70. 第三話 ミサトの大博打 なんと言っているかはわからないが店の中で言い争ってる声が聞こえる。 カラカラカラ「だからーー! あなたが……」「おじさん、こんにちは!」 「! あれぇ、久しぶりだねえ。井川さんちのミサトちゃんだろ? ずいぶん大人になって。何年ぶりだろう」「よく、すぐにわかりましたね」「目元は変わってないから。髪型も昔と同じだったしね。……あのね、今日はちょっと忙しくてせっかく来てくれたんだけどお店はやってないんだ」「知ってる。そうだと思った」「えっ?」「お店が担保になってるのよね。私なら力になれるかもしれない。詳しく教えて欲しいの」 するとハアハア言いながら遅れてついてきたユキが表にとめてある自転車に懐かしいものがついていることに気付く。 「2人乗りのステップがついてる。久しぶりに見たなー」「ああ、これ。僕らは『ニケツ棒』って呼んでたけど。……これねえ、錆びてるからか取れなくてね。もうずっと付けっぱなしなんだ。この自転車も古くて今は使ってないけど…… 昔はこれで伸也と2人、日曜日にはスーパーに買い物しに行ったもんでね。日曜日は卵が1パック99円になるスーパーだった、お一人様一点限りだから一個下の伸也を後ろに乗せて…… 歩くには遠いスーパーまで卵2パック買いに行ったっけ。貧乏だったけど、日曜日は卵いっぱい入れた卵スープと卵チャーハンを作ったもんでした。あの頃から僕の作るチャーハンは評判が良くてね、それで気をよくして中華屋になったようなもんですね」 「おじさん……」 「ああ、ごめんね。いきなりこんな話をしても分からないし面白くないよね」
Last Updated : 2025-12-03 Read more