All Chapters of 【金こそパワー】ITスキルで異世界にベンチャー起業して、金貨の力で魔王を撃破!: Chapter 21 - Chapter 30

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21. 現行犯逮捕

「いいん……ですか? まだまだ子供ですよ?」 クレアの瞳には戸惑いが浮かぶ。「ここまでしっかりしてたら年齢なんて関係ないって」「し、しっかり? そ、そうかな……?」 可愛い口元に浮かぶ笑みに、タケルもにっこりと笑った。「そうさ」「ふふっ。やったぁ!」 クレアはタケルと重大な秘密を共有したことにワクワクが止まらなくなる。自分がタケルにとって一番頼れる存在なのだ。それは沈みかけていたクレアの心をパァッと明るく輝かせた。 それに、テトリスにしても電話機にしてもこの世界を大きく変える最先端のイノベーションをタケルと一緒にやっていける、それはクレアにとって夢の広がる大きなチャンスだった。「明日、詳細は相談させてね」「うん!」 クレアは嬉しそうにグラスをタケルのグラスに当てた。「夢広がるOrangeにカンパーイ!」「秘密サーバー管理者にカンパーイ!」 二人は笑顔で見つめあった。 いよいよOrangeが動き始める。異世界にITの力でイノベーションを起こし、莫大な金で人間界で確固たる地位を築き、魔王を蹂躙してやるのだとタケルはグッとこぶしを握った。       ◇ カラン、カラン……。 その時新たな客が入ってくる。 タケルはチラッと見て思わず顔をそらしてしまった。それは自分を追放した冒険者パーティのリーダーと女魔導士だったのだ。 彼らはこのレストランにはほとんど来なかったのに、今日は運が悪かった。もちろん、顔を合わせたとしてもどうということはないのだが、気まずく感じてしまう。 しかし、タケルが目をそらしたのをリーダーは見逃さなかった。「おーっと、役立たずくん、見ーっけ! うぃ~」 リーダーは大声を出しながら千鳥足で近づいてくる。どうやらかなり酔っているようでとてもまともな受け答えができそうにない。
last updateLast Updated : 2025-11-10
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22. 静謐なる無縁墓地

 特別面会室で座っていると、ガチャリと重厚なドアが開き、手錠でつながれた二人が官吏に連れられて入ってきた。二人とも別人のように憔悴しきっており、髪もボサボサのままである。死刑と言われているのだろう。少し同情してしまう。 二人は椅子に手足を固定され、身動きができない状態でタケルの前に座らされる。 官吏はそばのデスクに座ると面談記録のノートを開いた。「あー、申し訳ないが、二人とだけ話したいんだ」 タケルは官吏に声をかける。二人の本音を聞くためには第三者がいない方がいい。「い、いや、しかし、これは規則なので……」 冷汗をかきながら説明する官吏にタケルはニッコリ笑いながら近づき、官吏の背中をポンポンと叩くと、手に金貨を一枚握らせた。「これで美味しいものでも食べてくるといい」「お、おぉ……。そうですな。ちょっと用事を思い出しましたので、三十分ほど席を外します」 官吏は嬉しそうにそそくさと出ていく。 袖の下というのはあまり使いたい技ではないが、金は世界の潤滑油。正義感だけでは話は進まないのだ。「なんだよ! 嗤いに来たのかよ!」 亡者のように痩せこけたリーダーは生気のない目でタケルをにらんだ。「僕はそんなに暇じゃない。一体どういうつもりで僕を捨て、馬鹿にしていたのかを知りたいんだよ」 タケルは抑制のきいた声で静かにリーダーの目を見つめ、聞いた。「孤児院あがりの器用な小僧がいたから雇った。小僧は装備を素晴らしいものにしたが、これ以上は無理。だったら切るしかないだろ? そして、そんな簡単なことも分からないお馬鹿な小僧を嗤った。簡単な話さ!」 リーダーは露悪気味に喚いた。「悪かったとは思わないんだね……」「はっ! こっちは日々切った張ったをやってる冒険者だ。いちいち小僧の都合なんて考えられねーっての!」「あたしは悪いって思ってるよぉ。ねぇ、タケル様、何でもするからここから出しておくれよぉ……」 女魔導士は必死に|媚《こび》を売ってきた。「なんだ、お前! 自分だけ助けてもらおうって魂胆かよ!」「何言ってんだい! あんたがくだらないことやらなきゃ、こんなことになってないんだよ! なんであたしまで殺されなきゃなんないのよ!」 女魔導士は目を血走らせて怒鳴る。彼女は元々リーダーの言うがままだったのだから情状酌量の余地はありそうだった。「お前だっ
last updateLast Updated : 2025-11-12
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23. 新時代到来

 それからタケルは朝から晩まで死に物狂いで働いた。QRコード決済やSNSの開発に、端末やサーバーへの実装など、やることは山積みである。次から次へと降ってくるトラブルの嵐に揉まれながらも、陣営からの優秀なスタッフたちの献身的なサポートもあってなんとか年内リリースの目途が立ってきた。 【IT】スキルのスキルレベルもアップして、大量の端末への同時製造もできるようになったが、最後は人の手で動作確認をしないとならないので、スタッフたちは忙殺されている。 発売するスマホの名前は【フォンゲート】、豊かな未来への道を切り開く電話機という意味合いで、クレアが発案してくれた。 サーバー群は郊外の風光明媚な小さな村に設置した。アバロン商会の保養所がこの村にあり、裏手の洞窟にデータセンターを作って、ここで秘密裏に運用している。ここなら人目につかないし、クレアが出入りしてても怪しまれない。 入り口は狭く、かがまねば入れないくらいの目立たない洞窟だったが、中は広い講堂のようになっており、ここに棚を設けて数百枚の巨大なプレートを並べた。プレートは通信するたびにLEDのように明滅するようになっているが、たくさん接続されるとまるで無数の蛍の群れに覆われたように光の洪水が洞窟をまぶしく照らした。 人々の営みによってにぎやかに瞬く洞窟、それは人類を新たなステージへと導く文明の炎であり、タケルたちの希望の太陽だった。 タケルは自分が異世界に創り出したこの文明の瞬きを感慨深く眺め、この輝きの先に人類の輝かしい未来を築き上げてやろうとグッとこぶしを握った。            ◇ いよいよお披露目の日がやってくる――――。 スタジアムを借り切って『世界を変える! テトリスを超える新製品発表会』とぶち上げたのだ。街の人たちは一体何が発表されるのかワクワクしながらこの日を待っていた。「スタジアム行く?」「あったり前よぉ! 前日から泊まり込みするんだ!」「えっ! じゃあ、俺も行く!」 そんな会話があちこちで聞かれるようになり、ついにその日がやってきた。 パン! パ
last updateLast Updated : 2025-11-13
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24. 衝撃の価格

「それではOrange代表、グレイピース男爵より、新製品のご紹介をいただきます!」 お姉さんの紹介で、タケルは緊張しきったガチガチの状態でステージへと進む。 うぉぉぉぉぉ! 一気に盛り上がるスタジアム。 数万人の観客が、興奮に包まれながらタケルの一挙手一投足に熱い視線を寄せている。タケルはその熱狂ともいうべき熱いエネルギーのルツボに軽いめまいを覚えた。ちゃんと話せるだろうか? みんなを納得させられるだろうか? 震えの止まらない手、もう誰も自分を助けることはできない。このステージはタケルのための晴れ舞台、自分が最高のプレゼンを見せるしかないのだ。湧き出してくる不安に押し流されそうになりながら一歩一歩マイクのところへと歩いていく。 その時、クレアが向こう側で心配そうに手を組んで、タケルを見守っていることに気がついた。 その瞬間、なぜかタケルは『この娘が祈ってくれるから大丈夫だ』という何の根拠もない不思議な確信に包まれていくのを感じた。『あぁ、自分は上手くやれる。わが師ジョブズのように堂々と話せばいいだけだ』 その瞬間、タケルはジョブズが乗り移ったかのように堂々とした笑顔となる。「皆さん、お集まりいただきありがとうございます!」 タケルは観衆に向かって大きく手を振る。 うぉぉぉぉぉ! 観客たちもそれに応えた。「前回、このスタジアムを熱狂にうずめたのはテトリスでした。そして今日、皆さんに、その熱狂を超えるものをご覧いただきます!」 タケルが腕を突き上げると、背景の大画面にドンとスマホ【フォンゲート】の映像が登場した。 おぉぉぉぉ……。 見た目はテトリスと同じだが、画面には王宮の風景が映っている。「ジェラルド王子殿下、聞こえますか!?」 タケルが背景の大画面に向かって叫ぶと、画面に王子が登場した。サラサラと美しいブロンドを陽の光で煌めかせ、美しい顔には真紅の瞳が輝いていた。「男爵、聞こえるぞ。会場の皆さん、盛り上がってるかぁ!?」
last updateLast Updated : 2025-11-14
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25. 魔物の領域

 パチパチパチ……。 戻ってきたタケルをクレアはニコニコしながら拍手で出迎えた。「タケルさん、凄くカッコ良かったですよ!」「ふぅ、何とか無事こなせたよ。これもクレアのおかげだよ」 タケルはクレアの手を取り、ギュッと握りしめた。「えっ、なんで私が……?」 小首をかしげてキョトンとするクレア。「手を組んで祈っていてくれたじゃないか。ありがとう」「み、見てたんですか!? あ、あんなの大したことないですよ」「僕にとっては効いたみたいだよ」 ウインクするタケル。「よ、良かったわ……」 クレアは頬を赤らめながらうつむいた。「さて、いよいよお客様が使い始める。システムの挙動をチェックしないと……。オフィスへ戻ろう」「はいっ!」 二人はまだ熱狂に揺れているスタジアムを横目に、石畳の道を駆けていく。 いよいよ始まった快進撃、二人には目に映るものすべてが輝いて見えた。       ◇「社長! 売り上げ出ました! 先月比二百三十%、またまた新記録更新です!」 オフィスで大画面を見ながらまだ若い女性スタッフが叫んだ。 おぉぉぉ! スタッフたちの歓声に続いてパチパチパチと拍手がオフィスに響き渡る。「ヨシ! いいぞ、いいぞ! 何が一番ウケてる?」 タケルはグッとこぶしを握り、興奮気味のスタッフに聞いた。「やはり電話アプリが強いですね。先月比三百%成長です!」「まぁ、電話は分かりやすいからな」「QRコード決済も取扱高は爆発的に伸びているのですが、まだキャンペーン期間中なので売り上げにはなってないんです……」「それはいいんだよ。現金がこのプラットフォーム上に流入することで間接的に収益になるんだから」
last updateLast Updated : 2025-11-15
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26. ビキニアーマーの痛み

「へぇ、あなたがOrangeの男爵様? 思ったよりお若いのね?」 金の模様が入った漆黒のビキニアーマーで肌を露出した、Sランク女剣士ソリス・ブレイドウォーカーはニコッと笑ってタケルを見つめる。「きょ、今日はよろしくお願いいたします」 タケルは目のやり場に困り、慌ててお辞儀した。 魔物の領域に手を出す上で、魔法のバリエーションを増やしておきたいタケルは遺跡探索をやろうと思い立ったのだ。魔道具の欠片でも残っていればそこからITスキルで古代の魔法のコードを吸い出せるかもしれない。そこで、ギルドに護衛として凄腕の剣士をお願いしたら美しい女性が来てしまったのだ。「私を雇うなんて相当儲けていらっしゃるのね? フォンゲートは私も使わせていただいてますわ」 ソリスはファサッと赤い髪の毛を揺らしながらほほ笑んだ。「あ、ありがとうございます。おかげさまで事業は順調に伸びております」「で? ギルドからは遺跡探索と聞いておりますが?」「そ、そうなんです。魔法の研究をしていましてですね、ルミナセラフ遺跡で調査をしたいんですよ」「うーん、昔行きましたけど……、あそこは壊れた遺構しか残ってないわよ?」 ソリスは人差し指をあごにつけ、困惑気味に首をかしげる。「無いなら無いでいいんです。無いことを確かめるのも研究なので……」「はぁ、わたしとしては報酬いただければどこでも構わないですけどね……。あら、ビキニアーマーは初めて?」 タケルがついついビキニに目が行っていることを見逃さなかったソリスは、ニヤッと笑った。「あ、いや、素肌丸出しでどうやって防御しているのかと……」「ふふっ、では、触ってみて下さる?」「え……?」「この辺をペタッと。口で言うより触ってみればわかるわ」 ソリスは腹筋のあたりを指さす。「で、では遠慮なく…&helli
last updateLast Updated : 2025-11-16
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27. 0.5秒よ

「ソ、ソリスさんも毎日忙しいですか?」 タケルは話題をソリスに振った。「あら、暇よ?」「えっ!? Sランクって引く手あまただと思うんですが……?」「逆よ逆。私が出ていくような大事件なんてそうは起こらないわ。私が忙しいくらいだったらこの世界滅びかかってるわよ」 ソリスは余裕の笑みを浮かべ、クッキーをポリっとかじった。「あ、強すぎて出番がない……ってことですか?」「そうよ? 例えばAランクパーティが私に襲いかかってきたとするじゃない? どうなると思う?」「パーティということは、四、五人が一斉に襲い掛かるってことですよね……。結構いい勝負になりそうですが……」「0.5秒よ」「は……?」「そんな奴ら全滅まで一秒もかからないわ」 ソリスはニヤリと笑いながら、ブラウンの瞳の奥に不気味な漆黒の炎を揺らめかせた。「え……?」 タケルはゾクッと背筋に冷たいものが走る。馬鹿なと思いながらもその瞳の奥に秘められた圧倒的な力には、冗談で言っているのではないと思わされるものがあった。 なるほどSランクというのは次元が違うのだ。どんなに鍛え上げた人たちが束でかかっても、人知を超えた技で葬り去ってしまうのだろう。「そ、そんな方に護衛を頼むなんて失礼……でしたね」 タケルは冷汗を浮かべながら言った。「ううん、暇よりはずっといいわ。それに、高額なお手当。感謝してるのよ?」 ソリスはニコッと笑い、お茶をすすった。          ◇ やがて麦畑は終わりを迎え、向こうに森が見えてくる。馬車は緩やかな傾斜をパッカパッカと力強く登っていった。「そろそろ見えるはずよ」 ソリスはそう言いながら馬車の窓を開ける。
last updateLast Updated : 2025-11-17
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28. 数千年の時を超え

 足場の悪い山道を、草をかき分け山道を進む一行。やがて木々の向こうに石柱群が見えてくる。「おぉ、着きましたよーー!」 肩で息をしながらタケルは額の汗をぬぐった。「お目当てのものが見つかるといいわね」 ソリスは疲れた様子もなく涼しい顔でニコッと笑う。「きっと何かはありますよ!」 タケルはグッとこぶしを握った。ここまで来て手ぶらでは帰れない。「男爵、我々は出入り口で警護しています。くれぐれも無理はなさらないでください」 SPは敬礼をした。彼らの仕事は悪意のある人間からの警護であり、遺跡内は管轄外なのだ。「もちろん! こんなところまで悪かったね。後で特別手当をはずむから許して」「おぉ、いつもすみません。楽しみにしています!」 SPは満面に笑みを浮かべてビシッと再度敬礼をした。彼らの身分は公務員なので、報酬は高くない。タケルは慰労の気持ちを込め、いつもチップをはずむようにしていたのだ。        ◇「おぉ、これは凄い!」 タケルは立派な巨石のステージによじ登ると、その壮大な遺構に驚いた。アンコールワットのようにすでに巨木があちこちで遺跡を破壊していたが、それでも往年の豪奢な巨大構造物の原型はまだとどめていた。 太く高い石柱列の上には屋根が一部残っており、そこには見事な幻獣の浮彫が施されていて、その文化、文明の高さがうかがえる。記録によると数千年前に棄てられた神殿とのことだったが、誰が何のためにこんなものを作って棄てたのかは、いまだに分かっていないらしい。 しかし、随所に魔法のランプらしきものの形跡があるので、魔法はかなりつかわれていたようだ。魔道具のかけらでも残っていればITスキルで吸い出して解析できるかもしれないと、タケルは期待に胸を膨らませる。「男爵ーー! 入り口はこちらですわ」 ソリスはニコッと笑って下に降りる階段を指さした。 階段は崩落した石材で埋まっていたが、隙間を行けば潜れそうである。「さて、じゃあ、行きますか!」
last updateLast Updated : 2025-11-18
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29. 遺跡ハッキング

「さて……、起動はしたけど、これは何に使うんだ?」 ステージに置かれた演説台。何らかの操作台のような気もするが、一体何を操作するのか? 膨大なソースコードを読み解いていけばきっとわかるのだろうが、リバースエンジニアリングなどやっている時間はない。「なんか綺麗だわ……」 クレアは好奇心が抑えられず、楔文字をツンツンとつついた。 ピコピコと反応して明滅する楔文字。「あ、まるでゲームみたいだわ。ふふっ」 調子に乗ってクレアはあちこちをつつく。 画面に夢中になっていたタケルは、浮かび上がるエラーログに首をひねるばかりで、クレアのいたずらに気がつくのが遅れていた。「あっ! ダメだよ、勝手に触っちゃ!」 え? 直後、ピーー! というけたたましい警告音と共に楔形文字が全て真っ赤にフラッシュした。 へ? 刹那、ステージ全体がまるで落とし穴のように崩落する。何らかの安全装置が働いたのだろう、遺跡は侵入者の排除を粛々と実行したのだった。 底知れぬ闇の穴へと真っ逆さまに堕ちていく一行。「うっわぁ!」「うひぃぃぃ!」「くっ!」 クレアは必死にタケルの腕を掴んだが、タケルも宙を舞っているだけでどうしようもできない。バタバタともがいてみてもただ風をつかむだけ、タケルの顔は恐怖で青ざめ、心は絶望の渦中に飲み込まれていった。 せいやっ! ソリスが叫ぶや否や、下から激しい暴風がぶわっと吹き上げてくる。「うほぉ……」「ひぃぃぃ」 強烈な風は三人を上へと吹き飛ばさんばかりに服をバタバタと激しくはためかせた。 ソリスが風魔法で落下速度を落としたのだ。 こうして九死に一生を得た一行は底へとたどり着く。「あ痛っ!」「キャァ!」 タケルとクレアは着地に失敗してゴロゴロと転がった。「ふぅ……死ぬかと思った…
last updateLast Updated : 2025-11-19
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30. 今期見るべきアニメ

 ドアの向こうは冷たい金属で構成された狭く長い通路だった。青白い光が照らしだすずっと奥まで続く通路は、まるで別の世界へと誘う宇宙船の廊下にすら見える。この異形の空間が数千年前の文明の遺跡であるとは、誰が想像できただろうか。しかし、今は驚愕する暇もない。タケルは心を奮い立たせ、ソリスを解放するため、未知の力が眠る遺跡の中心へと駆け出していった。       ◇ しばらく進むと人の声が聞こえてきた。「えぇい! どこへ行きおったか……」 口調は乗っ取られたソリスのものだったが、声色は少女の可愛らしい声である。 タケルは首をかしげながらその声の方へとそっと進んだ。すると、その声はあるドアの向こうから聞こえてくることに気がつく。この向こうにソリスを乗っ取った遺跡の管理人が居るらしい。 ドアに対してITスキルを起動したタケルは、ロックを解除してそっと開けて様子を見る――――。 物が散らばる雑然とした部屋の中で、チェアと一体化した近未来的なデスクに銀髪の少女が座っていた。目鼻立ちの整った可愛らしい彼女はVR眼鏡みたいなものをかけて手足をバタバタさせている。「隠れても無駄じゃぞぉ! お主らはもう逃げられんのじゃ! くははは!」 少女はタケルのことを気づきもせずにノリノリで何かを操作している。どうやらソリスを乗っ取っているのは彼女のようだった。 タケルは小首をかしげながらそーっと部屋に忍び込み、拘束の魔道具を取り出すと静かに彼女に照準を絞る――――。「そろそろ煙も晴れてきたぞ! どこにおるんじゃ? くふふふ……」 楽しそうな彼女目がけ、拘束魔法を発動させるタケル。金色の鎖がバシュッと飛び出して、あっという間に彼女をグルグルとしばりつけた。「ウギョッ! な、なんじゃ……?」 身動きが取れなくなって慌てる少女。 タケルは笑いをこらえながら彼女のVR眼鏡を取り外す。「僕ならここだよ?」 はっ!?
last updateLast Updated : 2025-11-20
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