All Chapters of 残り火 After Stage ―未来への灯火―: Chapter 61 - Chapter 70

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Final Stage 第5章:深窓の令嬢

「そういうワケですので、暫くお休みをいただくことになります。大変、申し訳ございません。お気遣いありがとうございます」 電話の相手――船長にしっかりとお礼を告げる。『いいだ、いいだ! 普段から離れて暮らしてんだからよ。たまぁには、おとーと孝行せにゃならんって。だからっておめぇ、はっちゃきこいて頑張るんじゃねぇぞ。ぜってぇ失敗するからよ!』 ガハハという豪快な大笑いの後、勝手に電話が切られてしまった。 お蔭で暗く沈んでいた気持ちが、ちょっとだけ浮上する。明るく接してくれた船長の機転に、感謝しなければならないな。 自然と上がった口角の端をそのままにテーブルにスマホを置き、ベッドで横になっている千秋の顔色を窺ってみた。 毎晩2、3回くらいだろうか。悲鳴に近い声を夜中にあげながら飛び起きて、息を切らしている姿があった。そんな風に寝ている状態だから熟睡できていないのが、俺の目から見ても明らかだった。 今までのストレスや畑中君に襲われたことがフラッシュバックとなり、蘇っているのだろう。 いつまで続くか分からないそれに付き合うべく、船長に電話したワケなのだが――。「代われるものなら代わってやりたいのに。何もできない自分が不甲斐なさ過ぎて、言葉にならない」 しくしく痛む胸を抱えつつ、跪いて千秋の頭を撫でてあげた。 熟睡できていないのに無理して大学に行こうとする彼を、恋人の権限をここぞとばかりに振りかざて強引に何とか引き止め、顔色が悪いのを改善すべく昼間に横になってもらっている。 しっかり休んでいるのを確認すべく、俺の添い寝付きなのはオマケなんだと称しておこうか。『……あの、穂高さん。そんなにじっと見つめられると、寝るに寝られないんですけど』「すごいね、千秋。背中を向けているというのに、見つめているのが分かるなんて」『……それだけじゃなく。その……腰に何か当たっていて。……少し離れてほしいかなって』 壁を正面にして寝ている千秋がちらりと振り返り、恨めしそうな顔して俺を見る。 それはしょうがないんだ。だって千秋が傍にいるだけで、クララが勃ってしまうんだから――。「そんな顔をしないでくれ。俺だって千秋が全快するまで必死に我慢しているんだが、反射的な生理現象だと捉えてくれたら助かる。とにかく千秋も頑張って、しっかり寝なければならない!」 正直、適当過
last updateLast Updated : 2025-12-03
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Final Stage 第5章:深窓の令嬢2

*** 俺の献身的な付き添いのお蔭もあるだろう。と一応自負するが、千秋の持つ鋼並みの精神力の賜物と言えばいいのか。それとも自然治癒力の高さなのか、1週間くらい経った頃から、飛び起きることはなくなっていた。『穂高さんが傍にいてくれたから、立ち直ることができたんだよ。ゴメンね、ずっと引き止めてしまって』 済まなそうに謝ってくれたのだが、激しく首を横に振ってやる。むしろ俺が勝手に、傍にくっついていたかっただけなのにな。「いいんだよ。千秋が元気になって本当に良かった。これで安心して島に帰れる」 島に帰る――また離れ離れに、なってしまうんだね……。 無言で伝わってくる気持ちが、俺の胸を痛ませる。寂しげな笑みを浮かべた千秋を、迷うことなくその場に押し倒した。「わわっ! ちょっ、穂高さんってば、いきなりっ?」「年末は、こっちに帰ろうと考えてる。だから――」 床の上に横たわってる千秋の顔色が、あからさま過ぎるくらいに苦渋の表情に変わった。「千秋?」「ごめっ……。帰って来てくれるのは嬉しいんだけど、就活の件や島に移住することとか話をするために、実家に帰省しようと思ってて」「あー、確かにそうだね。夏休みも帰っていなかったワケだし、年末に帰省するのは当然だと思う。俺のことは気にせず行って来るといい。もし何か説明が必要なら俺も顔を出すが、どうする?」 千秋の着ている、シャツのボタンをちゃっかり外しながら問いかけてみたら、抵抗せずに力なく首を横に振る。「まずは自分の口で、きちんと説明するから大丈夫。でも、反対されるだろうから……。その時は既成事実を作って、外堀を埋めようと考えてるんだ」 その言葉に、ボタンを外す手が思わず止まってしまった。(――既成事実を作る……どうやって?) ……通常なら子どもを作ってしまえば、どんなに反対していても首を縦に振らざるおえない状況だ。俺と千秋の子どもなら、まず間違いなく可愛いに決まってる。 髪は俺似できっと栗色をしていて肌の色は白く、千秋のように目がくりっと大きくてバラ色のくちびるをしているだろう。名前は、秋穂(あきほ)や高秋(たかあき)、千穂(ちほ)なんていうのはどうだろうか。※ちなみにコレ全部を考えるのに、穂高氏は約5秒くらいかかっております(・∀・)「穂高さん、どうしたの?」 ハッ!!Σ(ll゚Д゚ノ)ノ←思わ
last updateLast Updated : 2025-12-04
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Final Stage 第5章:深窓の令嬢3

***「そっかー。いろいろあったけど、ふたりで頑張ったんだ。結果オーライで良かったじゃん」 こっちにいる間に頼んでいた物が手に入ったと、義兄さんからグッドタイミングで連絡があり、ホストクラブパラダイスに顔を出していた。 2階にある事務所で向かい合わせに座り、これまであったことをかい摘んで説明したら、安堵のため息をつきながら美味しそうに煙草を口にする。「あの色男の件については千秋の対応も悪かったけど、お前も相当大バカって罵っていいくらいに、最低な恋人を演じたものだね」 義兄さんは呆れた言葉を吐き出しながらローテーブルに頼んでいた物を、静かに置いた。「いくら、かかっただろうか?」「ほらよ、これが領収書」 小箱の横に置いてくれたので金額を確認し、財布からお金を取り出して、お釣りが出ないように手渡す。「義兄さんが最初に提示してくれた額より、随分と安くなったね。これじゃあ、相手のお店の売上がないんじゃないだろうか?」 俺としては大助かりなのだが、もしかして義兄さんが無理を言って、原価で仕事をさせた可能性があるなと考えた。「従業員、御用達の店なんだよ。会員割引やら大量購入割引があったから安くなっただけ。お前は気にする必要ないからね、ちゃんと支払いが終わったワケなんだし。毎度あり!」「ありがとう、義兄さん」「どういたしまして、お幸せに。と言いたいところだけど、これから先どうすんのさ?」 短くなった煙草の火を消し、窺うように俺の顔を見つめる。千秋と付き合ってからはいろいろとやらかしてばかりいるので、そういう目で見られるのはしょうがないだろうな。「夏休みに千秋が島に来たときに、就活をしたらしくてね。来年面接試験をすることが決まっているんだよ」 島の産業は漁業だけじゃなく、農業もそれなりに盛んだった。自分の足で島を見て回り、色んな島民と交流して就活した結果、農協の事務員の募集に辿りついたそうだ。「……悪いけど、すんなりと試験が受けられるかどうか、分かんないよ」 それまでは穏やかな表情を浮かべていた義兄さんが、苦虫を潰したような顔になった。「どうして、そんなことが言えるのだろうか?」「ちょっと、待ってて」 見るからにダルそうな感じで立ち上がり、グレーのキャビネットの前に向かうと、大きな音をたてて扉を開ける。「カ行の1番最後……。紺野こんの……
last updateLast Updated : 2025-12-05
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける

大学からの帰り道、つきたくないため息ばかりをついてダラダラ歩いていた。 数時間後バイトに行く俺に合わせて、穂高さんが島に帰ってしまうから。ただいまって家に帰っても返事が返ってこないんだな、なんて当たり前のことなのに。 もしかしたら穂高さんは俺が夏休みが終わって帰ったあとで、こんな風に寂しく思っていたのかもしれない。もっと気を遣って、マメに連絡をとってあげればよかった。「考えれば考えるほどに、俺って駄目な恋人だよね。酷いことばかりしてる」 未だに告げられない自分の家の事情が言えてない時点で、マイナスポイントだと思う。だけど、それをゼロにしなきゃならない。だって――。(俺は穂高さんと、これからを一緒に生きて行きたい。穂高さんじゃないと生きられないって分かったから) 正気を失った俺を救ってくれたのは、穂高さんだけだった。きっと他の人では、できないことだろうな。俺が愛した唯一無二の人だったから、意識が戻ったんだと思う。 だからこそずっと一緒にいるために、何か失う覚悟を決めないといけない。両方を手にするなんて器用なことは、俺はできないんだし。 両手を目の前にかざして、ニギニギしてみる。穂高さんの存在は大きいから、片手じゃ無理なんだ。この両手を使って、抱きしめないといけない。 ニギニギしていた両手を握りしめ、意味なく拳を作ってみた。自分の腕の中に入れるものの大きさに、慄いてる場合じゃない。この手で彼を抱きしめておかなければ、誰かに捕られちゃうかもしれない。「……覚悟を決めなきゃ。ただいまっ」 気合いを入れた勢いで玄関の扉を開け、中にいるであろう穂高さんに向かって元気に声をかけた。 多分これが穂高さんに向かって言う、最後のただいまの言葉だろう。次に言うのは、年末あたりになるのかな。たった数ヶ月の間、離れるだけなのに切なくなってしまうのは、どうしても慣れないね。「お帰り、千秋」 穂高さんの声が聞こえたときには、目の前が真っ暗になっていた。俺の躰を包み込んでくれる、大きな胸がそこにあった。鼻腔をくすぐる彼の香りを、思いきり吸い込んでみる。けして、忘れないように――。 そして背中に両腕を回して、ぎゅっと抱きしめ返した。あたたかいこの:体温(ぬくもり)を、絶対に忘れないようにするんだ。「千秋の躰、寒い外から帰ってきたとは思えない程、とても温かいね」
last updateLast Updated : 2025-12-06
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける2

*** 翌年の夏、就職試験を受けるべく俺はひとりフェリーに揺られながら、穂高さんが住んでいる島を目指していた。 デッキから見える遠くにある島の風景を、ぼんやりしながら眺める。今頃穂高さんは落ち着かない様子で、俺のことを待ち構えているんだろうな。 愛しい恋人のことを考えて口元が緩んでしまったのだけれど、その一方で不安要素がチラチラと脳裏を横切る。 視線を島から手すりを掴んでいる、手元に移した。 左手薬指のリング――これを付けたまま年末、実家に顔を出したんだ。 すべてを語るには問題のありすぎる恋愛に島の就職先のことなど、猛反対にしかならない現状に、一部分を告げるのがやっとだろうなと思いながら、両親と顔を突き合わせた。 家族が過ごすリビングじゃなく、客間に通された俺。それに違和感を覚えつつ客間に敷かれた真新しい畳の香りを感じながら、きちんと正座をして頭を下げる。「お久しぶりです。お父さん、お母さん」 精一杯の虚勢を張って、大きな声を出してやった。 場に漂うイヤな雰囲気は、大学を通うために家を出たときの大喧嘩の模様をそのまま引きずっている状態だった。今直ぐにでも帰りたくなってしまったのだけれど、逃げるワケにはいかない。 顔を上げた不肖の息子を見る、お父さんの眼差しが冷たいことこの上ない。そんな視線をやり過ごして、目の前に敷いてある座布団へにじり寄り、何食わぬ顔をしたまま、すとんと座った。「……何だ、その指輪は?」 どこか、感情を押し殺した声で訊ねられる。 両手をついて頭を下げたときに、一番最初に目についたのかもしれない。穂高さんのくれたリングは、どこから見ても光り輝いてしまうから。 下くちびるを噛みしめた俺と明らかに怒っているお父さんを、微妙な表情を浮かべて視線だけでお母さんは見ていた。お父さんの隣に並んで座っているせいか、とても小さく見える。「あの、これは――」「家から出てひとりで生活して、一端《いっぱし》の大人になったつもりなのか? それとも好き勝手やった挙句に相手を妊娠させて、責任をとるためにつけられた首輪なのかもな」「違います、そんなんじゃないっ!」「そうよ、アナタ。千秋はそんな、軽率なことをするコじゃありませんもの。アナタに似て、しっかりしているんですから」「だったら相手は、相当な食わせ者だということだな。しっかりした千秋
last updateLast Updated : 2025-12-07
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける3

*** 岸壁に寄せられるフェリーを、今か今かと待ち構えていた。実際それは、俺だけじゃないのだが――。 隣にいるヤスヒロは瞳をキラキラさせながら、両手に小さな拳を作って口を開けたまま、食い入るようにフェリーを眺めていた。 他にも千秋と仲の良かった漁協のおばちゃん連中は、横断幕を手にしたままペチャクチャと談笑しつつ、意識はしっかりフェリーに向けている状態。 そんな千秋の人気に、内心苦笑するしかない。「あっ、見て見て! 千秋兄ちゃんが降りてきたよ! お~い!」 ヤスヒロの掛け声で、漁協のおばちゃんたちが一気に色めき立った。「ち~ちゃんっ、お帰りなさーい!」「よく来たね~! 待っとったよぉ」 他にもいろんな声掛けがなされ、数人の乗客と一緒に降り立つ千秋は赤面しながら、照れくさそうに頭を掻いていた。「あれ?」(頭を掻いている左手……。薬指の指輪が付けられていない――)「ただいまっ! 皆さん、お出迎えありがとうございます」 丁寧に頭を下げて、皆に向かってお辞儀をする。そんな千秋に待ってましたとばかりに取り囲むものだから、当然俺の入る隙間はなかった。「穂高さん、ただいまっ!」「おか、えり……」 皆に揉みくちゃにされているのにイヤな顔ひとつせず、嬉しそうにふわりと微笑みながら自分の着ているシャツの胸ポケットを、左手でぎゅっと掴んだ。 ――指輪はここに、ちゃんとあるからね―― 訝しんだ表情を浮かべたつもりはなかったのに、俺の微妙な表情を瞬時に読み取り、それを教えてくれるなんて。 それだけじゃなく同じ指輪をしていたら絶対に突っ込まれることが分かっていたから、きちんと配慮してくれたんだ。俺は目先のことにしか気が利かないから、周りを見ることのできる千秋に随分と助けられているな。「あの、わざわざお出迎えしていただき、ありがとうございます。横断幕まで作ってくださって、何と言ったらいいか」「千秋兄ちゃんが試験を一生懸命頑張れるように、みんなで作ったんだよ。だから明日は、きっと大丈夫!」「そうさね。あたしらだけじゃなく、島にいるほとんどの人が応援しとるし」 こんなに近くにいるのに、遠くにいる感じがするよ千秋――。「穂高おじちゃんってば、わざと変顔して何をカッコつけてんの? そんな顔してたら、千秋兄ちゃんの運がどっかに行っちゃうよ」「へっ!? いや
last updateLast Updated : 2025-12-08
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける4

***『ええが? 何としてでも、おとーとの緊張さ、兄貴として解してやらねぇとならんからな! 絶対に余計なことを考えさせちゃならんぞ!』 という船長の指示のもと、今夜の仕事を大手を振って休むことができた。「緊張を解すということは、リラックスさせればいいだけの話だ。俺の得意分野じゃないか」 内心ほくそ笑みを浮かべる俺の前で、いそいそと指輪を嵌めてくれた千秋。指輪を隠さなければならないのは、まるで俺たちの関係のようだ――。 何となく切なくなってしまって後ろから千秋をぎゅっと抱きしめながら、左手薬指の爪先にキスを落してやる。「どうしたの穂高さん?」「毎回ポケットに入れてたら、いつの間にか無くしてしまうかもなと思ってね。ちょっと待っていてくれ」 名残惜しい気持ちを抱えて千秋から手を放し、小物を入れてる引き出しを開けて、使っていないアクセサリーを引っ張り出してみた。 千秋に似合いそうなシルバーのネックレスを本人の首に付けてみて、長さや雰囲気を確認する。細くて華奢な作りのチェーンが似合っていたので、その手に握らせた。「島にいる間は、それに指輪を通して使うといい。無くさなくて済むだろう?」「ありがとう。大事に使うね、すっごく嬉しい」「いや……。本当は俺も指輪を外すべきなんだろうけど。どうにも君のような、配慮ができなくて」 嵌めている指輪をくるくる回しながら告げると、ふわりと微笑んだ千秋。「だけどこうやって俺だけ配慮してくれるの、なにげに嬉しいんだよ。穂高さんの特別って感じで」 頬を染め上げて告げられる言葉に喜んで顔を寄せたら、くちびるをいきなり手で塞がれてしまった。「あの、コッチの配慮もお願いしていいかな?」「コッチ?」「そう、今夜はナシでお願いしたいなって。明日の試験に響いちゃうから」 ( ̄□ ̄;( ̄□ ̄|( ̄□ ̄||( ̄□||||ガガガーン!!←ショックの模様が分かりやす過ぎる件「最近の穂高さん、滅茶苦茶っていう言葉が似合うくらい激しくて……。その――」「そっ、それは君が何度もイクから、嬉しくてつい!」 ドライなイキ方を覚えた千秋の躰は、イった後もその余韻を引きずっているのか直ぐに感じ始めて、またイクを繰り返す。ビクンビクンと自身を小刻みに締め上げられるたびに、そりゃもう気持ちいいんだ。 しかしながら未だにどっちのイクなの
last updateLast Updated : 2025-12-09
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける5

穂高(と千秋)の苦難 その1 (――背中が熱い、燃えるような感じだ) 横たわる俺の目の前には寝室の壁があり、背後には当然千秋が寝ている。愛しい恋人の体温を感じてしまい、背中が熱くて堪らない。 どちらかが不健康なら諦めもつく。だが相思相愛の恋人同士が一緒にベッドインしているというのに、何もしないなんて気がおかしくなりそうだった。 せめて、キスくらいしてもいいじゃないかと言いたかったのをぐっと堪えたのは、千秋の顔がどこか寂しそうに見えたから。きっと心の中で、寸止めしてゴメンねって考えているのだろう。 俺が触れてしまったらタガが外れてしまうことが分かっているから、あえてキスも封印した。流されやすい自分を、きちんと止めるために。(できすぎた恋人だよ、千秋は。俺には勿体ないくらいに、ね) 年末、実家に帰って島に就職する件について、ご両親に伝えたという話を電話で聞いた。正月休みは千秋と一緒に過ごそうと地元に帰る予定だったのに、天候不順が続いてフェリーが欠航しまくったんだ。 タイミングが合えば、一緒に顔を出せたのに――挨拶の言葉もしっかり考えて準備していたのに、出鼻を挫かれガッカリしてしまった。『来年一緒に実家へ挨拶に行きましょう、穂高さん』 なぁんて千秋は明るく誘ってくれたのだが、今のヤル気に比例するくらいに挨拶する気が満々だった俺は、どうにも気持ちの整理がつかなくて、猛吹雪の中を無駄に走り、荒れ狂う海に向かってバカヤローと叫んでやった。 そんでもって現在進行形のこのやるせなさを、どう処理していいのやら。「はあぁ~……」 何度目かのため息をついたときにベッドが軋んで、千秋がくっつくように寝返りを打った。うなじに鼻息がかかって、くすぐったいことこの上ない。それだけじゃなく――。「……千秋のクララが、俺の尻に当たっているような?」 僅かな接触なので、正直なトコ曖昧だ。尻を後ろに突き出せば、どうなっているのか分かるのだが。「分かったところで何もできないのに、確認せずにはいられないとか……」 くいっと腰を動かしかけて、ずずっと元に戻した。(まるで俺の中に、千秋を挿れてほしいみたいな体勢じゃないか。卑猥だ) だけどいつか――千秋がどうしても俺の中に挿れたいって言ったときは、迷うことなくいいよと頷ける覚悟はできている! そしていつか……。『ねぇ、今
last updateLast Updated : 2025-12-10
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける6

穂高(と千秋)の苦難 その2 朝、目が覚めて隣で寝ている穂高さんを見たら、白目が充血しているだけじゃなく、うっすらとクマを作った状態で笑顔を浮かべていた。「千秋、おはよう……」 そして、やや掠れた声で挨拶されてしまい、口ごもるしかなかった。 キスを阻止してからガックリした様子が、手に取るように分かった。余りにも可哀想に思ったので寝返りを打って、わざとくっついてあげたんだ。 くっついた途端に、穂高さんの体温がじわぁっと伝わったお陰で、あっさり寝てしまった。俺が傍にいるせいで穂高さん自身は、あまり寝られなかったのではないのかな。 あ、自身って2通りの意味があるけど、両方ってことでヨロシク!「おはようございます。穂高さん、大丈夫?」「大丈夫って何がだろうか? 今日も元気いっぱいだよ、ふっ」 眠そうな目を擦りながらゆっくり起き上がり、うーんと伸びをする。(見るからに、すっごくダルそう。まったく元気に見えないんですけど)「そう。元気で良かったですっ」 勢いをつけて穂高さんのほっぺたに、ちゅっとキスをしてあげた。少しでも元気になりますようにって。「うっ、千秋……」 途端に瞳が潤んでいき、しょんぼりした顔になってしまった。もしや逆効果だったのか!?「あの、穂高さん」「就職試験が頑張れるような朝ご飯を作らねば! 顔を洗って、直ぐに準備しないといけないね」 ささっと涙を拭ってベッドを飛び出していく大きな背中に、声をかけることができなかった。自分のせいで、随分と穂高さんに無理させちゃってるな――。 意を決して追いかけるようにベッドから出て、洗面所にいる穂高さんを後ろからぎゅっと抱きしめてあげた。「……朝ご飯作るの、一緒に手伝ってもいい?」「えっ!?」「少しでも傍にいたいから。いいでしょ?」 穂高さんの顔に強引に腕を回し、振り向かせてからくちびるを重ねてすぐに離れた。「千秋、駄目だよ」「どっちが?」「勿論、両方に決まってる」 喉で低く笑いつつ、穂高さんから口づけてくれる。触れるだけのキスじゃなく、貪るように深く口づけられた。そこから想いが流れ込むように伝わってきて熱となり、躰が一気に熱くなる。 頭がボーっとしてきてよろけそうになった寸前のところで、腰を抱き寄せられてしまった。「千秋、大丈夫かい?」「あ、はい。すみません」「千
last updateLast Updated : 2025-12-11
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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける7

穂高(と千秋)の苦難 その3 ベッドでふと目が覚めたとき、隣に千秋がいることを幸せに感じてしまった。ぼんやりとその余韻に浸っていたら頬にキスをされてしまい、かなり驚いてしまったという経緯がある。 俺の顔をじっと見つめて柔らかく微笑んでくれる千秋が、無性に眩しくて胸が痛くなり、思わず涙ぐんでしまう始末。 そんな情けない自分を見られたくなくて、慌ててベッドを飛び出し、洗面所に向かったのだが――。「ゲッ! 何だ、この酷い顔は……( ̄□||||」 目の前にある鏡を見たら、見たことのないくらいの憐れなやつれ方をしていた。こんな顔を見たら、必然的に千秋が気を遣うだろう。何をやってるんだ、今日は就職試験という大事な日だというのに。「しかもこんな顔になった理由を知ったら、絶対に嫌われる。口が避けても言えない……」 俺のバカ~と心の中で叫びながらバシャバシャと激しく顔を洗っていると、背中に何かが当たった衝撃を感じた。予め首にかけていたタオルで、慌てて顔を拭う。『……朝ご飯を作るの、俺も手伝っていい?』 なんて、またしても気を遣ってくれる千秋の言葉に、困り果てるしかない。『少しでも傍にいたいから。いいでしょ?』 断れないような言葉を言い放ち、両腕で俺の顔を引き寄せるなり、触れるだけのキスを1回だけする。さっきベッドでしてくれた頬のキスにしても、俺を煽る材料になるのが分かってるのに、自ら率先してやらかしてくれる。「千秋、駄目だよ」『どっちが?』 君は気づいているのだろうか。さっきから、ずっと甘えたような声になっていることを。俺としては、妄想の続きを見ている感じだよ。「勿論、両方に決まってる」 掠れて告げた俺の言葉に、ゆっくりと瞳を閉じた千秋。受け入れてくれるそれに甘えて、くちびるを深く重ねた。 そんでもって現在、台所にて千秋とふたり仲良く並んで朝ご飯の支度をしている。「ねぇ、穂高さん。サラダに入れるリンゴ、大きく切っていいかな? 薄くスライスしたものより、歯応えがあるのが好きなんだよね」「いいよ。千秋が作ってくれるものは、何でも食べるから」「ありがと。じゃあ、はい、あーんして」 大きめにカットしたリンゴを目の前に差し出してくれたので、千秋の指ごとぱくっとかぶりついてやった。「あっ、もう! 俺の指まで食べないでよ」 目元を少しだけ赤くして睨ま
last updateLast Updated : 2025-12-12
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