Mag-log in元プログラマーである転生者のタケルが付与されたスキルは【IT】。これは精緻な魔法陣をプログラミングできるというものだった。 早速テトリスマシンを作る。これができるのであればスマホも作れるのではないだろうか? と、気づいたタケルは異世界でAppleのような巨大ITベンチャーを起業しようと思いつく。 世界を一変させ、世界一の大金持ちになって、圧倒的な金の力で魔王を打ち倒してヒーローになってやると燃えるタケル。 会長令嬢のクレアも巻き込み、一気にIT革命を実現していくタケルだったが、急激な変化に快く思わない勢力も出てきてしまって……。 異世界IT起業家の未来はいかに!?
view more「もちろん、私は作られちゃった側だから本当のことは分からないわ。でも、そのストーリーが一番|蓋然《がいぜん》性が高いのよ」 女神は肩をすくめるとジョッキをグッと傾けた。「いやいや、妄想一発で異世界に飛べるならみんな飛んでますよ!」「あら、きっとみんな飛んでるわよ? ただ、それは枝分かれした別の宇宙になっちゃうので私たちには見えないけどね。ふふっ」「そ、そんな……」「宇宙の数は無限。些細な妄想一発で新たな宇宙が作られ、その妄想に合わせて過去に|遡《さかのぼ》って辻褄が合わされてそこに飛ばされるのよ。宇宙は妄想に飢えてるんだわ」 タケルはさすがに冗談かと思ったが、女神の琥珀色の瞳はいたって真剣であり、とてもからかっているような雰囲気でもない。「この世界が僕の妄想でできた僕の世界……。なら僕が最強……ってことですか?」「はっはっは! そんな訳ないじゃない。最強になりたかったら『僕は最強! 僕は最強!』って妄想しなおしなさい。でも……、そんな世界、楽しいかしら?」 女神はニヤッと笑い、またビールを傾けた。「いや……。今が最高なんで、妄想はもういらないっす」 タケルはチラッと、楽しそうにネヴィアたちと話しているクレアを見た。「ならいいじゃない。おめでとう」 女神はジョッキをタケルの前に差し出し、ニコッと優しく笑ってカチンと乾杯をした。 苦しかった社会人生活から紆余曲折を経て今、タケルはついに新たな人生の地平に立っている。深い感慨に浸りながら周りを見回し、目を細めて、タケルは一人一人との絆を胸に刻み、じっくりと噛み締めた。 ◇「今晩はホテルに泊まりな。これ、キーね。明日から地獄の特訓だよっ!」 シアンはカードキーをタケルに渡す。「あ、ありがとうございます。あの……、クレアの分は?」
「んほぉ……。美味い……。肉はやっぱり和牛に限るねぇ……」 シアンは恍惚とした表情でうっとりと目を閉じる。「焼かないとお腹壊しますよ……」 そんなシアンをジト目でにらみながら、ネヴィアは甲斐甲斐しく肉をロースターに並べていった。「大丈夫だってぇ!」 シアンは目を輝かせながら次を取ろうと箸を伸ばす。 カッ! シアンのステンレスの箸を、衝撃音を放ちながら女神が箸でつまんで止める。「あんた! 一人で全部食べる気なの?」 女神は琥珀色の瞳をギラリと光らせ、シアンをにらんだ。「肉は早い者勝ち……」 シアンはキラリと碧眼を輝かせると、目にも止まらぬ速さで次々と箸をロースターめがけて繰り出し、女神は負けじと防衛し続けた。 カカカカカッ! 激しい攻防の衝撃音が部屋に響きわたる。「へっ!?」「ひぃぃぃ」「またか……」 一同は唖然として、この世界の創造者と宇宙最強の二人の、世界を揺るがしかねない攻防を見守った。「隙ありっ!」 シアンは左手を素早く伸ばし、なんと手で肉をつかむ。「甘い!」 女神はテーブルをこぶしで叩き、ロースターの周辺から衝撃波を発生させた。 それはシアンの手を吹っ飛ばし、トモサンカクは宙を舞う――――。 へっ!? あっ!? うわっ! みんなが驚く中を、トモサンカクは光の微粒子を纏いながらクルクルと回り、ドアの方へとすっ飛んで行った。「ハーイ! ピッチャーお持ちしましたぁ!」 間の悪いことにガラララと、ドアが開く。 一同は青くなってそのドアへと飛んでいくトモサンカクを目で追った――――。 くっ! ソリスは瞬時に席からドア前まで移動すると、パシッとトモサンカクをはたいてロースター
「ク、クレア……? おい!」 必死に声をかけるタケルだったが反応がない。「これはキス待ちじゃな。カッカッカ」 ネヴィアはつまらない冗談を言って笑う。「な、何をふざけたことを!」 真っ赤になって怒るタケル。「いやいや、太古の昔からお姫様はキスで目覚めるって決まってるんだゾ!」 シアンもニヤニヤしながら、唇を突き出してキスのしぐさを見せる。「えっ!? 本当……なんですか? 嘘だったら怒りますよ!」「あっ! 急がないとクレアちゃん消えちゃうよ! 早く早くぅ!」 いたずらっ子の笑みを浮かべてシアンは煽った。「えっ!? ちょ、ちょっと!」「キース! キース!」「キース! キース!」 ネヴィアもシアンもニヤニヤしながら手拍子で煽った。「ちょっともう! 嘘だったら怒りますからね?!」 タケルは何度か深呼吸し、じっとクレアの整った小さな顔を見つめる。愛おしいクレア……。 目をつぶるとそっと、クレアの唇に近づいて行くタケル……。 そのぷっくりと赤く熟れた唇に触れようとした時だった。「あれ? タケル……さん?」 いきなりクレアが目を覚ます。「うぉっとぉぉぉ!」 タケルは焦ってのけぞった。「ど、どうしたんです……か?」 クレアはタケルに抱かれている事に焦り、真っ赤になって聞いた。「い、生き返った……。よ、良かった……」 タケルは冷や汗を流しつつも、生き返ったことにホッとしてへなへなと座り込んでしまう。「なんじゃ、早くやらんから……」「つまんないの!」 ネヴィアとシアンはつまらなそうな顔をしたが、タケルは真っ赤に
虹色の光の洪水を浴びながら、しばらく通路を進むとやがて巨大なサーバーが見えてくる。それは十階くらいぶち抜いた、もはや巨大なタワーともいうべきサーバーだった。 ほわぁ……。 タケルはその精緻な虹色の光に覆われたタワーを見上げ、感嘆のため息をつく。光は漫然と光っているのではなく、一定のリズムを刻みながら、塔全体として踊るようにいくつもの光の波を描きながら現代アートのように荘厳な世界を作り上げていた。「ここがジグラートの中心部、|神魂の塔《サイバーエーテル》じゃ。お主の星の全ての魂はここに入っておる」 ネヴィアは|神魂の塔《サイバーエーテル》に近づき、そっとキラキラと輝くクリスタルでできたサーバーをなでた。「えっ!? 全員ここに? じゃあ、僕もクレアもここに……?」「そうじゃ、お主は……あれじゃ」 ネヴィアはキョロキョロと見回すと、少し離れたところのサーバーを指さした。「へっ……? こ、これ……?」 そこには他のサーバーと変わらず、微細にあちこちが明滅するクリスタルがあるばかりである。「よく見ろ! これじゃ!」 ネヴィアが指す光の点を見ると、黄金色の輝きがゆったりと眩しく輝いたり消えそうになったり脈を打っていた。それにとても親近感を感じたタケルは不思議に思ったが、よく見るとそれは自分の呼吸に連動していたのだ。息を吸うと輝き、吐くと消えるようだった。 えっ!? 驚いた刹那、黄金色の輝きは真紅に色を変え、鮮やかに光を放った。 こ、これは……?「どうじゃ? これがお主の本体じゃ」 ネヴィアは嬉しそうにニヤッと笑う。「こ、これが……僕……?」「信じられんなら引き抜いてやろうか?」 ネヴィアはクリスタルのサーバーをガシッと掴む。「や、止めて
祝勝会の会場で、タケルは、いきなり心地の悪い不安に|苛《さいな》まれる。周囲の空気が突如として重くなり、落ち着きを失って名もなき焦燥感に飲み込まれていく。「ちょっと失礼」 タケルは湧き出してくる悪い汗をぬぐいながら席を立つと、スマホを取り出し、画面を開いて固まった。「な、何だ!? こ、これは……!?」 そこにはクレアの死闘を示唆するメッセージが並び、さらに魔法通信が圏外となっていて何もできなかった。これはデータセンターでとんでもないことが起きていることを示している。「た、大変だ!
奪還作戦最終日――――。 Orange軍は毎週奪われた村々の奪還作戦を粛々と実施し、数か月もすると旧領土は残すところ村一つとなっていた。「さーて! バッチリ決めますよぉ!」 |氷結《クリスタル》|幻影《ミラージュ》で出撃したクレアは、純白の翼を青空に輝かせながらグングンと高度を上げていった。 いつも通り超音速でターゲットの村をカッ飛んでいくクレア。|氷結《クリスタル》|幻影《ミラージュ》に取り付けられた魔力探知機が、地上の魔物の位置をレーダーのように捕捉していった。 すると前方に大きめの反応がいくつか浮き上
他にも何匹か飛行系魔物が飛び出してきたが、クレアは難なく撃墜し、あっという間に制空権を確保してしまった。 こうなるともう一方的な虐殺である。追いついてきた千機を数えるドローンたちからは次々とゴーレム召喚用の魔道具が放たれ、地上で次々とゴーレムが雄たけびを上げていく。ゴーレムはフォンゲートを身に着けており、陸軍兵士はそこからの映像を見ながらゴーレムに音声指示を与え、操っていく。 空からはドローンの|炎槍《イグニスジャベリン》による攻撃、地上ではゴーレムの火炎放射器による攻撃で魔物たちは次々と撃破されて行った。 最後、街の教会に立てこもった魔
基地建設から一年――――。 基地には数万人のにぎやかな声が響き、対魔王軍の準備は整いつつあった。Orangeタワーは本格的に稼働し、フォンゲートの事業を回すスタッフたちと、作戦を実行する兵士たちが各フロアでエネルギッシュに活動している。 安全第一の軍隊であるOrange軍では基本的に人は直接戦闘に参加しない。空軍はドローンの遠隔操作、陸軍はゴーレムの遠隔操作と全てリモートで戦闘をこなす。 今日は初めての本格実戦演習ということで、滅ぼされた隣村の奪還作戦を実行することとなった。 戦闘兵たちは五十人で一つの小隊を構成し、空軍、陸軍それぞれ二十小隊が組成されている。Orangeタワーの十