Semua Bab 妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。: Bab 11 - Bab 20

24 Bab

突然の提案

「さてと、私はそろそろ失礼します。突然来てしまって、申し訳ありませんでしたね」 「いや、気にする必要はないさ。なんというか、タイミングが少々悪かったというだけだ」 鍛錬終わりのセリード様を、いつまでも引き止めておく訳にはいかない。そう思って私は、話を切り上げることにした。「セリードお兄様……それにラナーシャ?」 「……ソティア?」 しかし私もセリード様も、その場に留まることになった。  それはソティアの声が聞こえてきたからだ。彼女が戻って来る間は、庭で風に当たろうなどと悠長にしていたが、その間に彼女の所用が終わったのかもしれない。「……それに母上も」 そんなソティアの隣には、サルマンデ侯爵夫人がいた。  それには私も、少し驚いた。もしかして所用とは母親に呼ばれた、ということだったのだろうか。まだ用事は終わっていないのかもしれない。「ラナーシャ、庭に出てきていたんだ?」 「え? あ、ええ、そうなの。少し涼もうと思って、そうしていたら、鍛錬が終わったセリード様と丁度出くわして……」 「なるほど、それは良いタイミングといえば良いタイミングだったかも……」 私の言葉に対して、ソティアは何故か笑みを浮かべていた。  その笑顔に、私は首を傾げる。それはどういった意味の笑みなのだろうか。「ラナーシャ嬢、お久し振りですね」 「あ、はい。お久し振りです、サルマンデ侯爵夫人。お邪魔しています」 「ご丁寧にどうも。でも、そんなにかしこまる必要はありませんよ。あなたはソティアの友人なのですから」 サルマンデ侯爵夫人は、朗らかな笑顔を浮かべていた。  親子だけあって、二人の表情はとてもよく似ている。ただ彼女の笑みにも、何か含みがあるように思えてならない。  ただ少なくとも、友好的ではあるようだ。そのことに私はとりあえず安心する。友人の母親とは、やはり良い関係を築いておきたいものだからだ。「ただ、今日は実はあなたと話したいことがあるのです」 「話したいこと、ですか?」 「ええ、そこにいるセリードのことで……」 「セリード様?」 サルマンデ侯爵夫人の言葉に、私とセリード様は顔を見合わせた。  その反応からして、彼の方も状況をよく理解していないようだ。それでまたわからなくなった。セリード様のことなのに、何故本人が知らされていないのだろうか。なん
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一つの理想

「前々から心配していたのです。騎士志望というのも、もちろん道の一つではあります。しかしながら、私としてはどこかに婿入りしてもらった方が良いと思っているのです」 庭から客室に招かれた私は、セリード様とともに並んでサルマンデ侯爵夫人の言葉を聞いていた。  その主張は、きっと隣の彼にとっては不本意なものであるだろう。その表情からは、それが伺える。 セリード様からしたら、サルマンデ侯爵夫人の主張は押し付けのように思えてしまうのかもしれない。彼だって色々と考えて、騎士になることを決めたのだろうし。  ただ夫人の考えも理解できない訳ではなかった。婿入りは家に有益なものだ。そもそも騎士というのは危険な職業でもあるし、きっと心配しているのだろう。「母上、それはなんとも勝手な話ではありませんか?」 「勝手?」 「私はきちんと考えて騎士を志望しました。父上にも話は通しています。だというのに急に婚約などと言われても困ります。大体、ラナーシャ嬢に対しても失礼だ。こちらの領分に彼女を招き入れた中で、上の立場から提案するなど傲慢な行いではありませんか?」 セリード様は、私のことを気に掛けてくれながら母親に意見していた。  騎士を目指しているだけあって――といよりもこれは本人の気質かもしれないが、セリード様はなんとも真っ直ぐな方である。  意見を言われたサルマンデ侯爵夫人も、心なしか満足気だ。息子の紳士的で騎士道精神にのっとった意見は、彼女にとっても誇らしいものなのかもしれない。「セリード、落ち着きなさい。あなたが言っているのは、正式な婚約の提案の話でしょう? これはまだ提案の提案の段階です」 「それは詭弁ではありませんか? 母上は逃げ道を塞ごうとしている」 「あらあら、あなたは私のことを悪く見過ぎですよ。これは善意からの提案です」 サルマンデ侯爵夫人は、のらりくらりと発言していた。  その言葉からは、彼女の度量が伺える。彼女を言いくるめるのは、恐らく困難なことだろう。  私は背筋を伸ばすことになっていた。友人の家である訳だが、油断してはいけない。場合によっては、これはリヴァーテ伯爵家の未来を左右するものになるのだから。「セリード、はっきりと言っておきましょうか。あなたは騎士には向いていません」 「……なんですって?」 サルマンデ侯爵夫人は、先程からの柔和
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騎士になったら

「母上、一体どういうことか教えていただけませんか? 私が騎士に向いていないなんて……」 「単純な話です。あなたは侯爵令息が騎士になるということに対して、楽観視しています」 サルマンデ侯爵夫人は、笑みを浮かべていた。その笑みからは、何かしらの確証があることが伝わってくる。  しかし本当に、そういうものなのだろうか。私にはそれがよくわからなかった。  侯爵令息が騎士になる。それは別に、珍しいことという訳でもない。次男や三男なら、そういうこともあるだろう。長男がどうしても騎士になりたい場合とかでも、認められる可能性はある。「楽観視……どういうことですか?」 「あなたのことですから、騎士は品行方正であり、潔白であるなんて思っているのではありませんか? 騎士道を重視している人達だと」 「……」 「実際に騎士は騎士道を重視しているでしょう。それを否定するつもりはありません。ただ、それだけではありません」 夫人の言葉に、セリード様は目を瞑っていた。  それは何かを考えている、ということなのだろうか。彼はただ、夫人の言葉を受け止めている。「侯爵家の令息であるあなたは、ほぼ確実に優遇されることでしょう。あなたには、騎士としての実力はほとんど求められません。実地での任務もないかもしれません。すぐに出世させられるでしょう。あなたのお父様も、働きかけると思います」 「……」 「あの人がやらなかったとしても、無言の圧力というものもあります。サルマンデ侯爵家の威光は及んでいます。考慮されないはずはありません。あなたはきっと、そういうことを嫌うでしょう?」 サルマンデ侯爵夫人は、容赦がなかった。  その視線は冷たい。息子のために、敢えて非情に徹しているのだろう。  セリード様は、何も答えていない。夫人の言葉に打ちのめされているのだろうか。それとも、何か反論でも考えているというのだろうか。「あなたは子供の頃から騎士に憧れていましたね。私もそのことについては、尊重してきたつもりです。しかし、段々とわかってきました。あなたは騎士に憧れを抱き過ぎていると……憧れというものは、時にすれ違いを生み出します。あなたの場合は、きっとそうなるでしょうね」 「……母上、あなたは一つ勘違いしているようだ」 「え?」 そこでセリード様は、ゆっくりと言葉を発した。  彼は笑みを
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冷たい長兄(モブside)

 イルルグとウルーナの二人は、エーヴァン伯爵家から追い出されることになった。  二人は、家に対して打撃を与えた。それは充分に追い出されてもおかしくないことである。  しかし二人は、父親の判断が不服だった。実の子供である自分達を非情にも追い出したことが信じられないでいるのだ。「お兄様、なんとかしてお父様に掛け合いましょう」 「……そうだな。そうするとしよう。こんなのはおかしい。確かに僕は婚約を破棄したが、追い出すなんていくらなんでもやり過ぎだ」 追い出されたにも関わらず、二人は未だにエーヴァン伯爵家の屋敷の近くにいた。  まだ戻ることができる。二人の中には、そういった気持ちがあった。故にイルルグは、エーヴァン伯爵家の屋敷に向かって足を進めていく。もう一度父親に、直談判しようとしているのだ。「あれは……」 「お兄様、どうかしたのですか?」 「ウルーナ、あれを見てみろ」 「……アルヴァンお兄様ですか」 そこで二人は、向こう側から自分達の兄が歩いて来るのが見えた。  彼の名前は、アルヴァン。エーヴァン伯爵家の次期当主である。  彼と二人との仲は、良いものであるとは言い難い。長兄との間には、隔たりがあったのだ。「……イルルグ、ウルーナ、まだこのような所にいたのか」 「兄上……僕達の邪魔をしに来たのですか?」 「邪魔? 何の話だ?」 「僕達は今から、父上に直談判しに行きます」 アルヴァンに対して、イルルグは鋭い視線を向けていた。  それに対して、彼らの長兄は呆れたような笑みを浮かべる。「お前達はまだ事態の深刻さというものを理解していないようだな……」 「……なんですって?」 「父上は、エーヴァン伯爵家に損害を与えたお前達を決して許しはしない。当然俺もだ。二度と屋敷には入れん。家族としての縁は切れているのだ。それをまず理解しろ」 アルヴァンは、二人に対して冷たい視線を向けてきた。  そこには、家族としての情などはない。家に対する敵を見る目だ。  それに二人は、怯むことになった。仲が悪かったとはいえ、実の兄から向けられる鋭い視線は、思っていた以上に辛いものだったのだ。「とはいえ、他人であるとはいえ、俺に慈悲がないという訳でもない。いくらか、包んでやった」 「なっ……!」 そこでアルヴァンは、懐から小包を取り出した。  彼は
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和やかながらも

 不機嫌そうな顔をしたサルマンデ侯爵夫人は、ゆっくりとため息をついた。  そこからは、彼女の苦心が読み取れる。つまりセリード様の指摘は、図星だったのだろう。それも相当なものかもしれない。「母上が反対しているのだということは、以前からわかっていたことでした。騎士の仕事は危険だと思われているのでしょう?」 「いいえ、騎士の仕事は危険です。それは紛れもない事実です」 「しかし、母上の言い分では私は現場には行かないのでは? 要職に就くということであれば、危険はないのではありませんか?」 「あなたは、危険に突っ込んで行きそうで怖いのです」 サルマンデ侯爵夫人は、先程までと比べるととてもリラックスしていた。  どうやら先程までの態度は、セリード様を欺くためのものだったようだ。どちらかというと、こちらの方が彼女の素なのかもしれない。「そのようなことをするつもりはありません……と言うことができないのは確かですね」 「やっぱり……」 「だから色々と理由を作って、私が騎士になることを阻止しようとしているということですか」 「別に間違ったことを言ったつもりはありません」 「……それにラナーシャ嬢を巻き込むのはやめていただきたい」 セリード様は、私のことを気遣ってくれているようだった。  彼が怒っているのは、その部分ということなのだろう。それがなんだかわかってきた。「ラナーシャ嬢、申し訳ない。母上の思惑のせいで、あなたに迷惑をかけてしまった」 「いえ、そのようなことは……そもそも私にとって、サルマンデ侯爵家との婚約の提案はありがたいものでしたし……」 「しかし母上は個人的な思いで、その婚約を提案した。それはなんとも、許しがたき行いだ」 セリード様は、なんとも真っ直ぐな人だった。  婚約の提案に色々な思惑があることなんて、珍しいことではないというのに。  しかしそれはもう、彼の性分のようなものなのだろう。曲がったことを許せないというその様は、正に騎士の王道といえるものだ。多分本職の騎士にも、ここまで真っ直ぐな人はいないのではないだろうか。「セリード、別に私はただ何も考えず都合がいいからラナーシャ嬢に提案した訳ではありませんよ」 「はい?」 私がセリード様のあり様に笑みを浮かべていると、サルマンデ侯爵夫人が言葉を発した。  彼女はなんというか、
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二人の相性

「ラナーシャ嬢は、立派な令嬢です。ソティアの母親として彼女と接してきましたが、私はそれをよく知っています」 サルマンデ侯爵夫人は、私の方を見て力強く口調で言葉を発していた。  その言葉に、私は少し驚く。まさか彼女から、そこまで評価されているなんて思っていなかったからだ。 しかしよく思い出してみれば、私の母もソティアはいい子だと何かと言っていたような気がする。子の友人という立場は、母親からしみてればよく見えるものなのだろうか。  いやそもそも、私が立派だというのは過大評価であるような気がする。ソティアがいい子なのは間違いないが、夫人の方は娘の友人ということによって、贔屓目が入っているのではなかろうか。「セリード、あなたとラナーシャ嬢はきっと相性がいいですよ」 「母上、急に占い師のようなことを言い出さないでください」 「客観的に見れば、そうです。ソティアだってよく言っています。ラナーシャ嬢はあなたと似た所があると」 「え? そうなのですか?」 ソティアの名前が出てきて、私は思わず反応してしまった。  彼女からセリード様のことを聞くことはよくあるが、似ているなんてそんなことは言っていなかったような気がする。「あの子とも相談して、私は今回提案したのです。二人ならきっと良い夫婦になると言ってくれました」 「そ、そうなのですか……」 「……まさかソティアまで余計なことを考えているとは思っていませんでした」 「余計なことなどではありません。あの子も兄のことを心配しているのです」 夫人はソティアの名前まで出して、私達の相性を力説していた。  実際の所、それはどうなのだろうか。セリード様と今日話した感じからすると、そこまで的外れということはないような気がする。いやそれは、私の希望的な観測だろうか。 彼は立派な貴族の令息だ。婚約相手としては、悪いなんてことはない。むしろ良すぎるくらいだといえる。  だから私は、自分が彼と相性が良いと思いたいだけなのかもしれない。「……え?」 「……む?」 そこで私とセリード様は、ほとんど同時にお互いの方を向いた。  その結果として目が合ってしまい、私達は反射的に視線をそらすことになった。今目が合うのは、なんというか少々気恥ずかしったのだ。「ほら、私の言った通りでしょう?」 そんな私達の様に、サルマンデ侯
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考えるべきこと

「……母上の考えは、よくわかりました」 セリード様は、再び母親の方に視線を向けた。  先程までの照れは、すでになくなっている。そんな彼を見ていると、私の方も冷静になった。これでなんとか、少なくとも照れはせずに話ができそうだ。「正直な所、私も自身もラナーシャ嬢との結婚は悪いものとは思っていません。ラナーシャ嬢は芯の強い立派な淑女だ。今日話してみて、それがよくわかりました」 「セリード様……」 私に対するセリード様の評価は、どうやら高いようだった。  それはもしかして、婚約破棄した状況にありながらも前に進もうとしているから、そう言ってもらえているのだろうか。  それに関しては、ソティアなどに愚痴を言ったりしているので、そこまで立派なものという訳ではない。ただ、とりあえず褒められたことは嬉しかった。「しかし婚約というなら、両家で話をすることが必要なはずです。母上、父上を通じて改めて話をしてください。サルマンデ侯爵家とリヴァーテ伯爵家、二家で話を行った結果というなら、私も反対するつもりはありません」 「セリード……」 「私がかつて憧れていた騎士とは、人々の平和を守るものです。リヴァーテ伯爵家に婿入りすることも、それに繋がるものです。伯爵として領民を守る。その道もまた一つの道だと考えています」 セリード様は、背筋を伸ばして言葉を発していた。  その決意に、私は息を呑む。どこまでも真っ直ぐな彼は。本当に毅然としていて立派なものだ。  その様を見た今、彼がリヴァーテ伯爵家に婿入りすることに反対などは一切ない。後はお父様などの判断次第といった所だろうか。「迷惑をかけて、本当に申し訳なかったな、ラナーシャ嬢」 「いえ、大丈夫です。お陰様で私は、貴重な縁談を一つ手に入れられましたから」 「あなた程の人にならば、縁談などいくらでもあるだろう」 「貴重な縁談は、そうあるものではありませんよ。今ここであなたと出会えたことを、私は幸運に思います」 セリード様程の人は、そういないだろう。お父様ならそれをわかってくれるはずだ。  彼はサルマンデ侯爵家の令息、相手の家としても不満などはないだろう。この縁談は、上手くまとまるような気がする。 ただなんというか、少し釈然としない部分もあった。  無事にまとまりそうな縁談に対して、もやもやした気持ちがあることはよ
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相互の報告

「なるほど、それは良い話だな……」 「ええ、そう思っています。サルマンデ侯爵から、追って連絡はあると思いますが……」 リヴァーテ伯爵家に戻って来た私は、お父様にサルマンデ侯爵家であったことを伝えていた。  お父様は、ひどく驚いているようだ。それは当然の反応である。友人の家に遊びに行ってきた娘が帰って来ていきなりそんなことを言われたら、動揺しない訳もない。 お父様の目には、期待が宿っている。侯爵家との婚約、それはやはり嬉しいものなのだろう。  だが、お父様の表情はすぐに曇った。思い出したのだろう。私の以前の婚約がどうなったかということを。「……喜んでいる場合ではないな。私は以前、一度失敗している。しっかりと考えなければならないことだ」 「ええ、そう思います。私個人の意見としては、セリード様は良い人ではあると思います。少なくとも、イルルグ様のように妹に偏愛を向けてはいません」 「ああ……」 私の言葉に、お父様は目を見開いた。  それはなんというか、何かを思い出したかのような反応だ。「そういえば、お前にはまだ伝えていなかったな。イルルグの婚約破棄について、エーヴァン伯爵家から連絡があった。きちんと補填は行うつもりであるらしい」 「そうなのですか? それは良かったですね……イルルグ様は今、何を?」 「それが追い出されたみたいだ」 「え?」 お父様の端的な言葉に、私は思わず変な声を出してしまった。  私の理解が追いつかない。正直、かなり困惑してしまっている。「お父様、それは一体どういうことなのですか?」 「言葉の通りだ。イルルグ、それにウルーナもエーヴァン伯爵家から追放されたらしい。既に親子の縁も切っているそうだ」 「それは……」 エーヴァン伯爵の措置は、あまりに迅速で苛烈だった。  まともな伯爵であるならば、何かしらの罰などを与えるものだとは思っていたが、そこまでのことをしているなんて驚きだ。 ただ、考えてみれば二人がやったことはエーヴァン伯爵家に大きな打撃を与えることである。身勝手な理由で婚約破棄をした。そんな二人に対して、追放はそこまで過ぎた処置ではないのかもしれない。「知らせを聞いた時は、私も驚いた。まあ、エーヴァン伯爵の気持ちがわからない訳ではない。とはいえ、実の息子や娘に対してそういったことをできる者はいないだろうな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-04
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二人の散財(モブside)

 イルルグとウルーナの二人は、兄から渡された資金でなんとか生活をしようとしていた。  しかしそれは、早々と破綻することになった。貴族としての生活を謳歌していた二人は、そこから追い出されてするべき生活というものをわかっていなかったのだ。「もう一日だけでいい。泊めてくれないか?」 「残念ながら、それはできません。宿泊費を払っていただけないのですから」 「僕達は、エーヴァン伯爵家の令息と令嬢だ。料金なら後で倍でも払う」 二人は、近辺でも最も高価な宿に泊まっていた。  そこで三日泊まった結果、アルヴァンから渡された資金が尽きたのである。  それは、少し考えればわかることではあった。しかしながら、二人にはわからなかったのだ。今まで貴族として贅沢して生きてきた二人は、この宿以外の選択肢が思い浮かばなかった。 この宿に泊まるお金があれば、安い宿ならしばらくの間は暮らすことができた。  つまり、二人は宿の選択を間違えたのである。充分過ぎる程に投げ渡されたはずの資金は、それでなくなった。「申し訳ありませんが、お二人は既にエーヴァン伯爵家から追放されていると聞いています」 「それは……確かに、そのような発表はあったかもしれないが」 「その状態で、確証もなくお二人をお泊めすることは出来かねます。せめて、誰か身内の方に連絡していただけませんか?」 エーヴァン伯爵家の領地内では、既に二人が追い出されていたことが知られていた。  そのため、宿の従業員は厳正な判断を下している。高い宿であるからこそ、彼には融通などは効かないのだ。  泊めるためには、きちんとした金銭のやり取りが必要である。従業員の主張は、こうだった。「……何故、この私の言うことが聞けないのです!」 そんな従業員の態度に対して、ウルーナが激昂し始めた。  宿の受付で、怒鳴り始めたのである。それには、流石の従業員も顔を顰めた。「この私を誰だと思っているのですか? 私は、エーヴァン伯爵家のウルーナですよ!」 「……申し訳ありませんが、この場でそのようなことを言われてしまうと、こちらも厳正な対応を取らざるを得ません」 「何をっ……!」 従業員は、ゆっくりと手を上げた。  するとイルルグとウルーナの周りに、大柄な男達が現れた。  二人は既に、上客という訳ではない。お金がないのに泊めろと喚いて
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-05
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行く先もなく(モブside)

 イルルグとウルーナの二人は、町の大通りを歩いていた。  どこに行くか決めている訳ではない。ただふらふらと歩いているのだ。「……お兄様、これからどうするのですか?」 「それは……」 そうやって歩いている中先に口を開いたのは、ウルーナの方だった。  彼女は不機嫌そうに表情を歪めている。それに対して、イルルグの方は落ち込んでいた。  彼にとって、幸いの妹のそういった顔は見たくないものだ。しかしながら、今は状況を打開する方策が思い付かない。イルルグにとって、今は危機的状況なのだ。「エーヴァン伯爵家に戻ろう。兄上にもう一度掛け合えば、またいくらか包んでくれるかもしれない。父上にも頭を下げよう」 「……無理ですよ」 「なっ……」 ウルーナの返答に、イルルグは驚くことになった。  彼女の口から、否定の言葉が出ると彼は思っていなかったのである。その額からは、ゆっくりと汗が流れていく。「あの二人は冷酷です。以前からそれはわかっていました」 「そうなのか?」 「ええ、だからこそあの二人は嫌いでした。私の言うことも聞いてくれませんし、自分のことしか考えていませんから」 ウルーナは、自分のことを棚に上げて父と兄のことを否定していた。  それは彼女が、イルルグを慕っている理由でもある。そう思って、彼は少し元気を取り戻した。「僕はあの二人と違う」 「それは、わかっています。しかし今は、この状況をどうにかする手段を考えなければなりません」 「誰かを頼るとしよう」 ウルーナの言葉に、イルルグは素早く答えた。  それは兄として、妹に格好つけるためだ。具体的に誰を頼るかなど、彼は考えていない。ただ思いついたことを、とにかく口にしただけである。「頼ると言っても、私達に頼れる人なんているでしょうか?」 「親戚……は、父上の手が及んでいるか」 「それに今晩はどうするのですか?」 「今晩……」 ウルーナは、不安そうにしていた。  それでイルルグは気付いた。これから泊まる所など、ないということに。  彼は、ゆっくりと周囲を見渡す。この町に自分を助けてくれる人は、果たしているのだろうか。彼は頭の中でそれを考える。「……なんとか泊まれる所を探すしかないか」 「そんな所があるのでしょうか?」 「僕が見つけてみせるさ。何、もう少しの辛抱だ」 イルルグは
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