『麻菜、キミに決めたよ』この一言で全てが変わってしまった。わたしが選ばれたことによって大きく運命が動き出したと言っても過言ではない。17歳からここ、アメリカに住み始めて早7年。わたし、加藤麻菜は24歳になったばかりだ。父はアメリカ人で、高校生の時ここ、アメリカに渡った。7年もいるのに、英語が苦手で話すことすら出来ない。そんなわたしの支えとなってくれたのが今の上司で、わたしを指名した人……。大学を卒業し、この上司の紹介でこの企業に就職を決めた。わたしが勤めるのはアパレル業界でも有名な「STAR☆」という会社。レディースが主だが、最近はメンズやキッズにも焦点を当て全米で注目を浴びている企業の一つ。昔から洋服が大好きだったわたしは、この企業への就職が決まった時、跳びあがる程嬉しかった。ずっとこの会社で働いていこう。このアメリカ本社で……わたしには他に行くあてもないし、一生アメリカで生きていこうと思っていた。そう思っていたわたしの願いが一瞬にして打ち砕かれてしまった。「ジョン!どうしてわたしを指名したのよ!!」わたしが怒りをぶつけるのは、わたしを指名した張本人。わたしの上司のジョン・テイラー。どうしてわたしがアメリカ人の彼に日本語で話しているのかというと、彼は日本語が得意だから。アメリカへ来たばかりに友人となった彼は、英語が話せないわたしの通訳となってくれた。そして、その彼が今は上司。「STAT☆日本店」の売り上げが伸び悩んでいて、本社から売り上げを上げるべく助っ人として白羽の矢が立ったのがこのジョンだった。「仕方ないだろう?一人が困難だと思ったら、誰か一人だけなら連れて行ってもいいって許可もらったんだから」「だからって、どうしてわたしなのよ!!下っ端のわたしなんかより、有能な人を連れていけばよかったじゃない!」どうしてもアメリカ本社にいなければならないという理由はない。ただ……送られる先が日本というのが問題なのだ。もう二度と戻ることはないと誓った日本に行かなければならないということが……。「君も十分有能だ。それに……」ジョンはわたしの肩をそっと引き寄せ、わたしの髪をすくった。「君と離れるのは辛いんだ。僕は君がいないと生きていけない」耳元でこう囁く彼は、どんな女性も虜にしてきたプレイボーイだ。
Last Updated : 2025-10-24 Read more