再婚した旦那は、ガキみたいな人だ。息子が二歳になるまで、旦那は毎日息子の茶碗を二つとも抱えて手放さなかった。息子が四歳になると、今度は家の小さな庭で種をまき、水をやることに夢中になった。そして、息子が五歳になったある日。私・沢村柚葉(さわむら ゆずは)は商談会で、六年間会っていなかった元カレ――あの聖人君子ぶった男と再会した。彼は昔と変わらず、数珠を指で繰りながら、私を蔑むように見ている。「柚葉、別れたら二度と会わないんじゃなかったのか?どうしてそんなに未練がましいんだ。六年も経つのに、まだ俺を追ってこんな所まで来るなんて」その瞬間、会場にいた誰もが面白い見世物でも見るかのように私に視線を向け、私が厚かましく復縁を迫るのではないかと小声で噂し始めた。それもそのはず、昔の私はありとあらゆる手を使って、あの浮世離れした岩崎洸希(いわさき こうき)を振り向かせたのだから。けれど、彼らは知らない。洸希が私とセックスした後、いつも仏間で、義理の妹の写真を見ながらひっそりと胸を痛めていることなど。それどころか、彼はその義妹のために、私を岩崎家から追い出した。挙句の果てには、流産したばかりで入院していた私に、義妹のために1000ccもの血を献血するよう強制したのだ。あの日以来、私の心は完全に死に、蛇村に戻って聖女としての務めに専念し、パトロンの旦那と結婚した。それなのに、六年も経った今、まさか彼と再会するなんて。黙り込む私を見て、洸希はポケットから時代遅れのダイヤモンドリングを取り出すと、私の足元に投げ捨てた。「拾って嵌めろ。そうすれば、結婚してやる」私は呆然と床の上のダイヤモンドリングを見つめた。六年前、私が一番好きだったデザイン。そして、私が一ヶ月も洸希にねだって、結局買ってもらえなかった結婚指輪。私が指輪を見つめたまま黙っていると、洸希の顔が険しくなった。彼の隣にいた友人は、もどかしそうな顔で洸希の肩を叩いた。「せっかく柚葉に会えたんだ。どうしてまだ強情を張るんだよ?彼女のために、お前がこの六年、死ぬほど苦しんできたのを忘れたのか?」彼は焦ったように私に向き直った。「柚葉、君があの時、黙って姿を消してから、洸希はずっと君を探してたんだ。丸六年間も。この六年間、彼は君のために還俗し、岩
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