結婚式を挙げる前日の夜、私の婚約者の幼なじみは傭兵をしていて、五年間連絡を断っていたのだが、任務中に負傷したうえ毒性のある媚薬まで盛られてしまった。薬を盛られた彼女は部隊の仲間に私の婚約者の前へ連れて行かれた。彼女は全身血だらけで、まさに九死に一生といった様子だった。一向に冷静沈着で理性をなくすことのなかった篠原迅(しのはら じん)は目を真っ赤にさせて、私の制止も振り切り幼なじみと一夜を共にした。そして私のほうはというと、一晩部屋の外で一睡もできなかった。……一晩中続いていた喘ぎ声がようやく止み、迅は破れてボロボロになったバスローブを身に着けて寝室から出てきた。彼のその足取りはおぼつかなかったが、かなり元気でいきいきとした様子だった。この時の彼は何かを思い返して味わうかのような瞳をしている。露わになった肌には青紫に変色してしまったキスの痕がはっきりと目立っていた。彼は私の存在も無視して横を通り過ぎていき、テーブルの横に立ち水をコップ一杯ついで、鬱陶しそうな口調でこう言った。「一華、お前な、騒ぐにも限度ってもんがあるぞ。俺は今気分が悪いんだ。お前の顔色をいちいち伺っている暇などない。ただのセックスだろう。茉莉花すら何も気にしていないというのに、お前は古臭い考え方に囚われやがって!」「古臭い考え方ですって?」私はあまりの怒りに逆におかしくなってきてしまった。「大人しく男に抱かれる女のほうが、そりゃあよっぽど開放的な考え方を持っているでしょうね!」そう言うと迅は勢いよく持っていたコップを床に叩きつけた。「黙れ!茉莉花は今状態が悪いんだ、彼女の前でそんなデタラメを言うんじゃないぞ。そんなことしてみろ、この結婚は破棄させてもらう!」そう言い終わると、すでに待機していた医者たちが寝室に入って救命措置を開始した。迅は急いで同じく中へ入って行き、一目も私に向けることなどなかった。宇野茉莉花(うの まりか)が私が寝る予定だった新婚用のベッドの上に横たわっていて、迅の手を握り力なく話し始めた。「迅、私のせいね。だけど、死ぬ前にただあなたに一目でもいいから会いたくて……」その部屋には濃厚なエロスが漂っている。ゴミ箱の中からは明らかに昨晩何戦もヤッたというその戦績が溢れ出してきていた。「死ぬ前にあなたと一つ
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