穂高と千秋の苦悩の解放! (早めに行ったお蔭で、早く始めてくれたから良かった……) 就職試験を受けるのが俺だけだったこともあり、筆記試験と面接もスムーズに終わってしまった。 緊張していたのがムダになるくらい上手くいってしまった試験の結果を、昨日お出迎えしてくれた漁協のおばちゃん達に報告とお礼をするために足を運んだ。 康弘くんは学校だったからスーパーに顔を出し、お母さんである葵さんに伝えてもらうことにした。「それにしてもみんな揃って、ビックリした顔をしていたな。髪形をちょっとだけ変えて、スーツを着てるだけなのに」 何人かには赤面しながら見つめられてしまい、どう対処していいか分からなかった。穂高さんなら余裕な表情を浮かべて、その場をやり過ごすんだろうけど、モテたことのない俺には無理な話だった。(……そういや穂高さんは俺のこの姿を見て、唖然としていたっけ。立派なサラリーマンのでき上がり、なぁんて言っていたけど内心はどう思っていたのかな?)「ただいま!」 自分の身なりについては横に退けておいて、試験の結果をちゃんと伝えないといけない。昨日から応援してくれたんだから、尚更――。 引き戸を閉めて靴をきちんと揃えてから家の中に入ると、テーブルの前に座り込み、じっとしている穂高さんの姿があった。「あのぅ、穂高さん。ただいま戻りました……」 腰を少し屈めて顔を覗き込んだら一瞬だけ視線を絡めたのに、すっと外されてしまう。む……何だろ、この変な態度。「お帰り、千秋……。その顔は試験、上手くいったようだね」「はい! 穂高さんのお蔭で変なミスをすることなく、スムーズに筆記と面接も終わってしまったんです。早く終わったから昨日お出迎えしてくれたおばちゃんたちのトコに行って、挨拶をしてきたんですよ」「……その格好で挨拶回り?」 いきなり低い声で訊ねる。気だるげだった顔色が、途端に渋い表情に早変わりした。「はぁ、まぁ。試験が終わって直で行ったから、そうなりますけど……。何か問題でもありました?」 いたって普通に答えた俺に、じーっと睨みを利かせる穂高さん。そうされる意味が、さっぱり分からない。「その格好で島中をウロウロしたなら、女性の心をここぞとばかりに鷲掴みしただろうね」(……もしかして穂高さん、ヤキモチを妬いているの!?)「なっ、何を言い出すのかと思った
Last Updated : 2025-12-13 Read more