守は寝室へ駆け込み、クローゼットの隠し仕切りから小さなジュエリーボックスを取り出した。赤いジュエリーボックスは古い型で、角の部分はすでに白く擦れていた。守は恐る恐る箱を開けた。中には少し歪んだシルバーの指輪が一つ横たわっている。指輪の縁には「MMR&MSK」と刻まれていた。二人がまだ若く、地下室に暮らしていた頃、守はよくジュエリーストアの前を通った。ショーウィンドウには美しいジュエリーが並び、その中にはカップルリングもあった。美咲がそれを見るたび、目を輝かせるのを守は知っていた。彼女がずっとペアリングを欲しがっていたことも分かっていたが、買う余裕はなかった。彼は美咲に隠れて長い間お金を貯め、自分でシルバーのペアリングを作った。美咲に贈るとき、彼は片膝をつき、真剣な眼差しで言った。「美咲、今の俺にはこのシンプルな指輪しか買えない。けれど、将来お金を手にしたら、必ず君に高価なカルティエを贈る」後に彼はその約束を果たし、結婚指輪はカルティエになった。だが美咲はこの素朴な指輪を捨てなかった。ペンダントにして首にかけ、ずっと身につけていたのだ。守は指輪を手に取り、送られてきた画像と細かく見比べ、違う点を探そうとした。だが、それは明らかに無駄な行為だった。違いなど見つかるはずもない。それでも守は頑なに信じていた。美咲は死んでいない。ただ彼のもとを去っただけだ。あの飛行機に乗っていなかったのだから!――美咲はきっと生きている。必ず見つけ出す。その夜、守は別荘を離れず、どうしても一人でここに留まると言い張った。そこへ遥が挑発的なメッセージを何度も送ったが返事はなく、ついに夜更けに直接やって来た。彼女を見た途端、守は眉をひそめた。「誰が来ていいと言った?」遥はベッドに腰を下ろし、守に体を寄せた。コートを脱ぎ捨てると、下にはセクシーなランジェリー姿。彼女の指先が彼の胸元をなぞり、円を描くように撫でた。「北川社長、美咲さんが事故に遭ったと聞いて、私も悲しくて……でも人生は前に進まなきゃ。今のお気持ち、少しでも慰めて差し上げたくて来たんです。今夜は……北川社長が望むこと、何でもいいですよ」言い終わるや否や、遥の体は守に蹴り飛ばされ、ベッドから落ちた。「ここは美咲のベッドだ。勝手に上がるな!美咲は他人
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