余音がどこへ行ったのかはわからないが、これは明らかにチャンスだ。もしかすると、余音自身がわざとこのチャンスを与えたのかもしれない。あの日の言葉を、余音は確かに聞いたに違いない。「母さん!」言子は顔を赤らめ、恥ずかしそうに言う。「そんなの、私が姉さんの代わりになんてできるわけないじゃない。今日は明らかに姉さんと行真の結婚式よ。私はただ静かに祝福すればいいの……死ぬ前に行真が幸せそうな姿を見られれば、それだけで十分なの」典代はさらに胸を痛めた。「行真、この結婚式はもともと法的な効力はないのよ。余音がちょうど見つからないのなら、言子の願いを叶えてあげるのも悪くないわ。言子が人生でウェディングドレスを着られる機会なんて、この先もうほとんどないんだから」言子は困ったふりを見せるが、行真はあっさりと同意した。「いいだろう!」――余音が意地を張るなら、彼は余音に、自分の行動がどれだけ愚かかを思い知らせてやる。彼が言子と結婚しようとしているのを目の当たりにすれば、余音がまだ我慢できるか?これは確かに、言子にとって予想外の喜びだった。今朝行真が去った後、言子はその犯人二人に連絡を取ろうとするが反応がなく、仕方なく先に山へ向かった。しかし、犯人が捕まるのを目撃してしまった。今日の結婚式、余音は無事に戻ると思っていたが、余音は全く姿を現さなかった。理由はわからないが、言子にとってそれは喜ばしいことだった。言子はすぐにブライズルームへ戻り、ウェディングドレスに着替え、ヘアメイクを整える。暁介は典代に小さな顔をつままれながら、「暁介、もうすぐおばちゃんがあなたのパパの花嫁になるのよ。嬉しい?」と聞かれた。暁介は頬をこすり、少し戸惑った。一方で、言子おばちゃんと遊んだり、おもちゃやお菓子を買ってもらいたい気持ちもある。だが、今日の花嫁はママではなかったの?彼女が見に来たら悲しむんじゃない?何しろ昨日、彼女は彼らに置き去りにされたのだ。しかし、余音が去った後、一度も顔を見せず、電話もかけてこなかったことに、暁介は少し腹が立った。自分から来ないことを選んだんだから、誰も責められない!自分から結婚式を要らないって選んだんだから、暁介も彼女は要らない!暁介は振り向き、走り去った。典代
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