All Chapters of 別れの時になってこそ、愛の深さを知る: Chapter 11

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第11話

三年後、杏奈は手元に残っていた最後の文物の修復を終え、授賞式に招かれて帰国した。 彼女はその賞金を手に入れ、再び大塚家の古い屋敷を買い戻すつもりでいた。 この三年間、仕事と並行してビジネス運営を学び、大塚グループを再建しようと考えていたのだ。 たとえ長い時間がかかっても、一歩ずつ進んでいくつもりだった。 それがこれから先の人生の指針になるはずだった。――しかし、授賞式が終わった後、彼女の前に現れたのは、この世で一番会いたくなかった人物だった。 翔真は車椅子に座っていた。全身が見るも無惨で、その虚ろな瞳が杏奈を捉えた時、一瞬だけ希望と興奮の光が浮かんだ。 スーツも着ておらず、髪も髭も伸び放題で乱れている。あれほど自分の外見に気を遣っていた久保家の若様は、見る影もなく落ちぶれていた。 顔色は血の気がなく、体調もひどく悪そうだった。杏奈が背を向けようとした途端、彼は半狂乱になって車椅子を動かし、哀れな声で必死にすがりついてきた。 「杏奈、やっと戻ってきてくれたのか! 俺が間違っていた……頼む、子どものためだと思って、もう一度だけ埋め合わせの機会をくれないか?」 颯太もまた痩せ細り、小さな身体が哀れを誘った。彼は父親のそばに立ちながら、おそるおそる杏奈を見上げていた。 杏奈が視線を向けると、彼はわっと泣き出し、飛びつくように彼女の足に抱きついた。泣き声は場を震わせるほど大きかった。 「ママ、ごめんなさい。もうちゃんと宿題もするし、言うことも聞くから。二度とママに反抗したりしない。 ママ、僕もう大きくなったし、いい子になるから……どうかパパと僕を捨てないで」 かつて小さな暴れん坊だった彼は、すっかりおとなしい目をして、言葉一つにも気を使っていた。 私を見上げる彼の瞳は、不安と心配でいっぱいだった。彼は私を固く抱きしめ、まるで私が彼を突き放し、彼らを捨てるのを恐れているかのようだった。「ママ、僕とパパは、ずっとずっとママを探していたんだ。ママ、パパはママを探している途中で事故に遭って、長い間入院したんだ。先生が、僕にはもうパパを失うところだったって。ママお願い……お願いだから、僕らを捨てないで」 父と子、二人揃って哀れな姿を晒していた。だが、三年という年月は、杏奈の中の未練や情すらもすっかり風化させてし
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