All Chapters of 浮生は夢のごとし: Chapter 11 - Chapter 18

18 Chapters

第11話

夢の中で見たあの人と、再び現実で対面したその瞬間、佐久の体内では、アドレナリンが一気に噴き出した。理性が追いつくより先に、彼の足は明子の方へ駆け出していた。その時、店主が店の奥へと引っ込み、ほどなくして数人の屈強な男たちを引き連れて戻ってきた。顔つきは荒々しく、明らかにただ者ではない。彼らは明子をぐるりと取り囲み、輪を作った。危険を察知した佐久は、迷うことなく飛び込んだ。だが次の瞬間、待っていたのは雨のように降り注ぐ拳と蹴りだった。必死に抵抗しながら、彼は声を張り上げた。「明子!早く逃げろ!」しかし、両腕はすぐさま背中にねじ上げられ、冷たい手錠が音を立てて締まる。男たちは彼を無理やり引きずり上げ、明子の目の前へ突き出した。その顔を見た瞬間、明子の表情が一瞬だけ驚きに揺れた。だがすぐに冷静を取り戻し、片手を上げて制止を命じた。「もうやめて!あなた、ここで何してるの?」実は、すべてが明子と同行していた私服警察たちの囮捜査だった。岩切家が最近掴んだ情報によると、この辺境の村に大規模な麻薬組織の残党が潜伏しているという。そして、店の店主とのやり取りは、犯人たちを誘い出すための暗号だった。長い準備の末に、ようやく罠を仕掛けた矢先のこと――まさか佐久が乱入して、作戦を台無しにするとは誰も思わなかった。呆然とする佐久。言いたいことは山ほどあったのに、明子の冷ややかな視線を浴びた途端、喉が詰まって声が出なかった。彼は周囲の男たちと店主を見比べ、ようやくすべてを悟る。喉を震わせながら、絞り出すように言った。「明子......俺はそんなつもりじゃなかった。知らなかったんだ、何も......」「もういい」明子の瞳には、一片の温度もなかった。「ここはあなたが来ていい場所じゃないわ。私はもう結婚したの。もう関わらないで」数日も張り込んでようやく犯人を誘い出せるところだったのに、すべてが無駄になった。仲間たちも苛立ちを隠せず、皮肉混じりに呟いた。「岩切さんには敵わないのは仕方ないけど、せめて邪魔はしないでほしいよな」「口で『愛してる』って言うのは簡単だ。どうせなら、麻薬犯の一人でも捕まえて見せろよ」佐久の顔から血の気が引いていった。明子が背を向けて去っていく。その
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第12話

佐久の突然の出現によって、あの僻地に潜んでいた麻薬組織が警戒し、充の計画していた一斉検挙作戦は中止を余儀なくされた。宿の中庭で、明子はベンチに腰掛け、空に浮かぶ白い雲をぼんやりと見上げていた。充は隣に座り、長い沈黙の後で低く口を開いた。「明子、もし彼の身を案じているなら......次の行動はできるだけ人の多い場所ではやらないようにするよ」「え?」明子はようやく我に返る。目の前の充が、いつものように冷ややかで人を寄せつけない表情に戻っているのを見て、ようやく気づいた。――彼は、嫉妬しているのかもしれない。思わず吹き出してしまう。彼女は折りたたみ椅子を持って、わざと充の隣にぴたりと寄り添い、彼の腕に軽く触れながら言った。「そんなことしないよ。さっきはただ......もしかすると今回の捜査の方向性が、最初から間違っていたのかもしれないって思ってただけ」充は一瞬きょとんとし、次の瞬間、急に腕を引き抜くと、両手で彼女の肩を掴み、体ごとこちらに向けさせた。「今、なんて言った?」明子の言葉は、決して軽いものではなかった。彼女が雲を見上げていたのは、心ここにあらずだったからだ。頭の中には、前の人生でニュース番組で見た二つの報道が浮かんでいた。ひとつは、全国を震撼させた麻薬摘発事件。警察はあの地方で麻薬組織と数ヶ月にわたって攻防を繰り返し、多くの捜査官が命を落としてようやく犯人たちを追い詰めた。もうひとつは、彼女の実家で起きた放火事件だった。火を放ったのは、前者の事件で逃げ延びた麻薬組織の残党たち。焼かれたのは、まさに明子の両親が暮らしていた宿舎だった。二つの事件の発生は、ちょうど五ヶ月の間をあけている。その五ヶ月のあいだに、佐久は突然忙しくなり、「商売がうまくいってる」と言っては、暁美を連れて遊び回り、あからさまに明子の前で見せつけていた。そしてまもなく起きたのが、暁美が仕掛けた罠――彼女の父の部屋から「白い粉」が見つかった事件だった。父が逮捕されてほどなくして、宿舎の放火事件が起こる。五十名以上が命を落とし、生存者は一人もいなかった。現場検証の結果、犯人は前の麻薬事件の逃走犯たちだと断定された。復讐――動機はあまりにも明白だった。そして、父は事件直前に収監されていた
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第13話

三日後。充が普段着に着替え、頬はこけ、目の下には濃い隈を描き、長年薬物に蝕まれたような姿に化けたのを見た瞬間、明子はようやく彼の言葉の意味を理解した。「まさか......自ら潜り込むつもりなの?」彼女は不安を隠せず、彼の前に立ち、背伸びをして服の襟を整えてやった。充は黙って頷き、そのまま自然な動きで彼女の腰を抱き寄せ、まっすぐにその瞳を見つめる。明子の手がぴたりと止まり、頬がほんのり赤く染まる。視線をそらし、小さく抗議の声を漏らした。「こんな時に......もう......んっ......」言葉の途中で、唐突に唇を塞がれた。強引で、それでいて短く切り上げられたその口づけに、息をすることすら忘れる。やがて彼が腕を離すと、明子が怒りをぶつけるより早く、静かな声が落ちた。「明子、今回の任務は危険だ。岩切署長の息子として、仲間を前線に出して自分が後ろに隠れるわけにはいかない」その一言で、明子の口はつぐまれた。結局のところ、二人は似た者同士だった。危険があっても、自分の手で終わらせたい。誰かにその代償を払わせるなんて、できるはずがない。再び顔を上げたとき、明子の目から涙がこぼれた。彼女が彼の前で泣くのは、これが初めてだった。肩が震え、嗚咽をこらえながら言葉が漏れる。「やっと会えたのに......二度の人生を生きたような長い時間をかけて、やっと充に会えたのに。もう、充を失いたくないの......」充は一瞬息をのむ。そして何かを決意したように彼女を強く抱きしめ、重々しい声で言った。「安心して。何があっても、俺は明子の手を放さない。この先もずっと。今回の作戦は危険だが、もし奴らをうまく欺ければ、こちらの思うように動かせる。その隙に戻って、包囲して一気に片をつける。父にも連絡を入れた。すでに手配を進めている。期限は五日。順調ならそれより早く戻れる。だが五日を過ぎたら......ベッド脇の引き出しの一番下に――」刑事という職業柄、任務前に遺言めいた言葉を残すことは、もはや習慣のようなものだった。だが、その言葉の続きを明子の唇が遮った。彼女はつま先立ちになり、必死に背伸びして熱く口づける。数秒後、唇を離したとき、彼女の瞳には涙が光っていた。「必ず、無事に帰ってきて。五日、待
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第14話

明子がその姿をはっきりと捉えた時――そこにいたのは、すでに肩を負傷している充だった。肩口には深々とした切り傷。致命傷ではないものの、連日の潜入で疲労の極みに達した身体は、今にも倒れそうに揺れている。それでも彼は、背筋を伸ばし、敵の前で一切の隙を見せまいとしていた。「まさか本当に一人で乗り込んでくるとはな。俺たちと取引するふりまでして命を賭けるとは、いい度胸だ。だが惜しいな......聞けば、あんた結婚したばかりらしいじゃないか。かわいそうにな、奥さん、これから未亡人だ」明子は息を呑んだ。遠目にも、充の肩から流れる血が止まらず、服を赤く染めているのがわかった。焦るあまり、思わず足を速めたその一歩が、乾いた枝を踏みしめる。パキッ。一瞬の音が、森の中に鋭く響いた。全員の視線が、同時にその方向へ向く。「誰だ!出てこい!」もはや隠れきれない。明子は息を整え、覚悟を決めて木の陰から姿を現した。手に握った起爆装置付きの簡易爆薬を高く掲げ、冷たい声で言い放つ。「勝ち誇るのはまだ早いわ。死ぬのがどっちか、今から決めましょうか」その場の空気が、一瞬にして凍りついた。だが、すぐに亡命者たちは爆笑し始めた。「なんだよこれは!美人が英雄救出か?いいねぇ、なら一緒にあの世で仲良くしな!」「明子!逃げろ!」充の声が、張り裂けるほどの焦りで響く。まさか彼女がここまで追ってくるとは思わず、喉が焼けるほど叫んだ。けれど、明子の耳には届かない。次の瞬間、二人の動きはほとんど同時だった。明子は手にした爆薬を敵の中心に向かって力いっぱい投げつけ、同時に、銃口が充を狙い、引き金が引かれた。爆薬が放たれた瞬間、明子は何も考えず充へと飛び込む。二人の身体が地面に倒れ込み、轟音があたりを震わせた。爆風と土煙の中で、二人は無意識にお互いの頭を庇い合う。時間が止まったようだった。視界の奥で、明子の脳裏に数えきれない記憶がよぎる。偽りの優しさを向けてきた佐久、冷たくも深く愛した充......そして、心配ばかりかけた両親の顔。――ああ、また死ぬのかもしれない。けれど、痛みは来なかった。心臓を貫くような激痛も、血の熱さも感じない。「明子......無事か......」彼女が目
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第15話

今回の捜査で充は負傷したものの、幸い警察側に死傷者はなく、十数名の麻薬密売人を無事逮捕することができた。彼らを追及した結果、ようやく事件の全貌が明らかになった。案の定、南地区での活動はすべて囮だった。本拠地には数百人規模の組織が存在し、その大半はすでに本土側へ潜伏していたのだ。残った十数人は現地に留まり、警察の注意を引きつけるための陽動役を担っていた。充は険しい眉を寄せ、早急に本庁へ戻らねばと判断した。出発を前に、明子は一人で病院を訪れ、佐久と面会した。病室の中、二人はしばらく黙り込んでいたが、先に口を開いたのは明子だった。「佐久、今回のことは本当にありがとう。あなたがいなければ、私か充のどちらかはもう生きていなかった」思いもよらぬ言葉に、佐久は胸が熱くなった。まさか明子が自ら見舞いに来てくれるとは思ってもみなかったのだ。彼はまだ癒えていない傷の痛みも忘れ、上体を起こして必死に言葉を返した。「明子が無事でよかった......本当に......」二人きりで話せる時間を、佐久は何よりも大切に感じていた。彼はすべてを打ち明けたい衝動に駆られた。「自分は生まれ変わった」も含めて。だが、唇まで出かかった言葉を、結局飲み込んでしまう。今の明子が、自分の言うことを信じるはずもない。彼は気まずそうに頭をかき、そして小さく息を吐いた。「全部、自分がまいた種だ。明子が無事ならそれでいい。俺も岩切に何かあってほしくなかった。だって彼に何かあれば、明子が悲しむだろう?」明子の視線が、わずかに揺れた。もしこの言葉を前の人生で彼から聞けていたなら、どれほど嬉しかっただろう。だが、もう遅い。明子の表情は変わらぬまま、淡々とした声で言った。「改めて礼を言うわ、佐久。でも、私はもう充の妻よ。過去のことは......もう終わったことにしましょう」その穏やかな声は柔らかくも、佐久の胸には鉛のように重く響いた。彼は深く目を閉じ、唇を震わせながら呟いた。「明子......すべて俺が犯した罪だ。許すとは言わない。夢のような時が過ぎて、やっと自分がどれほど愚かだったか分かったんだ。これからの人生は、明子への償いのために生きるよ」だが、その言葉を明子が聞くことはなかった。彼が目を開けたと
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第16話

数日後、明子と充は、すでに南地区の捜査地から本土へ戻っていた。幸いにも充が事前に岩切父へ報告を入れていたため、警察組織全体が迅速に対応することができた。宿舎の住民たちはすでに安全な場所へ避難させられ、警察は徹底した準備のもと、火薬や爆薬が仕掛けられている可能性のある複数の拠点を事前に把握していた。あとは敵が動くのを待つだけ――一人でも怪しい者を捕まえられれば、そこから突破口を開けるはずだ。特に辻井家の前は、明子の進言によって監視がさらに強化された。暁美は今回の事件の重要な容疑者である。妊娠中で身寄りのない彼女は、辻井母も拘束されてしまったため、警察の監視下で宿舎に滞在していた。一方では出産のための保護措置であり、もう一方では監視と取り調べのため。なんとしてでも彼女の口を割らせる必要があった。「どきなさいよ!毎日うろついて、うちの子が何があったらどうするの!」「佐久が戻ってくれば、きっと私を助け出してくれるんだから!」「絶対に拘留所なんか行かない!」彼女の腹はどんどん大きくなっていたが、体は日に日に痩せていった。栄養不足で顔色は土のように黄色く、頬はこけ、頬骨だけが目立っている。暁美の罵声を浴びても、私服警官たちは誰一人として怒りを露わにしなかった。任務の重要性を理解している彼らは、妊婦相手に強く出ることはできない。だが、暁美はそれをいいことに、日に日に態度を悪化させ、警官たちに当たり散らすようになった。誰もが限界に達しかけた頃、まさかのことが起きた。佐久が、戻ってきたのだ。路地に潜んでいた私服警官たちは一気に緊張感を取り戻し、配置についた。その姿を目にした瞬間、暁美は自分の目を疑った。何度も夢に見た男が、そこに立っている。「佐久!やっと戻ってきたのね!今までどこに行ったの、会いたかった......!」彼女はよろけながら駆け寄り、抱きつこうとしたが、佐久はさりげなく身を引いた。彼は意図的に距離を取り、外にいる警官たちにも聞こえるよう、わざと大きな声を出した。「暁美、油断したんだろ!南地区での件はもう全部バレたぞ!『荷物』はまだ持ってるんだろ?一体どこに隠した?早く教えろよ!」暁美の顔が一瞬で青ざめた。あと少し、黙ってとぼけていればよかった。今は妊婦と
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第17話

暁美は流産した。腹の奥から突き上げるような痛みに襲われ、意識がだんだんと遠のいていく。その瞬間彼女は初めて、死というものが、こんなにも身近にあるのだと知った。彼女は分かっていた。腹の中の子は、もとより生かしておけない命だった。本来なら、明子と佐久が結婚したあと、頃合いを見計らって流産を装い、その罪を明子に擦りつけるつもりだった。そうすれば佐久は一生、罪悪感に苛まれ、自分を忘れられなくなる――はずだった。だが今は、何もかも準備が整う前にすべてが崩れていった。計画は完璧だったはずなのに。どうして、どうしてすべてが自分の思い通りに進まないのか。明子は高官の妻となり、地位も安定した。かつて自分に冷たかった佐久でさえ、今では彼女を見つめ直している。「佐久......なんで、なんで私にこんなことをするの!?」暁美は叫んだ。だが、痛みと血の気の引く感覚が、もはや怒りよりも先に彼女を追い詰めていく。死への恐怖の中で、彼女は必死に佐久の袖を掴み、詰問されるうちに、とうとうすべてを吐き出した。その供述が決定打となり、警察は即座に動いた。市全域で大規模な一斉捜索が始まり、岩切家による周到な事前配置と明子の支援もあって、わずか三時間のうちにすべての取引拠点を一掃。さらに明子がずっと恐れていた――前世で宿舎地区を焼き尽くしたあの火災の元となる、ガソリンと爆薬も発見された。警察署の倉庫に山と積まれたガソリン缶と違法爆薬を見て、市原父は思わず冷や汗を流した。「明子......奴らはこの爆薬で宿舎ごとを燃やすつもりだったのか?あそこにはほとんどが警察関係者とその家族が住んでいるんだぞ!一体どれほどの恨みが......」明子は静かに頷き、冷たい声で言った。「それだけじゃないの。南地区も囮だった。本当の狙いは、警察そのものを崩壊させること。奴らは、事件をあえて警察内部の責任に見せかけるつもりだったのよ。私たちが互いを疑い、混乱していく様を見て笑うつもりだった。そして、組織が完全に麻痺したその時、好きなだけ薬を流通させる――それが目的」市原父は喉を鳴らし、言葉を失った。ただの犯罪集団と思っていた相手が、ここまで大きな企みを抱いていたとは。怒りで拳を震わせながら、彼は今にも制服を
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第18話

「私が行くわ」今度は充が口を開く前に、明子は警衛員に続いて面会室へと向かった。彼女も、ここまで来てなお佐久が何を言おうとしているのか、確かめたかったのだ。厚いガラスを隔て、佐久は曇った息を吹きかけ、その上に指で何度も文字を書いた。「生まれ変わった」明子は一瞬、目を見張った。まさか、佐久も生まれ変わっていたとは。だが、すぐに冷静さを取り戻し、視線は静かに戻る。たとえ生まれ変わったとしても、彼が与えた傷は消えない。どれほど時間が経とうとも、跡は確かに残っているのだ。面会の持ち時間はわずか二分。焦った佐久は、備え付けの受話器を掴み、ガラス越しに必死で言葉を吐き出した。「明子、安心してくれ。俺はもう暁美を見逃したりしない。次の人生があるなら、もう絶対にあいつの罠にはかからない。生まれ変わりがあるなら、きっとまた会える。次こそは、明子をちゃんと愛す――」明子は、目を赤くして狂気じみた表情を見せる佐久を、冷ややかに見つめた。全身に、再び嫌悪が這い上がる。彼女も受話器を取り、淡々と告げた。「ふん......生まれ変わったとしても、どうして私があなたを選ばなきゃならないの?」その一言で、佐久の口は塞がれた。何も言えないまま、明子は立ち上がり、面会室を去った。警察署を出た後、明子はふと耳にした。暁美が長らく妊娠していたあの子、実は佐久の子ではなかったのだと。しかも、誰の子か彼女自身も分からないらしい。明子は皮肉に笑った。前世で、佐久があの子のために自分を殺そうとしたことを思い出す。まったく、因果応報とはこのことだ。屋敷に戻ると、胸の奥に溜まっていたものがようやく晴れるのを感じた。留守の間に散らかった部屋を片づけていると、自然と手が速くなる。ふと、ベッドサイドの一番下の引き出しを開けると、一通の封筒が目に入った。明子は、あの出発前の充の言葉を思い出す。「五日を過ぎたら......ベッド脇の引き出しの一番下に」震える手で封を切った。【明子、この手紙を読んでいるということは、俺はもうそばにいないのかもしれない。でも、悔いはなかった。今回はすれ違わなくて本当によかった】一瞬で、瞳孔が開く。薄い二枚の便箋を、明子は何度も何度も読み返した。――充も、生ま
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