撮影現場。さっきまで悠真と初芽が立っていた場所には、今や初芽の姿はなく、怒りで理性を失った玲司が、悠真の襟元をつかんで地面に押さえつけようとしていた。悠真も黙ってやられるタイプじゃない。すぐに玲司の手を押さえ返した。「玲司、何するつもり?」「何するか?決まってるだろ、殴るんだよ。篠原、お前、誰の許可で彼女にキスしてんだ!」玲司はドラマでキスシーンがあることは知っていたけれど、今まではカメラの角度で誤魔化すだけだと思っていた。でもさっきの悠真の動きは、どう見てもガチでキスしようとしていた。そんなの、許せるわけがなかった。悠真はその言葉に皮肉な笑いを浮かべた。「それが君に何か関係ある?」悠真は玲司を冷たく見やった。「玲司、君には美琴のことに口を挟む資格はないだろ?」美琴の二文字をはっきり強調した。初芽の心も体も、もう玲司だけのものじゃない。彼女は今や美琴なのだ。玲司はその言葉に一瞬絶句し、ついに完全に逆上した。「ふざけんな!」玲司の強烈な拳が振り下ろされた。悠真は反射的にかわそうとしたが、駆け寄ってきた初芽の姿を見て、あえてその拳をまともに受けた。その直後、悠真は玲司の腕を押さえて反撃した。玲司もただ黙って殴られるような男じゃない。すぐに身をかわして、またもう一発。悠真は長い脚で玲司を払うように蹴り、玲司はバランスを崩して地面に倒れかけたが、すかさず悠真の服をつかんで一緒に転がる。ふたりはもみ合いになり、ついに玲司が悠真の上に馬乗りになって、さらに殴ろうとした。「やめて!」駆け寄ってきた初芽が叫んだ。玲司の拳が空中で止まる。初芽はすぐに玲司に駆け寄り、力いっぱい彼を押した。……が、びくともしない。慌てて駆け寄ってきたスタッフを振り返り、「早く止めて!」と叫ぶ。やっと我に返ったスタッフたちが二人を引き離し、人垣を作ってふたりの間に割って入った。「大丈夫?」「顔が真っ赤に腫れてるよ。すぐ病院に行こう」初芽は、引き離された玲司の方には目もくれず、ひたすら悠真の心配をする。「平気だよ、たいしたことない」悠真は初芽の心配そうな視線を見て、思わず口角を上げようとしたが、痛みが走って顔が歪む。それを見て、初芽はさらに申し訳なくなり、心配でいっぱいになる。
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