受付で招待状を要求されたが、彼はそんなもの持っておらず、つまらない口論も煩わしいので、無視してそのまま押し切って入っていった。彼は大股で前を進み、後ろからついてきた受付が「入らないでください」と必死に止めても、構わず進んだ。重い両開きのドアを押し開けると、まず司会者の声が聞こえた。「新婦、あなたはこの男性を夫として……生涯、彼に変わらぬ忠誠を誓いますか?」続いて、真っ白なウェディングドレスを身にまとい、花束を抱えた美月が、タキシード姿の景祐と向かい合って立っている姿が見えた。二人は幸せそうに見つめ合い、司会者の問いかけが終わると、美月は「はい、誓います」と答えようとした――そのとき、入口の物音に気づき、ふと動きを止めた。振り返ると、宏樹が大股でステージへ歩み寄ってくる姿が見えた。美月の目に驚きの色が浮かんだ。ここ数日彼の姿を見ていなかったので、宏樹はもう諦めたのかと思っていた。その直後、胸に苛立ちが込み上げてきた。任務はもうすぐ完了するというのに、なぜ宏樹が今さら割り込んでくるのか。客席の招待客は一様に宏樹の顔を知っており、たちまちざわめきが湧き起こった。宏樹は壇上に上がると、いきなり美月の手をつかみ、焦るような口調で言った。「美月、彼と結婚しないで。俺が間違ってた。俺と一緒に行こう……」美月がまだ手を振り払っていないうちに、傍にいた景祐が先に彼の手を美月の手首から外し、そのまま彼女の手を握った。手を振り払われても、宏樹は景祐に一瞥もくれず、ただひたすら美月を見つめ続けていた。彼はポケットから腕輪とイヤリングを取り出し、彼女の前に差し出して、切実な声で言った。「美月、これを覚えているか?ずっと君のために預かっていたんだ。ただ君が戻ってきて、それを受け取ってくれるのを待っていただけなんだ。昔の俺は本当に悪かったって分かってる。もう一度だけチャンスをくれないか?残りの人生をかけて償うから、頼む、行かないで。君が彼のことを本気で好きじゃないのは分かってる。ただ誰かと結婚したかっただけなんだろう?だったら俺でもいいはずだ。一緒に来てくれたら、明日すぐに結婚式を挙げるよ……頼む、俺を選んで……」あの数日間、宏樹はずっと考え続けていた。美月の行動パタ―ンを何度も思い返し、ようやくこの結論にたどり着いたのだ。
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