All Chapters of 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 通: Chapter 51 - Chapter 60

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第1部 三章【護りのミサト!】その2 第七話 バナさん

50. 第七話 バナさん  ミサトとユキは今日は少し変わったルールの雀荘に来ていた。『リーチ麻雀ブルーセブン』  ここの店には赤5が入っておらず。その代わりに⑦筒に青⑦が1つ、赤⑦が1つの2枚の祝儀対象牌がある。赤⑦はチップ1枚。青⑦はチップ2枚の牌だがともにメンゼン祝儀。そして、最も変わっているのが『⑦筒をアンカンすればその瞬間に祝儀1枚オール+3000点オール』というこのルールだ。 「面白いルールね。アガってないのに点数動くなんて」「つまり⑦筒をアンカンしたらご祝儀は15000点相当もらえて点棒は9000点。合わせて24000点と同じ価値ってことね。えらいこっちゃ」 「もう少し、あとほんの数分お待ちいただければおそらく来店があるのですけど、よろしいでしょうか?」 「同じ時間に来る常連さんでもいるのかしら?」 「そう、そうなんです。あと2分ぐらいで『バナさん』って方が見えるんで」 「2分なら待とうか」「そうね。全員入りになるとセットさんもいるから大変だしね」「ご協力ありがとうございます」  すると2分後 チリンチリン 「いらっしゃいませー! 待ってましたよ」 「バナナある?」  待ち席にはチョコレートと煎餅とアメとバナナが置いてあった。なるほど、この人が『バナさん』というわけだ。 『バナさん』と店長とユキとミサトで立卓。   バナさんは待ち席のバナナを一本丸呑みすると卓に向かった。それはもう手品のようにあっという間に飲み込んでいた。(前
last updateLast Updated : 2025-11-16
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第1部 三章【護りのミサト!】その2 第八話 ルールの数だけ戦略がある

51. 第八話 ルールの数だけ戦略がある 「ロン!」「ツモ!」「ツモ!」「ロン!」  店長の反撃が決まりあっという間にバナさんの点数を減らすことに成功した。所詮は天和に気付かない次元の打ち手だ(そんな次元は聞いたことがないが)基本手順がなっちゃいないのである。 そしてむかえた東3局、ミサトの親番。 「ポン!」  序盤にミサトがドラの二萬を叩く。チャンス手だ。しかし、ドラを鳴かせたバナにもそれなりの手が入っていた。それはそうだ。じゃなけりゃ序盤からドラを切ったりしない(と思いたい)。 「リーチイィ!」  バナの5巡目リーチ。それを受けたミサトの手がこれ。 ミサト手牌八八⑤⑥⑦⑧3456(二二二) ④ツモ ドラ二  タンヤオドラ3テンパイだ。しかし、この局ミサトは⑨を1巡目に捨てているのでフリテンだ。どうする? 12000点の魅力は捨てきれないし、この手にはバナのリーチに現物はおろか安全そうな牌もない。迂回できないなら真っ向から受けて立つ3索切りだろうか? 少なくとも6索切りよりは3索切りの方が良さそうではあるが……。 ミサト打⑦ 「!?」  立番をしていた従業員はそれを見ていた。(なんだ、この選択は…… どうしてそれを切る。この『ブルーセブン』において常に危険な⑦筒をリーチの一発目に捨てるだと? ちゃんとルールわかってるのか? しかもテンパイならいざ知らず、わざわざノーテンに取るために……分からない。意図はなんなんだろう) ミサト手牌八八④⑤⑥⑧3456(二二二) 
last updateLast Updated : 2025-11-17
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第1部 三章【護りのミサト!】その2 第九話 牌戦士の誕生

52. 第九話 牌戦士の誕生  ブルーセブンでの勝負に勝ったミサトとユキ。ミサトは店長にサインを求められ、サラサラっと書いた。  『攻める素直さと護る勇気 日本プロ麻雀師団第36期新人王 井川美沙都』 ────── 「で、つぎの予定は~? ミサトのことだから何か計画してあるんでしょ?」「もちろん。明日からは3日間ほど麻雀アクアリウムのゲストをやる!」「アクアリウムってあの新宿の?」「アクアは全国各地に店舗があるのよ」「でも、ゲストってそれミサトだけの仕事だよねえ? 私はアマチュア雀士だし」「いいえ、あなたもセットでの仕事よ。2人で一組のコンビであると先方には伝えているので」「コンビ? アハ、お笑い芸人みたいね。コンビ名とかあるの?」「昨日作ったわ。まだ発表してないけどコンビ名は『beautiful village of snow』」 「ビューティフル ビレッジ オブ スノウ…… 雪の美しい里?」 「雪 美里(ユキ ミサト)ってこと」 「あーあーなるほど。え、でもそんならさ、それだと長いし、字を変えてコレでどう?」  そう言うとユキは紙にこう書いた。 『三郷 幸』 「ミサト ユキ」 「イイわね! それ」 「職業はどうしようか。雀士ってのも聞き飽きた言い方だし麻雀の関連したことなら何でも引き受けるんだからもっといいネーミングはないかしら」 「なら…… よし、こうしよう」
last updateLast Updated : 2025-11-18
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第1部 三章【護りのミサト!】その3 第一話 麻雀の女神

53. ここまでのあらすじ   青龍滝高校の麻雀部で一日顧問をやってみたミサトとユキ。結果、短時間で子供達をしっかりとレベルアップさせる。 次の行き先は麻雀アクアリウム。2人はコンビ名を『牌戦士 三郷 幸』とし雀荘のゲスト活動を2人セットの『三郷 幸』で雇ってもらうことに成功したのだった。   【登場人物紹介】 井川美沙都いがわみさと主人公。怠けることを嫌い、ストイックに鍛え続けるアスリート系美女。金髪ロングがトレードマーク。通称護りのミサト日本プロ麻雀師団所属獲得タイトル第36期新人王第35期師団名人戦準優勝など   飯田雪いいだゆき井川ミサトの元バイト先の仲間でありミサトのよき理解者。ボーイッシュな髪型、服装をしているが顔立ちはこの上なく女の子で可愛らしい、そのギャップが良い。   金田朱鷺子かねだときこ新宿でゴールデンコンビと言われる2人組。生物学的には女だが、見た目は美男子で『トキオ』の名で通っている。通称TKOのトキオ。麻雀真剣師団体ツイカの1期生。新宿ゴールデン街で店をミカゲと共同経営している。   金子水景かねこみかげトキオと2人でゴールデンコンビと言われる一流雀士。通称隠密ミカゲ。麻雀真剣師団体ツイカ1期生。新宿ゴールデン街で店をトキオと共同経営している。  普段は分厚いメガネをし
last updateLast Updated : 2025-11-18
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第1部 三章【護りのミサト!】その3 第二話 大盛況

54. 第二話 大盛況  麻雀アクアリウム静岡店は静岡の郊外にあった。まあ、一言で言えば田舎である。アクアリウムグループがなぜここに? というくらいの場所なのだ。しかし、車さえあれば行きやすく、それでいて家賃は安いので穴場と言えば穴場だった。 「ここがアクアリウム静岡店か」「雀荘にしてはずいぶん広い駐車場だね」「駅からも離れた郊外の雀荘にはよくあることよ。駐車場代も安いから広く借りていられるのよ」「しかし、お客さん入るのかな。ゲストやってるのにガラガラでしたとか嫌だよ。私には初めてのゲスト活動なのに」「そっか、ユキは初めてだもんね」「そりゃそうよ。私はライセンスないんだから」「ま、大丈夫じゃない? 車もけっこう停まってるし。何より井川ミサトプロがゲストですから!」  半分冗談のつもりで言ったミサトだったが店に入ると大盛況していたのでユキは「さすがミサト……」となった。 「遠い所をありがとうございます! 私、静岡店を任されております副店長の賤機(しずはた)です。よろしくお願いします」「あ、ご丁寧にありがとうございます。プロ麻雀師団の…… いえ、牌戦士の三郷幸こと井川ミサトと、相棒の飯田ユキです」「飯田です。よろしくお願い致します」「あ、なるほど、ミサトさんとユキさんでミサトユキか。それにしても、お二人ともお美しいですね。みんなも一目美しいミサトプロを見たくて来た人ばかりだから喜びますよ」「そう、そしたらそれプラス麻雀の実力も見せて容姿だけじゃないよって伝えていかないとね!」「副店長。こっち卓止めて待ってんだけど」「あ、ああ、すみません。ではさっそくなんですけどお二人のどちらか行けますか? まだ東2局で前局3900の横移動しただけなんで」「ユキ。どうする?」「オーケー。私が行きます」
last updateLast Updated : 2025-11-19
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第1部 三章【護りのミサト!】その3 第三話 理論上完全安牌

55. 第三話 理論上完全安牌  せっかく憧れのミサトプロとの同卓になったんだ、頑張るぞ。という気負いがあったからかいつものバランスを崩して東場でボコボコになる賤機副店長。 (あれえ、こんな予定じゃないんだけどな)と思う賤機。 それを背後から見ていた小幡は(バカだな、いつもの打ち方すればいいのに…… 女の前だからって何を格好つけようとしてるんですか。ラス回避が持ち味の麻雀打ちなのにリスク度外視の攻撃麻雀を付け焼き刃でやるなっての!)と呆れながら見ていた。  点差は大きく開き、オーラス 親ミサト  すると…… 「ポン」  ダンラスの南家(賤機)が動いた、南ポン。ダブ南だ。  しかしそれを見てもオーラスは誰も止まらない。降りてると三着落ちするからと西家二着目がドラの白を捨てる 「カン!」 賤機の大ミンカンだ 新ドラ八 その後 ⑤ポン!  ポンの中に赤牌はなかった。とは言えダブ南白ドラ4のハネマン確定からだ。そしてついにミサトの手もイーシャンテンに漕ぎ着ける。 ミサト手牌 切り番四伍伍六七八東東⑦⑧4456  西家が前巡に切ったので伍萬は通るということが確定してた。だが、ここで伍萬を切ると東のポンテンが取れないのが弱い。ミサトはありったけの勇気を出して4索を押し出すこととした。 ミサト打4 「チー」&nbs
last updateLast Updated : 2025-11-20
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第1部 三章【護りのミサト!】その3 第四話 会心のアガ3

56. 第四話 会心のアガ3  おれの名前は賤機光(しずはたひかり)。雀荘を転々としてる長続きしないロクデナシさ。麻雀は強いって言われるけど、まあそれだけ敵も多い。ギリギリの所持金で勝負に来る客が多かったから、嫌われやすいのは当然だと思う。かと言って粗相するような下手くそだったらもっと嫌われるんだけどな。鉄火場で働くってのは難しいよ、まったく。 ここアクアリウムはその点、レートが安いからいくら勝っても誰もカッカしない。強いなー。と言われるだけ。これがすごくおれ向きだった。なのでここにはもう長い。気が付いたら静岡店の副店長にまでなって早番を任されている。  アクアリウムは最新の技術を導入しているのでパソコン作業の出来る者が重宝されるのだが、生憎とおれはケータイすらただの電話機として持つだけの本気の機械音痴なためおれの相棒には元システムエンジニアの小幡了(おばたさとる)が常にいた。 アクア静岡は店長は居らず、実質的には副店長のおれと小幡。反対番のチーフ2名の4人で指揮を取っている。(小幡には役職などないがアルバイトたちに頼りにされているのはおれより小幡だ。それはそうだろう。おれだって小幡のことを頼るくらいだからな) おれと小幡は二人三脚で常に協力し合って働いた。早番はおれたちで盛り上げていくぞと。いつも頼りにしてるので小幡をチーフにしようとしたこともあるが「いや、責任者になるのはごめんだ。おれは気楽な立場で技術担当させてもらう。賤機さんの休みの日の卓回しくらいはするけど基本的におれはヒラでやってたい」と言うので小幡はほぼ最低賃金で雇っている。いまいち腑に落ちないがそれが本人の希望であるなら仕方ない、のか?  おれたちは家が近かった。ある日、近くの個人経営雀荘が警察の突入で営業停止になった時。その連絡を受けて警戒のためここもしばらくは24時に閉店する制度にすることにした。すると24時にあがった小幡が「帰りの電車がないんだが」と言う。本人も今日が休日ダイヤであることを失念していたようでおれは車で通勤してるから「わかった、送ろう。今日だけだぞ」と言い小幡の家
last updateLast Updated : 2025-11-20
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第1部 三章【護りのミサト!】その3 第伍話 ゲスト活動大成功

57. 第伍話 ゲスト活動大成功 「な、なんで5索に受けないんですか……?」  ミサトはあまりの驚きに思わず賤機に質問した。 「はい、カンした時点ではトップを狙って新ドラ乗せることを考えてましたけど、235という形が残ったこと。新ドラが乗らなかったこと。12000もトップ以外からアガるかツモでラス回避になることを加味して死角で待てるならそれが一番である。そして読める打ち手が安心する待ちとは何か。それは345索で鳴いて2索単騎。これだけだと……。井川プロ。あなたの実力を知っているから信じて2索単騎待ちを選べたんです」  ミサトはそれを聞いてドキッとした。聞けば聞くほどに合理性のある答え。そして、ミサト自身も好みなラス回避の選択。さらにそれは相手を知ることでしか辿り着かない正解。研究熱心な人物にしか使えない一手。それは彼がミサトをよくよく研究していることの証拠でもあったから。 「……副店長さん。あなた私の友人に似てるわ。麻雀教室を経営してる子なんだけど。人の心理のその深い底から全てを見るような子でね。こっちは切る牌を誘導されてしまうの。タイトル戦で優勝とかもしててすごいのよ」「へえ、そんな人がいるんですか。その方も競技プロ選手なんですか?」「いえ、アマチュアよ。麻雀教室を敷居の高いものではなくお互い同じアマチュアですよ。という目線でやる事で経営に成功してる子なの。面白い戦略でしょう。彼女は本当に人の心が読めるのよ。その賢さから『女賢王』なんて言う人もいるわ。本人はやめてよと言ってるけどね。……副店長さん。失礼ですけど、その、お名前なんて読むんですか?」「『しずはた』です。しずはたひかり」「そう『ひかり』ね『ひかる』じゃなくて。強いわね、ヒカリさん。ちょっとドキっとしたわヨ♡ ふふっ!」  次の日以降もア
last updateLast Updated : 2025-11-21
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サイドストーリー3 約束 前編

58. サイドストーリー3 約束 前編   僕は約束は大抵守る方だ。  果たせない大きな約束とか、小さな事で忘れちゃった約束とかは抜きにして。守れる約束は守る。特に自分から言い出したやつだったら尚更だ。 そんな僕の記憶の中で、破った約束。でも、それでいいと思った約束。その思い出話を聞いてくれるかい。  ──────   僕の名前は賤機光(しずはたひかり)。みんなにはヒカリくんて呼ばれてる。多分苗字が読めないから覚えてもらえてないんだと思う。 職業は雀荘メンバー。メンバーってのは店員ってことね。千葉県にある雀荘『積み木』の遅番を担当してる。  ある真夏のその夜は暇で、雀荘『積み木』には遅番の来客が1人しか無く。僕はその1人のお客さんの話し相手になってた。 その人はお客さんの中でもかなりお金持ちで麻雀も強くて優しくて女性にもモテるんだろうなあ、という尾崎洋平(おざきようへい)さんというお客さんだ。遅番担当の僕は「もう今日は誰も来ないからあがっていいよ」とオーナーに言われた。すると尾崎さんは 「ヒカリくん、じゃあ今からキャバクラでも行こうか。どうせ今帰っても早すぎるだろ? おれは朝まで麻雀するつもりだったんだから付き合ってくれよ。お金は気にしなくていいから」と言われた。  別にいいんだけど自分には付き合ってる彼女がいるので罪悪感があった。だが、麻雀が打てなかったのは2人体制の雀荘の責任でもあり、それについても罪悪感はある。お金気にしなくていいまで言われたら「いいえお断りします」とは言えなかった。 (まあ、一緒にちょっと騒いで飲み物飲んでたまに歌う程度のことだろう。何も問題ないかな)と思って僕はキャバクラに付き合った
last updateLast Updated : 2025-11-22
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サイドストーリー3 約束 後編

59. サイドストーリー3 約束 後編  彼女が開いて連絡先交換をしようとしてる携帯電話の待ち受けは『松潤』だった。僕は自分で言うのはちょっとアレだが松潤に似てると言われてきた。それは10回20回程度のことではなく、「ありがと、もう分かったよ」と言いたくなるくらい色々な人から言われることだった。つまり、その待ち受けを見ることで本当に僕の顔が好みなんだとわかった。  そして、この子のことは僕も好きになりつつあった。いや、好きだった。連絡先の交換はしたい。付き合いたい。また、この子に絡みつくように抱きしめられたい。そういう気持ちになった。一瞬だけど。  でも、僕は彼女持ちだ。裏切りたくない。かと言ってこの子がすんなり引き下がる言葉ってなんだろう。「連絡先交換くらい良いじゃない」と言われそうだ。その通りだとも思うけど、ここで交換したらそのままお付き合いに発展する気しかしなかった。自分のことは自分が一番わかる。 「……もう一度会ったら」 「え?」 「僕は多分この店にはもう来る機会はない。それでも偶然どこかであなたともう一度会ったら。その時は運命だと思って連絡先を交換すると約束する」 「わかった、約束よ!」 「約束だ」     ◆◇◆◇     6年後  僕は渋谷にいた。   今から帰ろうと駅前の大森堂書店に少し寄り道してから交差点に向かう時。とっても素敵な笑顔でベビーカ
last updateLast Updated : 2025-11-23
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