All Chapters of 妻に18回も入籍をすっぽかされた俺: Chapter 11 - Chapter 12

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第12話

もし三年前なら、会社のこの決定は断っていただろう。たとえ、より良い待遇やポストを提示されても。けれど、この三年を経て、俺の心はもうすっかり癒えていた。だから、俺は喜んで会社の指示を受け入れた。帰国の前日、かつての同僚で親友の江坂にメッセージを送った。「明日帰国する。チーフたちは元気にしてるか?」帰国の知らせに、江坂は抑えきれない様子で三時間も電話してきた。今すぐでも飛行機に乗って戻って来い――そう言わんばかりだった。翌日、機体が着陸する。江坂がまっ先に駆け寄ってきて、以前の上司や何人かの同僚も出迎えてくれた。三年という時間は、確かに彼らの体に刻まれていた。だが、俺の顔を見た瞬間、皆が驚いた表情を浮かべた。この三年間を自分のために生きた分、俺は年を取るどころか、むしろ若返って見えたのだろう。そして着陸して初めて、俺は知った。遥が、俺の渡仏の翌年に突然姿を消した理由を。――俺が去ったあと、彼女はすでに恭弥と一切関わっていなかった。さらに、パリ路線に乗務して二年目、パリからの帰国途中で再び航空事故に遭ったのだという。その事故で機体の左翼が炎上し、最終的に緊急着陸。乗客は全員無事だったが、遥は右脚を負傷し、以来パイロットの職に就けなくなった。ときどき思う。これは、ただ――運命が噛み合わなかったのだ、と。彼女のパイロット人生で、わずか二度の事故は、どちらもパリ路線で起きていた。そして俺は、そのパリでキャリアの頂点に達した。江坂は、俺がまだ彼女のことを引きずっていると思って、これまでメッセージでは彼女の話題を出さなかった。今日、俺が帰国して初めて、すべてを打ち明けてくれた。その知らせを聞いて、俺は遥が今どの部署にいるのか尋ねた。江坂は、俺がよりを戻すつもりだと思ったのかもしれない。俺はただ微笑んで、何も言わなかった。彼は教えてくれた。いま彼女は空港の管制部で、運航管理の業務についている、と。俺は江坂に頼み、先に荷物を彼女の家へ運んでもらい、ひとりで管制塔へ向かった。この空港は、俺にとってとても馴染み深い場所だ。だが、ひとりで歩くと、同じ景色でもどこか違って見える。俺の帰国を知ったのだろう。管制塔の入口に着くと、遥はすでにそこに立っていた。手には一束のバラ。けれど、その顔か
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