彰人番外編俺と沙織の話は、少し長くなる。初めて彼女に会ったのは、大学の文芸発表会だった。彼女は服飾デザイン専攻で、その時のステージで行われたファッションショーは、モデルが着ている服がすべて彼女のデザインだと聞いた。才能豊かな女で、学内でも有名だったし、言い寄る男も多かった。初めて会った時から、俺は彼女のことが好きだった。ただ、その「好き」は、どちらかというと「憧れ」に近いものだった。当時、俺の心にはまだ忘れられない人間がいた。幼馴染の杏奈だ。俺と杏奈は、物心ついた時から一緒だった。彼女は天真爛漫で可愛らしく、俺によく懐いていた。だが、俺たちは互いに本心を打ち明けられずにいた。杏奈は、俺のことなんて愛していないんだと……そう思っていた。大学二年の時、杏奈のSNSで、誰かと手を繋いでいる写真を見てしまったんだ。その瞬間、俺の心は、完全に死んだ。そして、同じ年に、俺は沙織への猛アタックを開始した。沙織は、見た目ほどクールなわけじゃなかった。最初は俺の誘いを拒んでいたが、俺が諦めずにアプローチを続けるうちに、少しずつ態度を軟化させてくれた。もうずいぶん杏奈とは連絡を取っていなかった。そんなある日、突然彼女から連絡が来て、どうして連絡をくれないのかと聞かれた。俺はあの手繋ぎ写真のことを思い出し、胸が苦しくなるのを抑えきれなかった。忙しくて話す時間がない、と嘘をついた。彼女は、怒ったようだった。SNSまで非公開にされてしまった。その日はひどく落ち込んでいたんだが、なんと沙織の方から俺を誘ってくれたんだ。彼女は、恋愛経験がほとんどなかったらしい。一緒に食事をするだけで、顔を真っ赤にしていた。あの日、俺は意図的に酒を頼んだ。すぐに俺たちは酔いが回り、近くのホテルで一夜を過ごした。俺は、彼女の初めてを奪った。こうなったからには責任を取らなければ、と思った。女の子にとって、初めてはやはり大切なものだ。だが、杏奈のことを思うと、どうしても心に未練が残った。でも、自分が愛する人間よりも、自分を愛してくれる人間を選ぶ方がいい。沙織は俺によく尽くしてくれた。生活のあらゆる面で、俺を完璧にサポートしてくれた。俺たちは、卒業を待たずに同棲を始めた。彼女と一緒にいると、生活面での面倒事
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