「さてと、私はそろそろ失礼します。突然来てしまって、申し訳ありませんでしたね」 「いや、気にする必要はないさ。なんというか、タイミングが少々悪かったというだけだ」 鍛錬終わりのセリード様を、いつまでも引き止めておく訳にはいかない。そう思って私は、話を切り上げることにした。「セリードお兄様……それにラナーシャ?」 「……ソティア?」 しかし私もセリード様も、その場に留まることになった。 それはソティアの声が聞こえてきたからだ。彼女が戻って来る間は、庭で風に当たろうなどと悠長にしていたが、その間に彼女の所用が終わったのかもしれない。「……それに母上も」 そんなソティアの隣には、サルマンデ侯爵夫人がいた。 それには私も、少し驚いた。もしかして所用とは母親に呼ばれた、ということだったのだろうか。まだ用事は終わっていないのかもしれない。「ラナーシャ、庭に出てきていたんだ?」 「え? あ、ええ、そうなの。少し涼もうと思って、そうしていたら、鍛錬が終わったセリード様と丁度出くわして……」 「なるほど、それは良いタイミングといえば良いタイミングだったかも……」 私の言葉に対して、ソティアは何故か笑みを浮かべていた。 その笑顔に、私は首を傾げる。それはどういった意味の笑みなのだろうか。「ラナーシャ嬢、お久し振りですね」 「あ、はい。お久し振りです、サルマンデ侯爵夫人。お邪魔しています」 「ご丁寧にどうも。でも、そんなにかしこまる必要はありませんよ。あなたはソティアの友人なのですから」 サルマンデ侯爵夫人は、朗らかな笑顔を浮かべていた。 親子だけあって、二人の表情はとてもよく似ている。ただ彼女の笑みにも、何か含みがあるように思えてならない。 ただ少なくとも、友好的ではあるようだ。そのことに私はとりあえず安心する。友人の母親とは、やはり良い関係を築いておきたいものだからだ。「ただ、今日は実はあなたと話したいことがあるのです」 「話したいこと、ですか?」 「ええ、そこにいるセリードのことで……」 「セリード様?」 サルマンデ侯爵夫人の言葉に、私とセリード様は顔を見合わせた。 その反応からして、彼の方も状況をよく理解していないようだ。それでまたわからなくなった。セリード様のことなのに、何故本人が知らされていないのだろうか。なん
Terakhir Diperbarui : 2025-09-02 Baca selengkapnya