All Chapters of 愛の季節は過ぎて: Chapter 11 - Chapter 20

耀太は吐いたり下したりで、丸一日病院で大騒ぎした後、ようやくぐっすりと眠りについた。陸斗の母は孫の顔を撫でながら、胸を痛めていた。「あの母親失格の女のせいよ。子供に変なものを食べさせて！見てなさい、落とし前をつけさせてやるから！」暁音は気まずそうに座っていた。福祉施設で自分の言うことをよく聞いた耀太を褒美として、ハンバーガー、フライドチキン、アイスクリームを食べさせたのは彼女だった。まさか耀太がこれほどデリケートに育てられていたとは。彼女は陸斗の母が元々雪奈を好きではないことを知っていたので、いっそ罪を彼女になすりつけることにした。「そうそう、耀太は藤堂家の跡取りなんですから、万が一のことがあったらどうするんですか？」暁音はさらに油を注ぐように言った。「ママ業ってね、誰にでもできることじゃないのよ」陸斗の母は聞けば聞くほど腹が立ち、しきりに陸斗に小言を言った。「まだ突っ立って何してるの、あの女を呼んできなさい！」陸斗はこの数日、これらの厄介な事柄にイライラしていた。「母さん、耀太はただの胃腸風邪だ。点滴を数本打てば治る。雪奈も子供のことを心配しているんだ」暁音は彼がまだ雪奈を庇っているのを見て、心穏やかではなかった。「あら、痛い」彼女は腕を抱えて痛みを訴えた。陸斗は急いでしゃがみ込み、様子を見た。「傷口がまた痛むのか？」福祉施設の事故で、暁音の腕はイルミネーションにぶつかり、10センチの傷を負っていた。縫合後、良くなっていたはずなのに、彼女は陸斗の同情を引くために、わざと傷口を少し裂いたのだ。ガーゼを通して血が滲み出ていた。暁音は青白い顔で歯を食いしばった。「大丈夫よ、陸斗さん。きっと耀太を抱いてお医者さんに見てもらった時に、傷口が開いちゃったのね」陸斗の母はそれを聞くやいなや立ち上がり、暁音のために憤慨した。「暁音はなんて優しい子なの。なのにあの性悪な雪奈にいじめられてこんな目に遭って。陸斗、あの子のために落とし前をつけてあげなさい！」陸斗は慌てて医者を呼び、暁音の傷口を再び包帯で巻かせた。「まず体を休めろ。後で必ず雪奈に謝らせるから」暁音は敢えて健気なふりをして、数滴の涙を絞り出し、彼の胸に倒れ込んだ。「陸斗さん、あなたにそう言ってもらえれば、どんなに大怪我をしても怖くないわ

陸斗はこめかみを揉みながら、「あれは私が雪奈に贈ったものだ。彼女が施設に寄付するなら、全部売却したのだろう。大したことじゃない」と言った。お手伝いさんは顔に慌てた様子を浮かべ、「旦那様が奥様に贈られたプレゼントだけでなく、旦那様と奥様のウェディング写真やアルバムも......」と言った。陸斗は勢いよく立ち上がった。「何のアルバムだ？どういうことだ？」家政婦はもじもじしていた。「ご自分でご覧になった方が......」彼は疑わしげな顔で寝室に入った。一目見ただけで、ベッドサイドに置かれた等身大の結婚写真には彼一人しか写っていないことに気づいた。陸斗の頭が「ガン」と鳴った。彼は駆け寄ってじっくりと確認する。写真はハサミで切り開かれ、雪奈の側は白い人型だけが残されていた。傍らには床に散らばった写真。二人の集合写真はすべて、例外なく陸斗の顔だけが残されていた。彼は震える手でそのうちの一枚を拾い上げた。背景は葉璃山。雪奈がどれほど輝くような笑顔を浮かべていたか、彼ははっきりと覚えている！それは彼の会社が最初の成功を収めた後、彼女を連れて海外旅行に行った時のものだった。雪奈が心待ちにしていた葉璃山だ。「陸斗、もしあなたが今後私を裏切るようなことをしたら、『葉璃山下』で歌われているように、もう二度と私を手にすることはできないわ！」心臓が無数の針で刺されているようで、鋭い痛みが指先から心臓へと広がっていく。彼はあの時、彼女を抱きしめながら誓った。「俺、藤堂陸斗が雪奈を裏切ったら、『愛だけで葉璃山を我が物にできるものか』」雪奈は彼の胸の中で「クスクス」と笑い、彼のぎこちない方言の発音をからかった。今や葉璃山は本秀島にそびえ立っているが、彼はあの時の誓いをすでに破ってしまっていた。後悔の念に苛まれ、彼は顔を覆って号泣した。秘書が駆けつけた時、陸斗は航空会社に電話をかけ、雪奈のフライト記録を照会しようとしていた。「権限がないとはどういうことだ？私は彼女の夫だぞ！」電話の向こうで係員が辛抱強く説明した。「システム上、奥様側から離婚調停の申し立てがなされており、現在係争中のため、個人情報保護の観点から旦那様であっても照会には応じかねます」陸斗は激怒した。「何を言ってるんだ？私と妻はとても仲が良い。離婚なんて絶対にあ

陸斗の秘書が雪奈の行方は掴めなかったものの、驚くべきニュースを持ち帰った。「何を言った？雪奈が女の子を養子にしただと？」秘書が頷いた。「施設に電話して確認しました。確かに奥様がご本人で養子縁組の手続きをされたそうです」「その子の名前は？写真はあるか？」秘書が福祉施設の孤児たちの集合写真を彼に差し出した。「あの痩せっぽちの小さな女の子です。ノラという名前です」集合写真は露出オーバーで、陸斗は目を細めてもはっきり見えなかった。彼は目をこすった。「この子に何か特別なことがあるのか？彼女の資料は？」と尋ねた。秘書が再びファイルを開いた。「ノラ、2019年生まれ、日付不詳。何者かによって福祉施設に預けられました」2019年？耀太と同じ年に生まれたのか。まさか偶然か？陸斗は、あの時生まれたばかりの女児を自分の手で送り出したことを覚えている。隣の県に送るよう指示したはずだ。この市に現れるはずがない。秘書が突然驚きの声を上げた。「社長、鮮明な写真が見つかりました」陸斗は女の子の顔をじっくりと見つめ、どこか見覚えがあるような気がした。彼は突然思い出した。「福祉施設の落成式の日、耀太が突き飛ばしたあの子だ！」彼は当時、雪奈がとても興奮していて、危うく耀太を叩きそうになったことを覚えている。耀太は何と言っていたか？陸斗は突然思い出した。「耀太が『目尻にほくろがある子はみんな泥棒猫だ』と言っていた！」そうだ、目尻にほくろ！陸斗は震える手で写真を拡大した。女の子の目尻には、雪奈と同じ朱色のぼくろが輝いていた。なぜあの日、彼は気づかなかったのだろう？それは彼の注意力の半分が暁音に向けられていたからだ。こんなに重要な情報を見落としていたとは。まさか、この女の子が、彼と雪奈の娘なのか？ならばあの日の福祉施設で、雪奈はすでに子供が入れ替わっていた真実を知っていたのだ。陸斗は深い恐怖に陥った。もし雪奈が、自分の手で娘を送り出したことを知ったら、どれほど彼を恨むだろうか、と想像することもできなかった。秘書が陸斗の表情を観察し、結局あの日の福祉施設のホールの映像を出すに忍びなかった。ショックで倒れてしまうのではないかと恐れたのだ。陸斗は震える声で秘書に雪奈を探し続けるよう命じた。「どんな犠牲を払

陸斗は暁音を閉じ込めるよう命じた。「雪奈を見つけて直接対決すれば、雪奈はきっと俺を信じてくれる。許してくれる」彼は暁音に、かろうじて体を隠せる程度のバスタオルを投げつけ、彼女を車庫に放り込んだ。秘書はためらいがちに言った。「社長、篠原さんは有名人です。もし彼女が行方不明になったら......マスコミの注目を集める恐れがあります」しかし陸斗は気にも留めない。「彼女は今の芸能事務所との契約がもうすぐ切れる。彼女を藤堂グループの傘下に入れ。この落ち着きのない女を目の届くところに置いておく」彼はまた秘書に、雪奈の情報があるか尋ねた。秘書は、通行人が空港で撮った一枚の写真を彼に見せた。「奥様が女の子を連れて空港にいるのを見た人がいます。おそらく香辺行きの便でしょう」香辺？まさか、雪奈は香辺市に帰ったのか？当時、陸斗と結婚するために、雪奈はすでに実家と縁を切っていたはずだ。「航空券を買ってくれ。俺が直接香辺へ雪奈を迎えに行く」荷物をまとめようとした時、見知らぬ番号から電話がかかってきた。香辺市からの表示に、陸斗は興奮して電話に出た。「雪奈か？雪奈、聞いてくれ......」しかし、向こうは訛りの男だった。「藤堂社長でっか？ワイ、写真と動画をいくつか持ってるんやけど、藤堂社長やったら、きっと興味あると思いますわ」相手はショートメッセージで彼に数枚の写真を送ってきた。彼は訝しげにそれを開き、拡大した。写真の内容をはっきりと見た時、陸斗はめまいがした。なんと、彼と暁音が地下駐車場でいちゃついている場面だった！「お前は誰だ？写真はどこから手に入れた？何を企んでいる？」相手はゆっくりと口を開いた。「藤堂社長は金持ちやから、ワイはもちろん金が欲しいんですわ。ぎょうさん、ぎょうさん金が」陸斗は顔色を変え、「いくらだ？」と尋ねた。心の準備はしていたが、陸斗はそれでも相手の法外な要求に驚いた。「20億円？強盗でもする気か？」陸斗の会社の時価総額は数百億だが、キャッシュフローは限られていた。すぐにはそんな大金を用意できない。しかし、向こうの男には全く交渉の余地がなかった。「藤堂社長、一日時間やるから、よう考えてくださいや。金が欲しいんか、それとも体裁が欲しいんか？もし明日のこの時間までに金が振り込

レイは窓際に立ち、見下ろすと、香辺市の街全体が一望できた。彼はタバコに火をつけ、深く吸い込んだ後、きれいな煙の輪を吐き出した。「あいつがあの20億円も用意できるとはな。雪奈への気持ちは深いようやな」彼は手を振って秘書を呼び寄せた。「ほな、行って......」秘書は恭しく頷き、後ずさりしながら去っていった。雪奈はショールを羽織り、ドア枠にもたれかかり、レイの口元のタバコが暗闇の中で明滅するのを見ていた。明るいガラスには、彼の顔の冷徹さと無関心さが映し出されていた。仕事中のレイは、普段とは全く違い、独特の大人の魅力があった。秘書はにこやかな笑みを浮かべて言った。「白河様、社長をお探しですか？」レイが振り返って彼女を見ると、ごく自然にタバコの火を消した。彼はリラックスした楽しげな表情に変わり、ゆっくりと彼女の方へ歩いてきた。「なんで来たんや？なんで運転手を呼ばへんかったん？俺に会いたかったんか？ん？」最後の「ん？」という声はレイのいつもの気だるげな口調で、半開きになった口から漏れる鼻歌のような声だった。雪奈には、それがむき出しの誘惑に聞こえた。雪奈は顔を赤らめてそっぽを向いた。「ただ通りかかっただけよ。あなたの会社、まだ来たことなかったから」ここ数日、雪奈は愛唯の幼稚園選びに忙しく、目が回るほどだった。最終的に、彼女は香辺で最も権威のあるインターナショナルバイリンガル幼稚園を選び、今日、入学手続きを終えたばかりだった。香辺の上流社会の人々は、ほとんど全員が子供をこの幼稚園に通わせており、政治家や実業家、芸能人の子供も少なくなかった。入学には試験があり、彼女は愛唯がずっと福祉施設にいたので、試験に合格するのは難しいだろうと思っていた。彼女はわざわざ愛唯を慰めた。「愛唯、ゲームだと思って、怖がらないで、緊張しないで、いい？」しかし、愛唯は非常に自信満々で、胸を叩いて言った。「ママ、安心して。愛唯は絶対に100点を取るから！」結果は雪奈の予想を裏切り、愛唯はなんと入学試験にすんなり合格し、英語でさえ98点を取った。雪奈は興奮して愛唯を抱きしめた。「私の愛唯は本当にすごいわ！ママが誇るよ！」娘を寝かしつけた後、雪奈はレイが二日間も帰っていないことに気づいた。彼女はレンコンとスペアリブの