湊浜市。淳司はヘリコプターにあった「燕都」の文字を見ると、周りの制止も振り切り、ひたすら北上することを決意した。八十歳に近い零崎大旦那までが出てきて、彼に怒っていた。「淳司!燕都へ行こうなどとは、よくも言えたものだな!」「お祖父様、静を探しに行くんです。彼女は僕の妻です。どうして一人で放っておけますか?」零崎大旦那の杖が地面を強く叩いた。「燕都がどんな場所か分かってるのか?湊浜市を出たら、このわしに天にも届くほどの力があっても、お前を守り切れるものではないぞ!」「僕はもう守ってもらう必要はありません。お祖父様が賛成しようとしまいと、必ず静を探しに行きます」零崎大旦那は重い息を何度か漏らし、手を振って執事に数点の資料を持って来させた。「淳司よ、まずはこれらのものを見るといい。お前のためになるかもしれん」淳司はそれを受け取り、ファイル袋に「監視カメラ映像」と書かれているのを見て理解した。彼は息をついた。「お祖父様、この監視映像は何度も何度も見直しました。役に立ったのはあのヘリコプターのものだけです」「もう一度よく見よ。これはうちの病院の監視映像だ」淳司は眉をひそめ、袋を開け、中のCDをパソコンに入れた。監視カメラの映像が瞬時に表示された。それは病室の中のビデオだった。ベッドでひどく弱々しく横たわっていた夕美が、淳司が去るとすぐに、何事もなかったかのように座り直す様子が映っている。淳司の表情は曇った。もしかすると、夕美のこれまでの様々な病苦は、すべて演技だったのだろうか?彼はさらに再生し続けたが、顔の表情はますます強張っていった。夕美は知らなかった。医療トラブルを防ぐために、零崎病院の全ての病室には高画質のカメラが設置されており、人の声もはっきりと聞き取れることを。彼女と静の会話は、そうして淳司の耳にはっきりと伝わってきた。「あの誘拐事件は、あなたが自分で仕組んだものなのか?」「そうよ。それにあなたの結婚式のちょっとしたハプニングも私の仕業だわ」夕美の口調は得意げで、明らかにあの時、緩んで落下したシャンデリアのことを指していた。淳司はようやく思い出した。あの時、彼と静の結婚式はすでに専門のウェディングチームに委託していたのに、夕美が横槍を入れて、経験があるから手伝える。そして一人で
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