記念日に、私は長谷川陸夫(はせがわ りくお)の大好物ばかりを食卓に並べた。なのに、彼はまた約束を破った。沈黙の後、私は慣れた手つきで、彼の高嶺の花、高坂沙耶(こうざか さや)のインスタを開いた。【とある人を大絶賛!私が「電球が切れちゃった」って一言言っただけで、彼女そっちのけで飛んできてくれたの!】【彼女より友達優先とか、マジ神対応じゃん?これからもそのままでいてね!】投稿された写真には、椅子の上に立って、天井の電球を取り替える陸夫の姿が写っていた。沙耶は両手で彼のを脚を支え、その顔は、彼の太ももの内側に、さりげなく顔を擦り寄せていた。陸夫はそれを避けるでもなく、口元には淡い笑みさえ浮かべていた。あまりに目に焼き付く光景だったけど、私はもう、以前のように泣き叫んだりしなかった。ただ静かに「いいね」を押し、彼に別れのメッセージを送った。けれど陸夫は、それを全く信じていないようだった。「どうせ拗ねてるだけだろ。数日ほっとけば、俺がちょっと指を鳴らせば、すぐ機嫌直して尻尾振って戻ってくるさ」でも、彼は知らなかった。私が今まで簡単に機嫌を直したのは、ただ彼を愛していたから。これからはもう、二度と彼の思い通りにはならない。......別れのメッセージを送ったが、それはまるで糠に釘。彼からの音沙汰は一切なかった。その代わり、沙耶から一本の動画が送られてきた。賑やかなカラオケボックスで、陸夫の友人たちが囃し立てている。「君を7年も追いかけてきた結菜が、まさか別れ話なんて。本気じゃねーだろうな?」陸夫はマンゴーケーキを切り分けながら、気だるげに答えた。「ただ拗ねてるだけさ。俺に構ってほしいだけだろ」「本当は電球を替えたらすぐ帰るつもりだったんだ。でも、あんな態度取られたら、こっちも甘やかす気になれない。しばらく放っておくさ」そう言うと、彼はケーキを沙耶の口元へ運んだ。「『Pâtisserie C』の新作。好きか?」友人たちはニヤニヤしながら、さらに煽った。「どうせあの結菜は身代わりなんだし、いっそ別れちまえよ」「本命が帰ってきたんだ。君ら、付き合っちゃえばいいじゃん?」「そうだよ、沙耶ちゃん。陸夫はさ、この何年もずっと君のことだけを想ってたんだぜ」陸夫は何も言わず、ただ熱い視
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