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All Chapters of 離婚から始まる恋: Chapter 31 - Chapter 33

33 Chapters

12-3

 食事の後、俺たちはソファでテレビを見ながらくつろいだ。蓮の膝を枕にして横になっていると、彼の手が俺の髪を撫でてくれる。その手つきは優しくて、愛情に満ちていた。「こんなに穏やかな時間を過ごすのは、いったいいつ以来でしょうか」 俺の呟きに、蓮の手が一瞬止まった。「美奈さんとのご結婚生活は……大変だったんですね」 蓮の気遣いのある言葉に、俺は胸が痛んだ。「彼女が悪い人だったわけではありません。ただ……愛し合っていなかっただけです」 今振り返ると、美奈との結婚は間違いだったのかもしれない。でも、あの経験があったからこそ、今の蓮との愛の素晴らしさを実感できる。 すべての出来事に意味があったのだと思いたい。「でも、今は違います。心から愛し合える人と出会えました」 俺は身体を起こして、蓮を見つめた。「蓮さん、ありがとう。俺の人生を変えてくれて」 蓮の瞳が潤んだ。「俺の方こそ、ありがとうございます。藤崎さんがいなかったら、俺は一生一人のままだったでしょう」 俺たちは深くキスを交わした。愛情と感謝の気持ちを込めて、心を込めて。 夜が更けても、俺たちは離れたくなかった。ベッドで抱き合いながら、互いの体温を感じ、心臓の鼓動を聞いていた。言葉はいらなかった。ただ、お互いがそこにいることの幸せを噛み締めていた。「明日からは、また仕事ですね」 蓮の言葉に、俺は少し寂しくなった。でも同時に、希望も湧いてきた。「でも、帰る場所ができました」「帰る場所?」「蓮さんのところです。一人の部屋に帰るのではなく、愛する人の元に帰るんです」 蓮の腕が俺をぎゅっと抱きしめた。「俺も同じです。藤崎さんがいてくれるから、毎日が楽しみになります」 蓮の言葉が俺の心に深くしみた。これからの人生が、こんなにも希望に満ちて見える。 愛する人がいる人生。支え合い、愛し合いながら歩んでいく人生。「蓮さん」「はい」
last updateLast Updated : 2025-09-29
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12-4

 夕方、仕事を終えて家に帰ると、蓮がすでに来て待っていてくれた。玄関の前に立つ彼の姿を見ただけで、俺の心は喜びで満たされた。「お帰りなさい」 蓮の『お帰りなさい』という言葉が、俺の心に深くしみた。「ただいま」 そう返したとき、本当に家に帰ってきたのだと実感した。もう、一人きりの部屋ではなく、愛する人が待つ場所に帰ってきたのだ。 俺たちは玄関でキスを交わした。一日の疲れが、一瞬で吹き飛んでしまった。 愛する人の唇の感触。それだけで、俺の疲れはすっかり消えた。「今日はどうでしたか?」 蓮の気遣いの言葉に、俺は今日一日のことを話した。仕事の内容、佐伯との会話、心の中で蓮のことを考えていたこと。何ということのない日常の報告だが、蓮は真剣に聞いてくれた。「俺の話も聞いてください」 今度は蓮が今日の出来事を話してくれた。警備の仕事の話、同僚との会話、俺からのメッセージがどんなに嬉しかったか。 俺たちは、こうやってお互いの一日を分かち合うのだ。これこそが、本当のパートナーなのだと実感した。 夕食の支度をしながら、俺たちは自然に会話を続けた。キッチンで料理の準備をする蓮の後ろ姿を見ていると、この情景がこれから続いていくのかと思うと、胸が熱くなった。 食事の後は、一緒にテレビを見ながらくつろいだ。蓮の肩に寄りかかって、彼の体温を感じていると、今日という日が完璧だったと思えた。「こんな日常が続けばいいですね」 俺の呟きに、蓮の手が俺の髪を優しく撫でた。「きっと続きますよ。俺たちが望む限り」「望みます。ずっと」 俺は蓮を見上げた。彼の瞳には、同じ想いが宿っていた。「俺もです。ずっと、藤崎さんと一緒にいたい」 俺たちは再び唇を重ねた。今日という一日を締めくくる、愛情のキス。 ベッドで抱き合いながら、俺は今日一日を振り返った。朝起きてから夜眠るまで、すべての瞬間が愛情に満ちていた。 これが、愛し合うカップルの日常なのだ。これが、本当の幸せな
last updateLast Updated : 2025-09-29
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番外編 あの日の笑顔を探して

第一節:公園の出会い 夜勤明けの空は、いつも俺の心と同じ色をしている。 灰色に染まった雲が重く垂れ込めて、今にも雨が降り出しそうな夕方だった。警備会社の制服を着たまま、俺は川沿いの公園のベンチに腰を下ろした。体の芯まで染み込んだ疲労が、ずしりと肩にのしかかっていた。 橘蓮、28歳。警備員として働き始めて三年目。 毎日、同じ現場を巡回し、同じ内容の報告書を書き、上司からも似たような小言を聞く日々が続いた。気がつくと、心にぽっかりと穴が開いていた。「今日も一日お疲れ様でした」 同僚たちは帰り際にそう声をかけてくれるけれど、俺にはその温かさがどこか遠くに感じられる。家に帰れば、一人きりの部屋でコンビニ弁当を黙々と食べるだけ。テレビをつけても、ニュースの音が虚しく響くだけだった。「何のために生きてるんだろうな」 独り言が口から漏れた。公園には俺以外誰もいない——いや、正確にはいないと思っていた。「ははは、それは確かに面白いね」 突然聞こえた笑い声に、俺は顔を上げた。 声の方向を見ると、五十メートルほど離れたベンチに一人の男性が座っていた。手に本を持ち、携帯電話を耳に当てていた。きっと誰かと通話しているのだろう。 でも、俺の視線を釘付けにしたのは、その人の表情だった。 心の底から楽しそうに笑っているその顔が、夕暮れの薄明かりの中でとても優しく見えた。年は俺より少し上に見える。スーツ姿で、きっと会社員なのだろう。少し乱れた髪と緩んだネクタイが、一日働いた疲れを感じさせる。しかし、その笑顔は疲れをまったく感じさせず、むしろ輝いているようだった。「そうそう、その通り! 君の発想はいつも斬新だよ」 また笑い声が聞こえた。相手に向ける言葉なのに、なぜか俺の胸に響いてくる。その人の笑い方には作り物っぽさがまったくなく、子供のような純粋さと、大人の包容力の両方を感じさせた。 俺は気づけばその人をじっと見つめていた。 この人は誰と話しているんだろう。恋人だろうか、それとも友人だろうか。どんな話をすれば、こんなに楽しそうに笑えるんだろう。 胸の奥にじんわりと温かさが広がった。それは今までに味わったことのない感覚だった。他人の笑顔を見ているだけなのに、なぜか自分の心まで軽くなっていく。まるで凍りついていた感情が、少しずつ溶けていくような——そんな不思議な気持
last updateLast Updated : 2025-09-30
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