LOGIN結婚式を挙げる前日の夜、私の婚約者の幼なじみは傭兵をしていて、五年間連絡を断っていたのだが、任務中に負傷したうえ毒性のある媚薬まで盛られてしまった。 薬を盛られた彼女は部隊の仲間に私の婚約者の前へ連れて行かれた。彼女は全身血だらけで、まさに九死に一生といった様子だった。 一向に冷静沈着で理性をなくすことのなかった篠原迅(しのはら じん)は目を真っ赤にさせて、私の制止も振り切り幼なじみと一夜を共にした。 そして私のほうはというと、一晩部屋の外で一睡もできなかった。 その翌日、私のヒステリックな詰問に対して彼は幼なじみを庇い、腐った態度でこう吐き捨てた。 「俺は茉莉花(まりか)が死んでいくのを黙って見ているわけにいかなかったんだ。ただ俺の『初めて』を彼女にあげただけだろう?結婚する前にちょっと一晩羽目外したからって何だって言うんだ?」 その瞬間、私の彼に対する愛は完全に粉々になって消えていったのだった。
View More「彼女の貯金は医療費でかなり前に使い切ってしまった。俺は一日に三つの仕事を掛け持ちして、やっと彼女を養うことができるんだ。だけど、彼女が下半身麻痺になってしまってから、俺の粗捜しをするだけでなく、手まで出してきたんだぞ!一華、俺を助けてくれ!本当に俺が悪かった。今後は絶対に善意で他の女に優しくなんかしないから!」善意で?どの口がそんなセリフを吐くことができるのだ。私は彼を上から下までじろじろ見つめ、皮肉たっぷりにこう言ってやった。「あんたのあれはね、善意でやったことなんかじゃないのよ。あんたの大切な女に尽くしたくてやりたくてやったことよ。私にはあんたのそんなくだない話に付き合っている暇なんてないの。物分かりよくさっさと私の視界から消えてちょうだい。じゃないと本気で容赦しないわよ!」それでも迅は頑なにここから一歩も引かないと言わんばかりに私を見つめた。「いいや、一華、君は俺のことを愛しているはずだ!じゃないと、あの時自分からすすんで宇野茉莉花に俺を譲ったりしなかったはずだ。君は俺が幸せになるのを望んでいたからだろう。だけど、俺の幸せは君の隣でしか得られないんだ!」私はこれらの言葉に吐きそうなほど気持ち悪くなった。それでもう直接的にはっきりと言ってやった。「あんたね、考えすぎなのよ!あの時あんた達が結婚してこの日が来るのを心待ちにしていたの!それがあんたを私が愛しているですって、本当に笑っちゃうわね。まさか本気で自分が誰からもチヤホヤされる存在だとでも思ってんの?宇野から離れたいですって?いいわよ!それなら今すぐ警察に連絡してあんたが事故を起こして人殺しを計画したって言ってやるから」私が本当に携帯を取り出して電話をかけようとしたのを見て、迅は瞬時に慌て始めた。「一華、落ち着け。俺は篠原迅で、君の最愛の彼氏だぞ!それがどうして俺にこんなふうにできるんだよ!あの時だって、俺はあまりに急いでいたから車の事故を起こしてしまったんだよ。だけど、今は君も大丈夫だろう?いつまでもこんなに一つ一つ気にしている必要なんてないじゃないか?」「迅、この死にぞこないが、一体私たちにどれだけ多くのことを隠しているんだ!」この時彼の母親が彼の腕をつねって大声で叫んだ。父親のほうはさっさと自分と迅とは無関係だと主張した。「林
「どんな人って?恋愛に没頭する人だとしか思っていませんよ。昔、学校でかなりの影響力を持っていたあなたが、どうしてこのように変わって……」悠哉は不機嫌そうに白目を向き、最後の小さな声で囁かれた言葉は私ははっきり聞き取れなかった。私の怪訝そうな表情を見て、悠哉は耳まで赤くして私の体を押し退け、サッと上へとあがっていった。「もう遅いから、早めに寝る準備をして休みましょう」新婚の家も臨時にさっと決めた。結婚したというお祝いの雰囲気はないものの、基本的な生活用品は揃っていた。私と悠哉は暗黙の了解で別々の部屋で寝ることにした。その夜はすっきりと寝られた。結婚した後、私は家で静養しながら、仕事をしていた。そして、悠哉は会社に出勤し朝九時から夕方五時まで商談を続け、市場の開拓に勤しんでいた。私たち両家の最初の提携プロジェクトが正式に開始された後、お互いにやっと一息つくことができたのだった。私たちがどこにハネムーンに行こうか話し合っていた時、篠原迅の両親がまた訪ねてきたのだった。今回は私は彼らを家に入れることはなく、玄関先に立ったままにした。以前はブランド物に身を包みかなり煌びやかだった彼らが、この時は落ちぶれた様子でいて、私は笑えてきた。昔篠原家がまだ金持ちになる前、迅の両親はいくらお金がなくとも姿勢を正してまっすぐと立っていた。私に対しても媚びを売るというよりは尊敬の態度を見せていたのだ。ここ数年間良い暮らしをすることに慣れきってしまっていて、林原家の後ろ盾のサポートがなくなってから、元に戻ってしまった後、彼らは今の自分たちがとてつもなく恥さらし者だと感じているのだった。本当に不思議だ。私が中から出てきたのを見て、迅の父親が恭しい態度で私に言った。「林原社長、私のところにはいくつか良い条件のプロジェクトがあります。あなたが三億投資してくだされば、その数倍にも跳ね上がって返ってくるはずです。いかが……」彼らのその瞳の貪欲さを見つけ、私は容赦なくその戯言を突き放した。「篠原家は、もうすぐ破産しそうな状況だというのに、どこからそんなプロジェクトなんて作って来られるわけ?」その瞬間、迅の父親の表情が硬くなり額には冷や汗をかき始めた。そして彼はしどろもどろに言った。「確かに……確かに今会社は資金繰りが厳しくはあ
「お前は養子のくせに、うちの相続権を欲しがるとはどういう了見なんだ?もうすぐ生まれてくる予定の子はもう息子だって確定しているんだ。将来はその子がうちの正当な後継者なんだよ。さっさと林原社長に謝罪をしなさい。お前の弟まで巻き込むつもりなのか!」迅は自分の両親を睨みつけ、暫く経ってからようやく覚悟を決めて、私の目の前までやって来た。「一華、俺が悪かったよ。今回だけは許してもらえないだろうか!」このなんとも都合の良い言葉が非常に耳障りだった。彼はわざとシャツの二つのボタンを外して、甘えるような眼差しで私をじろじろと見つめていた。「本当に気持ち悪いわ!」悠哉の怒りが込み上げてくるまえに、私の放った相手を凍り付かせる言葉が迅をその場に硬直させてしまった。ここにいる全ての人は、まさかこの私が昔とても愛していた恋人に対してここまで嫌悪感を露わにするとは思ってもいなかっただろう。「あんたと宇野がいちゃついてた証拠はしっかり残っているのよ。私には夫がいるの、別に浮気相手なんてお呼びじゃないわ」それを聞いて慌てた様子の迅を無視し、私は一言一言はっきりと言ってやった。「どのみち、汚れたあんたなんか私は大っ嫌いよ!」迅は後ろに数歩よろめき、唇をわなわなと震わせて一言も発せられないようだった。私は得意になり眉を吊り上げて、篠原家の父親に皮肉を交えてこう言った。「こちらが篠原家に手を出さなければ、迅のことは私が煮るなり焼くなり好きにしていいって言ってなかったかしら?」それを聞いて迅の父親は喜び急いで頷いた。母親のほうはさらに乱暴にも迅を押して焦った様子で言った。「このバカ息子は本当に腐った性根をしているもので、いい暮らしに慣れ過ぎてしまい、自ら苦境に立つような真似をするんです。林原社長、あなたは遠慮などせず、好きにしてしまってください!」私は笑い、その瞳に恨みを浮かべている迅に向かって言った。「そういうことだったら、彼とその心から愛している宇野茉莉花とかいう女と結婚させてあげましょう」私のその一言が、まるで巨大な石が上から湖に落ちて来たかのように、大きな衝撃を他の人間に与え、彼らはどういうことなのか理解できない様子だった。迅は信じられないといった表情で、興奮した目で私を見つめた。「本当に?お前、俺の望みを受け入
迅が悠哉に触れそうになった瞬間、私がサッと前に一歩進み出て、彼を見下すようにこう言った。「さっさとこの人を連れ出してちょうだい」迅は狼狽した様子で警備員につまみ出された。その時彼は恨めしそうに私を睨みつけて怒鳴りつけてきた。「一華、昨夜はただセックスすることで茉莉花の命を救ってあげただけだろう。なんでこんなふうな形で俺に復讐みたいなことをするんだよ?言っておくが、俺がここから出ていった後、いくら俺に跪いて許しを懇願してきたとしても、俺は絶対に許さないからな!」その場は瞬時にざわついた。悠哉も信じられないといった目で迅を見て言った。「本気であいつの頭大丈夫なんでしょうかね?今この場はライブ配信されているっていうのに!」私は冷ややかな目でだんだんと遠ざかっていく迅の姿を見つめ、適当に答えた。「さあ?」互いの目線を合わせ、私たち二人は深く息を吸い込みまた笑顔を作った。神父がその時立ち上がってその場を収め、結婚式は最終的に和やかな雰囲気で執り行われた。両家の両親に説明して安心させた後、私と悠哉は新婚用の部屋に戻ってほっと一息ついた。しかし、その時招かれざる客がやって来た。篠原迅の両親が迅を押さえ込み、急いでやって来て、焦った様子で口を開いた。「林原社長、迅は私たちが甘やかせたせいで魔がさしてあんなことをしてしまっただけです。この子が心の中で愛しているのはあなたなのです!それに……それに、この子もただ人を助けるためにやっただけですし、許してもらえませんか?」私は悠哉にもたれ、彼らを見下すように見つめた。「私はもう結婚しました。篠原さんはつまり浮気相手にでもなりたいということですか?」迅の母親は急いで口を開いた。完全にご機嫌取りをしたいらしい。「浮気相手だとしても、そんなに悪いものではありませんよ。ただあなた達二人が相思相愛であればいいだけの話じゃないですか!迅、あなたも何か言いなさいよ!」しかし、迅はすました顔でその場に突っ立ったまま、一言も発しなかった。そこに悠哉が笑い出し、皮肉交じりにこう言った。「篠原さんも、よくもまあ、わざわざこんなに着飾って演技をしてくださいますね。実際、あなたは他人の妻に執着する必要はないと思いますよ。女に飢えているというなら、さっさと死んでしまえばいいのでは!
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