き気がする。私は、身内を守る女だ。年長者には手を上げない。でも、あんたには別だ」悠里は口を開きかけたが、私の鋭い視線に気づくと、唇を噛んで俯き、そのまま黙って後に続く。……騒ぎが収まった後。篤志は黙ったまま、床に散らばったガラスを片付けてい
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