チーズハンバーグステーキを切り分けると、ドロリとチーズが溢れ出し、鉄板の上でジュッと音を立てる。私たちは勝利の宴を、ファミリーレストランの観葉植物の影に隠れた秘密基地で開いていた。肉汁とデミグラスソースの香りが漂い、食欲をそそる。ジョーカーは腹が空いているらしく、熱々のドリアにカトラリーを差し込み、ハフハフと笑顔を浮かべる。相馬は銀縁眼鏡の奥で穏やかに微笑み、ホットココアを口にする。#楠木グループ不祥事 #禁断の関係の嵐が健吾と七海を飲み込み、取引先の離反、報道の追及が二人を追い詰める。エミール・ガレの百合のランプ、七海の黒曜石の瞳……全てが私の手中に。私は母子手帳を握り、勝利の甘さを噛みしめる。 私はジョーカーの指示で七海のインスタグラムのスクリーンショットをデバイスに保存していた。今や@yuki_nanakaiのアカウントは閉鎖、削除されてしまったが私たちの手の中には健吾と七海の蜜月が余す所なく収められている。昨夜、私はあることに気がついた。……数ヶ月に一度、いや……一ヶ月に数回、健吾はイタリア支社の視察に出掛けていた。その時は「大変ね……お疲れ様」と労りの言葉をかけていたのだが、それは七海との逢瀬も兼ねていたのかもしれない。 怒りが沸々と湧き上がり、茹でたブロッコリーをカトラリーで思い切り刺した。鉄板のジュッという音が響き、チーズハンバーグの香りが漂う。「どうしたの?」と、相馬が心配そうに覗き込む。私の機嫌を損ねた表情に、銀縁眼鏡の奥の目は優しく揺れる。「いいえ……ちょっと……」と、健吾のイタリア出張、七海との逢瀬
Last Updated : 2025-11-22 Read more